SECOND-AND-FIVE

「SECOND-AND-FIVE」         

 NFLのレフトタックル(以降LT)の人生は前ニューイングランド・ペイトリオッツのオールプロB・アームストロングの言葉に凝縮されている。
「もし、1試合に65のオフェンスのプレイがあって64個は自分の仕事を全うしたとすする。しかし、一つでもサックを許せばその日は最悪なんだ。スタジアムの全員がそれを知っている。」

「それが私の人生だ。」
身長6フィート9インチ、体重340パウンドのボルチモア・レイブンスのLTのJ・オグデンは言う。2003-2004シーズンの11月23日ボルチモアでのシアトル戦で44対41で勝利した試合にオグデンは78回のプレイに参加した。
そして、オグデンはディフェンシブ・エンド(以下:DE)のC・オキアフォーかアウトサイド・ラインバッカーのC・ブラウンをブロックしていた。試合の5日後、オグデンは37番目のプレイを解説していた。

Second-and-fiveで“Dot Right Flex,Hound Right Divide”というコールをクオーターバック(以下:QB)のA・ライトがした。“Dot”はツーバック(ランニングバックが二人)にタイトエンドが一人、ワイドレシーバーが二人というレイブンスの基本的なフォーメーションを意味する。“Right Flex”はタイトエンドのT・ヒープが5ヤード進んだところで右にスプリットすることである。“Right Divide”はワイドレシーバーの二人が右のストロングサイドに位置することを意味する。(ここではQBのライトが右利きなのでライトの向かって右サイドがストロングサイドになる。)同時にレシーバーのルートがどういう風なものなのかも意味する。ライトの最初のオプションは、ディープ・アウト・パターンのヒープへのパスだろう。“Hound”はオグデンに関係する唯一の言葉である。このコールは、オフェンスラインがストロングサイドへスライドすることを意味するものだ。従って、シアトルがブリッツなどをしてこない限り、オグデンはオキアフォアと1対1になる。オグデンの向かって左にオキアフォアがいる。C・ブラウンもセーフティもブリッツしてこない様に見える。オグデンはオキアフォアより5インチ背が高くて、75パウンド重い。しかし、オキアフォアのクイックネスがある。オグデンがオキアフォアと対峙したのはこの試合が初めてだった。

しかし、オグデンはランプレイでもパスプレイでもオキアフォアに対して負けていなかった。今までの36プレイからオグデンはオキアフォアの動きを読んでいた。「オキアフォアは今日はインサイドには動いてこない」と。だから、オグデンは90%の確率でシーホークスのDEはライトを捕まえるために自分の外を通ってくるとふんでいたのだ。

そして、ボールがセンターからライトにスナップされた。すると、オキアフォアは猛然とライトに向かって突っ込んできた。オグデンは、左足を後ろに引き、右足をスライドさせて態勢を整えた。オグデンの予想通りやはり、オキアフォアはアウトサイドからやってきた。オキアフォアは腕を使うのがうまいのでオグデンはオキアフォアに腕を使わせないように足を動かし続けた。

オグデンは、スクリメージラインの4ヤード後ろで荒々しく突っ込んできたオキアフォアを外に追いやっていた。オグデンは「オキアフォアは素晴らしいテクニックと強さを持っているだけでなく、バランスも素晴らしかった。だから私はからだを動かし続け、この1流のLBをうまくコントロールしなければならなかった。身体のバランスをうまく保っていなければ私はあっさりかわされていただろう。」と言っていた。この時点でアドバンテージはオグデンにあった。

しかし、まだ27歳のライトは経験が足りなかった。この若輩者のQBは、ヒープは7ヤード地点にいると思っていた。しかし、ヒープは10ヤード地点にいたのだ。オグデンは必死にオキアフォアを抑えているが、そう長い間抑えていられるわけもなく限界に近かった。
 レイブンスのヘッドコーチであるB・ビリックは「7ヤードと10ヤード、どっちが大きいゲインだと思う?3ヤードしか差がないがその差はとてつもなく大きいよ。この種の間違いはラインメンを苛立たせるね。」と言い、オフェンシブコーディネーターはライトに「おい坊や、オメーはいつもラインメンをむかつかせているんだぞ」と言っていた。

「オキアフォアがQBに一直線に向かっていくのがわかったよ。」と言ったオグデンはオキアフォアを突き飛ばし、QBがサックされる前にオキアフォアをノックダウンしたのだった。目の前がクリアになったライトは、いとも簡単に左にずれてスクランブルを敢行し5ヤードをゲインしファーストダウンを獲得した。  

「これが俺たちのするべき仕事なんだよ。相手が小さかろうが、大きかろうが関係ない。どんな相手でも止めなければいけないんだ。それにどんな状況下でもQBを守ったり、RBの為にホールを開けなければいけない。」とオグデンは最後に締めくくった。

このゲームの43回のパスプレイのうちオグデンは一回もサックを許さなかった。たった一回オキアフォアとブラウンによってQBにプレッシャー(QBにパスを急がせてしまうこと)を与えられただけだった。オグデンにとってこの日はいい日だった。





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