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一年の最初の夜に 満天の星を見上げた犬を連れた羊飼いの子が戦場の少年兵士が密林に沐浴する少女が車窓に顔寄せる行商人の子どもが大都市のストリートチルドレンが海に還るウミガメを見つめる小学生が砂漠で水運ぶ裸足の子が僧衣をまとう小さな修行僧が登山家に付き従うポーターの男の子が被布に瞳しか見せない女児が氷に閉ざされた雪原の男児が 一年の最初の夜に世界は瞬間(たまゆら)地球のどこか一点にいることを忘れさせ宇宙のどこか一点に浮かんでいるその夜 星々は忘れてしまった大切な味覚を取り戻すために金平糖のように夜空に散って見上げる小さな瞳という瞳に降り注がれていた 詩誌『樹』2013年1月号に掲載
2013年02月02日
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海のアルバム 1あちこちの家々から津波に流されていったアルバムが湾内の水底で発見されたかくれんぼで見つけられた子どものようにかつて地上にいたという証どこにもなくなった何かはどこにでもある何かでどこにでもあった家族の形はアルバムのなかで生き続けていたある時届けられない多数のアルバムを見てふっと気づいたことがある写真に映し出された姿は誰かのためではなくそこに確かにいたという写真の中のひとびとのためにあったのだと 海のアルバム 2津波から一月以上が経って海の底にアルバムが見つけられたアルバムは水に浸食されながらアルバムとして残っていた写された一枚一枚は地上の人々の成長の記録であり記念の日の思い出であり愛しい人々のつながりであり美しいものを仕舞った小箱であった潜水夫は見た地上と変わらない想いがみなぞこにも静かに置かれていたことを映像に写された一冊のアルバムがその後どうなったか海は語らないで記憶を包む地球の歴史からすればほんの少しの地上に住んで間もない人々の生活をいとしそうに抱きしめて 海のアルバム 3海に沈む 海に沈む地球に近づくために地球に抱かれるために海底でひっそりと家族のアルバムは息づくしょっぱいほどの幸せをしみこませて海に眠る 海に眠る誰かを生きるために確かに生きるために 2011年都留詩画展に出品 1と2は『山梨の詩2011』 に掲載 1と2は原文ローマ数字
2011年11月21日
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川辺のアルバム台風12号が去った紀伊半島で河原に見つけた「我が家」のアルバムを川辺のぬかるみで一枚一枚確認しながら「よかったですよ」と独り言のように記者に話していた女性東日本大震災から半年あのときも津波に流され がれきとなった原野でアルバム写真を眼を細めて見ている一人の母親がいた 家が流されてなお写真を見つめながら安堵する人々一つの世界が流されないで取っておかれたことが大きな船を係留させるためのアンカーのように消えてしまった人や家や町々を心に引き留める鳴動する地球のプレートは母親のもとに残された写真に負ける伝えられる神話の先に新たに書き加えられた数行たとえ地上がおのころ島の創世の漂う存在であっても見出された被災地の一枚の写真には叶わないことを昨日も今日も明日も 詩誌『樹』9月号に掲載
2011年09月12日
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叫びムンクの叫びが哲学的な意味合いを持っていたり耐えられない人間存在を表していたり社会に押しつぶされそうな心を表していたとしても自然の叫びを聞いて狂気を孕んでいたとしてもどうでもいいことだった絵の中の大気がなぜゆれているのか僕には波のように思われてあの日荒れた夜の海に叫んでいた自分のように呑み込もうとしている世界への抵抗のように思われて想いを重ねることにした苦しみは波の騒音にかき消されたまるですべてを許すように またの記憶 幼稚園で僕はいたずらを咎められて祭壇の後ろの地下に閉じこめられたことがあるこわくて声もでなかったけれどいまだにもう一人の僕は地下で叫び泣き続けている祭壇の後ろの地下の闇が僕を包み泪をぬぐっているムンクの叫びの大気は僕らを押し包み赤児の時から叫び続けた数々の声を形にして絵の中の人物に届けている現在に充ちて広がってゆく声のない世界携帯電話の表面で届かない指の屈伸運動スマートフォンの表面のリンクにすべる指叫ばれない人の声は何の波も引き起こさない人は叫ぶことを止めはじめているのかも知れない昨年の夏訪れた広島夏の陽炎をゆらして原爆ドームは青い空のもとでムンクの描く声にできない叫びを叫び続けていた僕は声にならない叫びをそこに置いてきた 詩誌『樹』2011年7月号に掲載
2011年07月28日
