きまぐれうさぎ

きまぐれうさぎ

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2010.11.29
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テーマ: 本日の1冊(3794)
カテゴリ: カテゴリ未分類
植物になりたい。友達や学校や将来のことなんかで心を乱されないですむから。主人公のさくらはそんなことを考えながら中学二年生の日々を過ごしていた。



学生時代は今よりもお気楽だったし、楽しいこともたくさんあったはずなのに、その頃の印象を一言で表わすなら何故か「サバイバル」という言葉が浮かんでしまう。
恵まれた現代の日本で、しかもいち学生に過ぎない自分が一体何と戦っていたのかは未だに判然としないのだけれど、あの頃は日々生き残ることに必死になっていたように思う。
そのせいなのか、学生時代、特に思春期時代が舞台の作品を読むときに、ただ楽しいだけの作品よりも少しでもその学生時代特有のサバイバルが感じられる作品の方が好みだったりする。

この作品は登場人物達の焦燥感や鬱屈した気持ちが上手く描かれていて、どうしようもない感情を持て余しながらもなんとか生き残ろうともがく登場人物達の想いが、切実に胸に迫ってきました。
作中に登場する描写が、思わず自分の学生時代を呼び起こしてしまうくらいリアルで、誰でも一つや二つは持っているであろうその頃の青さゆえの失敗などを重ね合わせて苦い思いをするかもしれません。
ただ爽やかで楽しいだけの青春小説ではないことは確かな作品です。

しかしなんといってもこの作品の優れたところは、読者に痛みを感じさせるだけで終わっていないところだと思います。巧みな描写とエピソードが結末まで読者を飽きさせずに運んでくれるので、一気に最後まで読めてしまいます。
最後はぜひ読んで確かめてもらいたいので詳しくは書きませんが、このまとまった結末のおかげで読後感は非常に良いものになっています。


どちらも、学生時代特有のサバイバル感が非常に上手く表現されていて、大人も子供も楽しめる作品だということで、共通しています。
ただ、二つはよく似た作品でも、二つの持つ印象は違うものになっているように感じるのですが。
なんとなくこの作品は結末のまとまりの良さから「陽」で、津波のような力で読者を一気にさらってしまうような結末の桜庭作品は「陰」のイメージだと感じました。陰と陽のどちらが良いとかではなく、どちらも同じくらい素晴らしい作品です。合わせて読んでみると良いかもしれません。


月が地球から離れていってしまうように学生時代からどんどん遠ざかりつつある私なのですが、苦い思い出があろうともあの頃の気持ちを決して忘れないようにしたいと思わせてくれる作品でした。

今まさに学生時代真っ最中の人も、学生時代を忘れそうな人も、どちらにもおすすめの作品です。





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最終更新日  2010.11.29 21:27:01
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