プロボウル・レビュー

「意地のぶつかり合い~プロボウル・レビュー~」    


 今年のプロボウルは例年以上に真剣勝負だった。勝ちチームと負けチームの賞金の割合が2対1というのもあるが、それにしても面白い試合だった。

 第1クオーターは、S・マクネア(タイタンズ)のロングボム2発で戦いの火蓋が切って落とされた。マクネアは最初のパスでプロボウル史上2番目の長さとなる90ヤードのパスをC・ジョンソン(ベンガルズ)へ通しタッチダウン。その後、今度はH・ワード(スティーラーズ)にロングボムを通す。

 これによって、NFCの闘志に火がついた。やはり、プロ中のプロが集まったプロボウル。いくらバケーション気分とはいえ、勝負事には負けられないと思うのがプロの中のプロ。すかさず、D・カルペッパー(バイキングス)がT・ホルト(ラムズ)にパスを通しエンドゾーン近くまで進む。仕上げはS・アレキサンダー(シーホークス)がタッチダウン・ラン。これで14対7で、AFCが7点のリード。

 第2クオーターは、両チームのクオーターバックが変わり、小康状態。しかしこれは、両チームともセカンダリー陣の頑張りがあったからだ。ブリッツ禁止(2列目からのクオーターバックへの圧力)のため必然的にパスプレイが多くなる。そこで、黙ってないのがセカンダリー陣(コーナーバックとセーフティーを指す。主にパスカバーをする守備位置)。パスがくると分っていてみすみすパスを通させる訳がない。ここでインターセプトはしないまでも、簡単に通させないのがオールスターチームだ。彼らの頑張りもあって、両チームはパントが続いた。

 そこで、息を吹き返したのがAFCのP・マニング(コルツ)。マニングは、今年マクネアとMVPを分け合ったクオーターバックだ。マクネアだけが活躍したら、自分の名がすたる。「俺だってMVPだぞ」というところを見せたかっただろう。すると、D・メイソン(タイタンズ)、T・ゴンザレス(チーフス)に連続でタッチダウン・パスを通し、こちらも2タッチダウンを奪う。MVPの名に恥じない活躍をしている。前半終了して31対13でAFCが18点のリード。

 後半のNFCのスタートはNFL2位の4039ヤードを投げたT・グリーン(チーフス)。後半もパッシング・モアのオフェンスが期待されたが、後半のタッチダウンショーの幕開けはJ・ルイス(レイブンス)の10ヤードのタッチダウン・ラン。

 しかし、NFCも簡単には終わらない。ミーティングと練習を無断欠席したS・ライスに代わって出場のグバハ・ビアミラ(パッカーズ)がグリーンをサックして流れを引き戻す。その時にもまた真剣勝負だなと思わせる場面があった。サックされた時にクオーターバックのグリーンは「HE NEVER CATCHES IT!(絶対にボールをとってないぞ)」と大声で何度も審判にアピールしていた。こんなことは、通常のプロボウルでは見られない光景だ。その次のプレイでスナップをミスして、NFCのL・リトル(ラムズ)にリカバーされる。

 その掴んだ流れをプロボウル初出場のM・バルジャー(ラムズ)がすかさず、同僚のT・ホルト(ラムズ)にタッチダウン・パス。ラムズ・トライアングルで取ったタッチダウンだった。

 NFCは1度掴んだ流れはそう簡単に離さない。今度はL・アーリントン(レッドスキンズ)がインターセプトをして、エンドゾーン近くまで持ち込む。それを、バルジャーがすぐにタッチダウンに結びつけ38対27。まだ第3クオーターで、勝敗の行方は全く分らない。両チームは次第にヒートアップしていく。この辺から選手たちから笑いが消え、タックルが次第に真剣になっていった。

 第4クオーターに突入し、グリーンは先に出場した二人に触発されたのかC・ポーティスにタッチダウン・パス。その後間髪いれずに、バルジャーがこの日3つ目となるタッチダウン・パスをA・クランプラー(ファルコンズ)に通し、45対34。

 残り9分59秒。ここで、いくつも良いパスカバーを見せていたC・ベイリー(レッドスキンズ)がインターセプト。そのチャンスをバルジャーが、プロボウル・レコードとなる4つ目のタッチダウン・パスをS・アレキサンダーへ決める。ここで驚いたことにNFCは、本番さながらに2ポイント・コンバージョンを選択する。結果は失敗したが、勝負に真剣になっている所が伝わってきた。得点は45対40.

 NFCの勢いはとどまる所を知らない。D・ブライ(ライオンズ)が31ヤード・インターセプト・リターン・タッチダウンを決めてプロボウル・史上最大の25点差の大逆転劇を演じた。その後もまた2ポイント・コンバージョンを選択し、今度は成功(2ポイントを選択しなければ1点は取れる。しかし、相手にフィールド・ゴールを決められると逆転されてしまうので2ポイントを選択した)。NFCは相当勝ちにこだわっている。得点は48対45。まだ、残り4分ある。フィールド・ゴールでも同点に追いつける。今度は誰の意地を見られるのだろうか?

 意地を見せたのは、C・チェバス(バイキングス)だった。スターター(先発)のセカンダリーで唯一インターセプトを記録していなかったのが、チェバスだ。チェバスの意地をS・アレキサンダーがタッチダウンにつなげ、55対45。

 ここで終わらせないのがMVPの意地だ。マニングが2インターセプトの汚名を晴らすかのようにH・ワードへの矢のようなタッチダウン・パスを通し、55対52。残り時間2分。

 まさか、オンサイドキックまで飛び出すプロボウルになるとは思ってもみなかったのもつかの間。最後にまたまさかが起きた。AFCの同点の夢を乗せるフィールド・ゴール。蹴るのは、レギュラーシーズンで31回蹴って失敗なしのM・バンダージェット(コルツ)。AFCの夢を乗せたキックは無常にも外れゲームセット。MVPはプロボウル記録の4タッチダウン・パスを決めたM・バルジャー。

 今年のプロボウルは、同じチームから出ている選手同士が競い合っているように見えた。片方が活躍すれば「俺も負けられない」と思い、良いプレイをする。例えば、ラムズ。ホルトが活躍すると、負けじとバルジャーもタッチダウン・パスを通す。レッドスキンズでは、L・アーリントンがインターセプトすると、C・ベイリーが「それは俺の仕事だ!」と言わんばかりに素晴らしいパスカバーをする。チームは違うがマクネアとマニングも競い合っていた。こういった感情がゲームを引き締めていて、近年稀に見る白熱したプロボウルだった。





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