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海のアルバム津波から一月以上が経って海の底にアルバムが見つけられたアルバムは水に浸食されながらアルバムとして残っていた写された一枚一枚は地上の人々の成長の記録であり記念の日の思い出であり愛しい人々のつながりであり美しいものの小箱であった潜水夫は見た地上と変わらない想いがみなぞこにも静かに置かれていたことを津波が洗い流していったものは海の底で重なる家財道具であり見慣れた看板であり数々の真新しい車であり少女の弾いていたピアノであり静かに揺れる光を受けてそこにあったことが日常的なように海の部屋に招かれて間もなく談笑が聞こえてくるように語ることのできない海の底で海に抱かれた思い出は蟹やウニやウミウシに看取られて魚礁となり波に砕かれて藻くずとなるあの日映像に写された一冊のアルバムがその後どうなったか海は語らないで記憶を包む地球の歴史からすればほんの少しの地上に住んで間もない人々の生活をいとしそうに抱きしめて 詩誌「樹」2011年7月号に掲載
2011年07月24日
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海~沈黙する言葉の先に海から生まれた生き物たちの泡のような物語は海に返して終わってしまう誠に波の花のような物語を海は消えても消えても語りつづける地球は赤子をあやすように時々ゆりかごを揺らして揺籃期の思い出を伝えようとする(壮大な大陸移動説が語られても 今この時の人は心を動かさない)思い出の言葉に耳傾けるほど現実は暇ではない幼児が積み木に没頭するように人はせっせと港をつくり街をつくり学校をつくる人は人とだけ語り続け詩にもならない言葉をあやつり地球の言葉を忘れることに専念する人は語られる言葉のいったいどれくらいを理解して生きているのだろうか語りつくせることもなく語ることも理解することなくバベルの塔の神話のように誰もが理解できなくなって途方に暮れているのだろうか今日も海は語り続ける原始の海に降り注いだ生き物に害をなす宇宙線と隕石が破壊と恵みをもたらしたことを 砂浜で無心に手をつなぐこどもたちは生き物の定めについてレッスンしている(強く握り返して 沈黙する言葉を聞いている)碧い海の序章と終章のはざまで錨をおろす船のようにすこしばかり約束された人類の休日の過ごし方について 詩誌『樹』5月号に掲載
2011年05月21日
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季節季節は一点の穴をうがたれたようにたまゆら 景色をひろげるゆらゆらとたゆたう気持ちをよそに確実に陰謀をはらんでさて丘陵は彼方の家々を隠して郷愁をこそ強めはしないがいつもの帰途の意味を伝えようとしている一本の絵筆も一枚の原稿用紙も一双のスコアさえも描くことのできなかった季節のあわいに私が還ることを夢見ているとするりと手のひらをすりぬけてちらと見たと思われる灰色の鳥のように深い焦りを刻むことしかできないのであるが 詩誌『樹』5月号に掲載
2011年05月13日
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人間ドック解体されてバラバラになったパーツを再びもとにもどすように病院で一日を送った検査しやすい格好になって要所要所で脱ぎ捨てられる着衣どこまで見透かされているのだろう遺伝子が裸にされてむきだしになる恥ずかしさどこかでわかっていることだけれど自分では観ることができない反対から観られる作業それは広がる宇宙の果てからはじまりを覗くようで未来に向けて見えないくさびを打ち込む作業のようで遠いところから帰還した旅人同様明日からの日常に安堵を与えようとするそれもつかの間体の深部に潜む私自身との対話の試みは失敗して再び私は病院の入口から放り出されて不安な毎日を繰り返す 詩誌『樹』2011.3月号に掲載
2011年03月21日
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波写真をパソコンの中に入れておくと昔のように見なくなる綴じられたアルバムを開いて思い出に心動かされた気持ちも自分の今の形のスタート地点を見直すことも過去の中に消えていった 数年ごとに古くなるパソコンとソフトデジタル化された写真情報は写真を整理するソフトやSDカードに入れていてもデータは記憶素子やハードウェアとともに廃棄されて 手元から消えてゆき振り返ることができなくなる波となってどこかに消えていった写真光も音も波だからすべては波となって宇宙へとにじみ出ていく宇宙のそのまた先の宇宙大気圏外に浮かぶハッブル宇宙望遠鏡は数十億光年の遠い宇宙の姿を明らかにした写し出される沢山のいびつな銀河と個性的な小宇宙NGC5866 NGC1275NGC7049 NGC6670…宇宙空間の長い旅路の終わりにたどりついた望遠鏡の筒体の内に吸い込まれる波あの彼方に一枚の写真は消えていった シャッターの切れる音葉山の海辺で春のしらしらとした光を返す寄せては返す海の波を感じているとすべてが波となり彼方に消えていく理由がわかる 詩誌『樹』2011.1月号に掲載
2011年03月20日
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箱本棚を整理して数十冊の本を箱の中にしまったしまわれた本は地下数十メートルに埋められたように再び日の目をみることはないリスが見つけた木の実のえさを土中に隠して隠し忘れるように箱はやさしく存在を失念させる 本に限らず箱の中にしまうと取り出せなくなりかつて愛着のあった物は深い深い眠りに落ちていく隠したいものがたくさんあるのに箱の数が足りない箱が不足しているので恥ずかしいことも懐かしいこともそのまま引きずって生きている人が箱を見るとやさしくなれるのはしまわれたものたちとしまうことのできなかったものたちへの贖罪と鎮魂の歌が聞こえてくるからだ 詩誌『樹』11月号に掲載 10月詩画展に出展
2010年12月21日
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パッチワーク2 ~家族の肖像~ その1母方の実家で見た蚕のうごめく土蔵電球の下でさわさわと桑の葉をはむ四角い囲みの中でお蚕さんとよばれる幼虫たちはしゃにむに糸を吐き出し自らが納まる部屋を作り出していた成虫にはならない営みは私の心の中で静かな祈りのように思えた一枚の絵のようで一枚の絵にはならない部分の営み その2組み合わせる想像力その時間は手術のようにひと続きであって布を集める楽しみがあるように妻の時間を満たしていった天女の衣に布目がなかったように裸の王様の見えない布を縫い合わせるように詩の時間を一枚また一枚と縫い合わせる例えば生活の目立たない一枚一枚を縫い合わせるようにゆっくりとゆったりといつもの未完成の作品を紡ぎ出す一枚の絵のようで一枚の絵にはならない美しい部分の営み その3自分の視点を定めようとすると育ち盛りの君は翌日にはほんの少し伸びているので違う視点から見ることになる毎日がその繰り返しで明日は違う光景が広がるテニスのラケットを振りながらするりと中学校生活を送っている興味は尽きないけれどゆっくりと港を離れる船が霧の彼方に出かけようとするように毎日が儀式のように思われる何を組み合わせているかは知らない一枚の絵のようで一枚の絵にはならない見守られる部分の営み その4自分の鏡になるものを見つけているその昔貴重だった銅鏡を見つけるように様々なものを描き散らして飽きない表現するのは自分のこころの中だから見透かされないように描くのでわからない父はその古地図をいとおしく見つめている維新の夜明けを生きた龍馬は古代の鏡のような小さな鏡を持ち歩いていた鏡は自分を見つめるだけでなく景色を写し取り世界を呑み込む小学生の次男は自らを持て余しているようで取りあえずは兄を鏡代わりにしているフェルメールやマグリットが描く鏡のように不思議の国や鏡の国を映し出すことができれば満足感などいらなくなる一枚の絵のようで一枚の絵にはならない鏡の奥に写る部分の営み 詩誌『樹』11月号に掲載 10月詩画展に出展 パッチワーク2は原典では ローマ数字
2010年12月19日
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パッチワーク1はぎれがはぎれでなかったとき子どもたちは様々な模様を身にまとい成長を言祝いでいたはじめてお外に出かけた日にも避暑地を目指した電車の中でも海辺に宿泊した際にも遠く北の大地の空路にあってもカメラに景色を納めるように模様たちは記憶を焼き付けた焼き付けられた記憶は遺伝子の組み合わせのように平面に組み合わされてあらたな記憶を生みはじめるはぎれがはぎれでなくなったとき子どもたちは記憶の一枚からはがれでて父には見えない成長を言祝いでゆく 詩誌『樹』11月号に掲載 10月詩画展に出品 「パッチワーク1」の1は 原典ローマ数字。
2010年12月18日
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見る届かない思いに少しでも近づくために時々わが子と旅をする人の思い 自然の思いどこかにくさびを打ち込むために旅に出かける白い灯台の先によぎる小さな船も古都のみ寺の片隅に咲く桔梗の花もアイヌの言霊が地名となって広がる大地も父とともに歩みを刻む中で俯瞰する位置に立つ見るものの中に伝えられないものを伝えようとして見えないものを指し示して 見せようとしてたとえそれが徒労に終わったとしてもその歩みはアフガンの草原を渡りマンハッタン島の近海の人々の生活臭を伝え地上百キロの衛星の残骸を眼前に映し出す映像が仮想のものばかりになって見えるものが見えなくなる日が近づきつつあっても『渚にて』の映画の中の静かな地球が訪れようとカウントダウンに入っても私は子どもたちとともに小さな国の小さな片隅をともに見るために歩む 芭蕉翁が最期の夢で枯れ野を駆けめぐったように父の心の枯れ野を見せようと 子どもたちとともにまだ見たことのない短い季節を過ごすために 詩誌「樹」2010年9月号に掲載
2010年10月11日
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ある日のある日のある時そこに僕がいたという記憶がある日のある時宇宙の塵の中にあった記憶が古寺の庭に描かれていた砂の水の中にちゃぽちゃぽと打ち寄せる堰堤の芥の一揺れに振り返る猫の瞳にしじまの中に吸い込まれるハードディスクの音に眠る子どもらの寝息に秋の夜の虫の音にたとえ特殊相対性理論の先が見えたとしてもたとえフェルマーの法則が解けたとしてもピラミッドの謎が解けたとしてもある日のある時そこに誰かがいたという記憶がある日のある時宇宙の果てにあった記憶が小さな子どもの手のひらに載せられたダンゴムシの夢の中でその虫をじっと見つめる瞳の中でその子どもの成長に目を細める父の心である日のある時 詩誌「樹」9月号に掲載
2010年10月09日
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コンパスコンパスの針が南北を指し示すここからはじまる一歩が意味のあるために砂漠の海の商人は炎熱を渡りきるために冒険家は未踏の目的地を目指すためにイスラム教徒は神聖な地を捜すために人は歩みに意味を持たせようとして地球上の至る所でコンパスを使った大いなる歩みは無数の地点からはじまり無限の欲望とかつえた心が地球を埋め尽くす意味もなくコンパスの針を眺めているとこきざみなコンパスの針の揺らめきが後悔に体を打ち振るわせる子どものように思えてきた 詩誌『樹』9月号(2010年)に掲載
2010年09月26日
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風 鈴記憶はいつもかたまりでたたいても砕いても立ち返ることはない ある日ある時猛暑の街に生け垣を渡る涼風がちりんちりんと軒端の風鈴をならして消え去ってゆくとそれは心を冷まして心のどこかの鍵を開けて無意識の奥の奥から記憶を呼び戻そうとする 喜楽であったことも辛苦であったことも記憶は氷のように溶けだして少しだけ脳裏に沁みだして…今日も35度を超える猛暑の中沁みだした記憶は熱風にさらされてほんの少しむずがゆさだけを残してちりんちりんと消え去って何事も無かったかのように柔らかいアスファルトの現実を歩み出す 詩誌『樹』7月号に掲載
2010年07月24日
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午睡(シエスタ)太陽が昼寝をしている夕暮れが訪れたからではないまさに中天にあって午睡(シエスタ)の最中である寿命の半分五十億年の深い眠りの中で恒星は大仏の掌の上のしとねのように人類の営みなど全く忘れてまどろみうたたねをしているちょうどローマの競技場に放たれる前にうっかり寝てしまった一頭のライオンのように 詩誌「樹」7月号に掲載
2010年07月13日
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机と椅子の風景だれかがそこにいてだれもそこにはいないたしかにそこにいてたしかにそこにはいないそのむかしそこにいていまはもうそこにはいない どこもがおなじようでどこにもおなじものはなくときがとまっているようでときはとまることをしらないわすれられているようでわすれられたことのない机と椅子の教室の風景 詩誌『樹』5月号に掲載
2010年06月02日
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ツイッター原始の海に泡を放つ石があるオーストラリアのとある磯に今も酸素の泡を放ち続ける生命の源の石ストロマトライト生命は誕生のはじめから泡でつぶやいていた 産院で産まれたばかりの新生児たちがガラスの窓の向こうに並べられていた私の子どもはどの子なのか戸惑う父同じ日に生まれた子らは同じような顔をして目を閉じながら 酸素の重みを感じながら母との絆を断って生命樹の先端でもごもごと原始の海でのつぶやきのレッスンをする 大気に発した言葉は大気にまぎれて小さな振動を与えながら広がっていくそれを発することも自由であればとらえることも自由であるちょうどふるぼけたラジオからとぎれとぎれに聞こえるかすかな声のように朝鮮語なのか中国語なのか日本語なのか伝えることを忘れたようにぷすぷすとかジージーとかスピーカーをふるわせる不明の言葉言わないではいられない世界中の無量大数の泡のつぶやき 記憶はいつも太古の海の泡を吹く石に還元される 日だまりの中で母方の父がやさしくほほえんでいる私はその暖かいぬくもりのたまった農家の軒先で祖父のつぶやきに包まれていたそれが日差しの中でうつらうつらしていたのか祖父のつぶやきであったのかあの日以来わからない 原始を幻視するストロマトライトは太陽の日差しを海面に感じながら記憶のすべてを確かに呑み込んで泡を発して35億年間のつぶやきの中にいる 詩誌『樹』5月号に掲載
2010年05月21日
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440倍の (改訂版)縁側の日だまり 着物の祖父の膝の中に背を丸めた猫がいるモノクロームの写真がある戦争が終わって10年 初冬の小春日和庭は一面 柿の朽ち葉に埋もれて柿の木の枝と枝との間を ゆったりと時間と雲が流れていたすこしだけ昔の映像のかけら仕事帰りに 夜も更けた国道を一人で行くと カーラジオからアナウンサーの声がする現代人は人間の本来の許容量の440倍の情報を扱っているのです… 情報にまみれた頭からもれ出すものを風は車の後ろにおし流して消して行くすべてを消去できない夜が必死で地球に影を作り 冷却しようと回転して役目を果たさないうちに 朝を迎えて一日が始まり…どこか密林の奥地でサルが一匹大きな欠伸をしてどこか辺境の地でワシタカが獲物の姿を地上にとらえてどこか砂漠のオアシスでラクダが横にこぶをゆらして人のいない自然の中でゆったりと時間と雲が流れていた少しだけ昔の映像のかけら 新聞記事に目を落とせばシベリアのトラが消えて久しくベンガルトラが消えて行きスマトラトラが消えて…行き情報の片隅に押し流されては消えて行く朝 再び業務机に向かってパソコンを開くと水色のディスプレイが広がり 中学校のプールで日差しを浴びて泳いでいた記憶がよぎり水をかき分けて泳ぐことができなくなったかたくなな心に変わるかきわけるべき水の惑星はどうやら440倍の情報量に埋もれてしまっているらしい 詩誌「樹」3月号に掲載
2010年02月06日
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テムズの流れ豊かな雨水を集めて流れてゆくテムズ川のように記憶はとどまることなく流されてゆく循環を約束された雨水は海を経て山に上がり人びとをつなげる都市ロンドンの川を目指して川沿いの歴史を見続けた建物たちは旅人をやさしいまなざしで迎えてテムズの流れと同様に旅の彼方へと押し流す確かなことはロンドンの中心を流れるその川がまとまることのない記憶とともにわたしたちの中をゆったりと ゆっくりと肥沃な土地をうるおすように流れ続けているということである (詩~ 年賀状で公開)
2010年01月03日
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元旦ここにあって そこにはないものいまはあって かつてはないものささやかな一年のはじまりは青空に響く小鳥の声で目覚めるないことに不安を抱いてあるものをそろえてあるものを求めてないことを気にしなくなった元旦 太陽を見上げているとないことの中にぽつんと私を見つけだす幼な子が自分探しの旅に出掛けるようにここになくて そこにはあるものいまはなくて かつてはあったもの (詩誌『樹』同人 古屋淳一 2010年賀状で公開)
2009年12月31日
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兄 弟兄弟が見ているのは今日の地球宿題に追われて友達関係に悩んで雨空を恨めしげに仰いでいる兄弟が見ているのは明日の地球夢をほんの少しふくらまして背伸びをしてみたり大人の話題に入ってみたり兄弟が見ているのは未来の地球砂漠のような月が煌々と輝くのだから人のいなくなった地球が紺碧に浮かび続けるのも不思議ではない休日に訪れた科学未来館で兄弟の前に巨大な地球の球体画面が現れる背後に立つ父は地球の立体スクリーンの前で影になった二人を遠い未来に見失う誰もいなくなった地球と対峙する遠い未来に 詩誌「樹」11月号に掲載
2009年11月20日
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曳航(えいこう)船乗りは入江の向こうを見ていた彼方には大海が広がっているいつも堰堤(えんてい)の先に倚子(いす)を置いて魚を釣るでもなく 魚群を捕らえるでもなくちょこんとそいつに腰掛けてじっと波間に目をやっているかつて舟を曳(ひ)いて陸に揚がった時から彼は海を見続けている海を見る彼の瞳を覗(のぞ)くと豊饒(ほうじょう)の海が広がっていて誇らしげな曳航の姿がうつっているのを知る人は誰もいないのであるが 09.11.17 ある高校の文藝誌「メープル」創刊号に寄稿
2009年11月17日
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連作『阿吽』」 ハジマリアカラスタートシタトキハチョクセンデハナイトキハテイネイニヨレテラセンヲツクルカサネアワサレテヒトハヒトトトモニアユム オワリウンニナダレコムヨウニオモッタノハヒトリアルキヲシラナイカラオシマイハテイネイニヨレテイタイトヲホグスサギョウダサヨナラノワカレハワタシガワタシデアルタメト 10月都留詩画展に展示
2009年10月14日
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電子レンジあなたの夢を叶えますと魔法の箱は活躍する四角く少し気むずかしいじいさんはそれでも入口を開けると気前よく何でも受け入れてくれるおっとそいつはいけないよと金属の部分を拒否はするけれどチンと出来上がりを知らせてあつあつを取り出すときには満面の笑みを浮かばせる天才だずいぶん前から台所にあってなじみになっているけれど料理に協力するつもりはないほんの少し笑みをつくる道具でいたいと願っている 10月詩画展展示作品
2009年09月24日
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道の記憶一枚の絵の中に道を見つけるそこにいるのはいつも一人だった道をたどると背景の城郭にゆくのか小暗い森の中に通じているのか湖沼にたどりつくのか浮き雲に誘われて歩くことに憑かれているように目でたどる一枚の写真の中に道を見つける兵士たちは炎天下の路面を斃れたひとびとに一瞥も加えないで感情を置き忘れて進んでゆく子どもが半裸でこちらを見つめてたたずんでいる歩くことを定めとした兵士の背中を追う南極のたった一点を目指した人々の道の跡ギャングたちが理想郷を目指して向かう荒野の道火山灰と溶岩に埋められたポンペイの道 昨日 山の中に消えていた旧街道の林の彼方に職場に急ぐ毎日の道とは違うものを見ていたその道の向こうにはきっとあるのだろう冒険家が走っていった砂漠の轍の跡渋谷の109からのぼる夕暮れの道玄坂の繁華な道ロンドンの公園前からたどった二階建バスの走る道答えの用意されていないたくさんの道 道 道の記憶のざわめき 詩誌「樹」9月号 掲載
2009年09月20日
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時を紡ぐ私たちは小さなアパートからスタートした鵜飼橋のたもとで猫とたわむれて川沿いの寒々とした公園で春を待ちながら糸車を回しはじめるように二人で回っていた生活が産婦人科の大きな窓をとおして六つの小さな顔が目つぶり何かをかみしめているそのうちのひとつの足の裏に君を見つけるアパートの一室ですやすやと赤ん坊が川の字の中に眠ると笛吹川の川の音と川風が混じり合って再び糸車はかたかたと回りはじめる 大月の桂川の段丘に移り住みある時 熱にうなされた弟が救急車で運ばれると三つ違いの兄は父の傍らで震えながら見送っていた子どもたちが二人になって家族が四人になると さまざまなことがあった手探りの生活の中で糸車は少しずつ軽やかに回るようになってゆく 民俗館の傍らに展示された糸車は役目を終えて静かに入館者を迎えている一つの家族がその前を通り過ぎるとゆっくりと背中の向こうでかたかたと かたかたと家族の記憶を縒りはじめる 小学生となった子どもたちと私と妻と一つの糸車とともにかたかたと かたかたと 詩誌「樹」9月号 掲載
2009年09月20日
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ケータイ予測変換おおはよう 大月で 大空おいおい 思いつき お父さんは お疲れさんねねえねえ 寝る 寝ても 眠たい寝そう 寝ようかだ誰か だった だねだんだん 大好き ダイエットだらだらと 大丈夫 が 学校で 頑張って ガンガン 画像 がたがた がっかり へ変な へっちゃら平和に 凹んでへえ 減った 携帯予測変換に泳ぐ欲望の記憶装置のささやき 詩誌「樹」09 7月号に掲載
2009年07月20日
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落下傘その女学生たちの作った白い落下傘が青い空一面に広がって物資を運び勉強するんだったらお国のために落下傘を作れと 四角い布をパッチワークのように組み合わせて真っ白い落下傘をひたすら縫い続けて目を痛めても薬もなく眼科では目を水で洗うだけで良家の子女たちはひたすら青春の日々を目も痛む白い布に捧げて以来 落下傘は記憶の四角い木箱を落とし続ける昨日彼女たちを描くお芝居の一齣でBGMに合わせて歌い始めた女学校の歌を背後で聞きながら80歳前後の女性たちの心によみがえる白い落下傘を縫う色のないパッチワークの青春がふうわりふわりと八月の青い空に舞い降りてくる 詩誌「樹」7月号に掲載
2009年07月19日
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「パパの詩」へのオマージュ原稿用紙のマスを埋めたってレポート用紙を余白なく使ったって一冊のノートを使い切ったって僕は語り尽くせない一ギガバイトのSDカードがメモリー不足になったって一テラバイトのハードディスクがいっぱいになったって僕は語り尽くせない ビデオの前で語り尽くそうとしたってユーチューブにアップした画像に数百万アクセスあったって僕は語り尽くせない宇宙の彼方を目指して飛ぶ衛星に搭載された金属板にメッセージを刻印したって僕は語り尽くせない パパはいつもパパだからパパはいつもパパだったから 詩誌「樹」5月号に掲載
2009年05月17日
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その刹那子どもたちが扉の外に走って消えるその刹那カラオケを歌っていて誰かの視線を見つけたその刹那仕事に区切りがついたその刹那電話を切ったその刹那僕は長い長い物語から帰ってきた主人公のようにもう一人の僕を生きていたと信じるにたる僕がいたのだと今のここにいる僕ではなくてまた違う人生を歩んできた人として刹那に立つ僕を確かにかんじたのだけれど短い短いその時間は計ることもできないで出口でさえも様々あってその刹那 ほんとうに気まぐれにあらわれて少しも証拠を残さない僕はそうしていつもの僕以外の僕ではなくなってなじみとなった多くの中のたった一つの生を生きている 詩誌「樹」5月号に掲載
2009年05月01日
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春とともに狭くなってしまった地球の上で春は局地的な言葉となってコンパクトな春となって バスケットの中に詰め込まれて宇宙人が運ぶ標本のようになってある時その宇宙人が運んできたバスケットを目の前で開けられてこれが日本と呼ばれていた場所の春ですと… 小さな春はヒマラヤ山脈を越えて吹くモンスーンが起こす現象ですと説明されていたずら好きの学者さんにあの山脈がなければ春はなかったのですと説明されていよいよ春は地球の凸凹がもたらした偶然の産物なのだと思いどこかで衿を立てて身を縮めてしまい小さくなった星の小さくなった現象の中で思い出したように一本のフキノトウが僕の脳裏と対峙していた 詩誌『樹』3月号に掲載
2009年03月23日
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絵 本ぼろぼろになった絵本が消えてから絵本を読んでくれた父の姿はない絵本を読んでとねだった姿も布団の傍らで眠るまで読んでくれた姿も傍らにいた父の記憶はなくなり父のひざの中の暖かさも存在しなくなったある日子どもたちは本を読んでとせがんで私は布団の中で読んで聞かせる失われたものを取り戻そうとするように絵本を子どもたちに読んで聞かせていると 父という対象が私の中から消えてゆき父は私そのものになった今 ぼろぼろになった絵本を傍らに絵本を読んでいた私の姿はない絵本を読んでとねだった姿も布団の傍らで眠るまで読む姿も 絵本は父とともに消えて父は絵本とともに消えて私はひとり絵本を読んでいる 詩誌『樹』3月号に掲載
2009年03月22日
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時 計針が通りすぎるたびに 消されていくものフロントガラスに当たった 雨粒のように拭き上げられて 視界は良好ではあるけれどその先に君が見ていたのは 遠く連なる山々の空気遠近法のようにかすむ 新聞記事の活字今日も事件が噂のように伝えられて(ほんとうに人類は月にいったのだろうか)(ジョン・レノンは生きているのではないか)(戦時中の新聞はいつも事実を伝えない)私は大海の一個の浮き輪のような現実にすがろうと 事実を読み解くふりをする時を刻む音の彼方で 眠らせられてゆくもの星砂の海岸に打ち寄せる波の音のように心地よく記憶は蓄積しない水のように粘りもしない右回りに流されてゆく事実の行方はしれないけれど心の奥で「それでも地球は回っている」と誰かが擁護し続ける声が 時計の音にまぎれてゆく 2月詩画作品として公開
2009年02月17日
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おしゃべり息子が片言の言葉しか話していなかったとき、その意思の疎通がおもしろくてなんだかその他のことを忘れて向き合って話していたことがありました。お互いにはじめからつながらない言葉を話しているつもりだったのかも知れません。見つめ合いながらいつまでもいつまでも続いて終わることがないのでした。息子が話していたのは喃語とか言うんだそうですが縁側であたたかい日差しを浴びているような感覚でした。時が経って意味のある言葉を交わしている現在でもお互いにつながらない何かを受け取っているような感覚が時々よみがえります。そんなとき息子は今の言葉であのときの言葉を伝え続けようとして話しているのです。喃語を話している自分とまじめに話しかける父とがじっと顔見合わせているあの日のことを。受け取る言葉を降り注ぐ日差しのように待ち続けて。人は言葉で意思を伝えるよりも誰かの言葉から何かを受け取ることのできる喜びを変わることなく持ち続けてきたんだと。その先に、私と息子がいてやわらかな時間が流れ続けて。風と語り、草木に耳を傾け続けた長い長い人類の日々。400万年この方、伝えなければならない言葉なんて本当はないのですから。 詩誌『樹』1月号に掲載
2009年01月19日
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地球へ2産み続けることが未来につながるのかという疑問をいつも持っているどこかでそうだと思いどこかでそうではないと思ってきた存在がお金を生み出すシステムであれば産み続けなければならない金融はそうして夜明けとともに動き出す存在が朝日の大気を感じることであれば産み続ける必要はない太陽はそうして地球の曲面をすべり続けるこの星で生きてこの星で静かに亡くなるささやかな星間旅行をする67億の人々今日、地球という小さな宇宙の市場で商われたものが旅人の心を癒す老婆の笑顔であれば…宇宙をさすらうこの星の人々はそれだけで生きるエネルギーを持ち続けることができるスマイル0円のささやかなエネルギーをチャージしながら 詩誌『樹』1月号に掲載
2008年12月29日
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楽隊一年が第九で盛大に終わるとグリーグの曲よりも静かな生まれたばかりの朝がやってくるいつもより道に車はなく街はまどろみの中にあった 家族が起きてこない居間で僕は一人待っている それは毎年道の彼方からやってきて再び彼方に消えていくにぎやかな連中だった 気がつくと終わった一年のように通り過ぎて始まった一年のように何もなくなっていた 始まりはいつもそうだった楽器をなくしてしまった楽士のように新たな一年を歩み出さなくてはならないどこかの家の暖房機の前で猫が一匹指揮棒のようにしっぽを振ってまどろんでいた 詩誌『樹』1月号に掲載
2008年12月19日
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ゆっくりと急いで歩いているとふっと立ち止まりたくなることがあるいつのことだったのかどこでだったのかつかまえようとすると逃げ水のように遠ざかって私の中から消えてしまう僕はここにいるよと声がする気にしないで歩いていると何だか忘れ物をしたようでふっと振り返ってみる気を取り直して再び歩きはじめると誰かが私の肩越しでがっかりしたように思いもっと急がなくてはと思う僕はここにいるよ僕はここに 詩誌『樹』1月号に掲載
2008年12月03日
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体験知りたいけれど知りたくない聞きたいけれど聞きたくない小鳥たちのさえずりの意味朝起きて夜眠ること地球上に67億の人がいること地球以外に人がいないこと君が今考えていること見たいけれど見たくない捜したいけれど捜したくない南極の極点 エベレストの頂上煉獄の地球の内側紛争地帯に震える家族心にぽっかりと空いた傷口眠る君の瞳孔の先にあるもの言いたいけれど言いたくない書きたいけれど書きたくないあたためられた二人の秘密広められるうさんくささ広められない不都合なこと美しい言葉としか思われない詩やさしい嘘を含まない雨ざらしの言葉永遠に届くことのない僕の伝言 『山梨の詩2008』に掲載
2008年11月20日
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秋のこころ悲鳴をあげているのは心ばかりではなく笑っているのはひざばかりではないふくらんでいるのは欲望ばかりではなく痛めているのは頭ばかりではないせめては休止している目を開けて秋の空を見上げてみると…その日は富士山のまわりの魚眼レンズのような夕空のあちこちにジェット戦闘機の飛行機雲が現れていたイラクで戦争が始まったその日は 2008年 詩誌「樹」9月号の巻頭詩
2008年11月07日
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そ ら異境で見る空は日本の空につながっていると思い続けていたのだがロンドンで見た空は日本にはつながらない色をしていた携帯電話が人の距離を短くしてどこもかしこもみんな知っていて当たり前のように生きているから人は人が見えなくなって自分も見えなくなってつながらない空は 懐かしくロンドンの人々を包んでいるようであった 昨年の11月詩誌「樹」の巻頭詩として 発表した作品。 『山梨の詩2008』に掲載
2008年11月07日
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地球(テラ)へ1探しあぐねて目をつぶれば星は底ひで輝きをとりもどす生まれては消え消えては生まれ繰り返す心の闇の中の思いめがけて見えない銀河の壺に腕まくりして手をのばすと宇宙はたらいの中に広がる波紋のようにゆらゆらとゆれて その先に子どもたちの靴を洗う昼間の君の後ろ姿を見つけ出す 詩誌『樹』11月号に掲載
2008年10月14日
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彼岸秋彼岸と春彼岸昼と夜の長さが同じになる日あの世とこの世がつながる日エジプトでもインカでも聖なる日としてあがめられたきのうまで夏のようだった陽気は曼珠沙華がお灯明のように咲いて誰かに持ち去られた地球がゆっくりと暖められてこの国に四季が無くなっても相変わらず彼岸がやってきて人々に昔のことを思い出させる四季のあったこの国のことを
2008年10月08日
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木霊木の魂について話をしようたたずむ木はことばを持たない私は青空に耳を澄ましてみる近づいて幹に耳をつけるとごーっという音がする離れると木は幻のように押し黙ることばは言の葉繁る木の葉が擦れ合うようにさやぐやがてそよかぜがやむと声は聞こえるはずもない木の魂が語りかけるのはひたすら待つ人のため木霊はそうして帰ってきた木の魂は森を越え 谷を越え空に広がり…その時人は丘にたたずむ一本の木となって黙って声に耳を傾ける存在となる 10月都留詩画展に展示
2008年10月03日
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木(に)2もういいかいまぁだだよかくれたこどもたちにせをむけておにになったこは木にむかってめをとじているかくれたこどもたちがおかになりはたけになりそらになってもおかのうえのいっぽんの木におにになったこはじっとめをとじているもういいかいまぁだだよ 10月都留詩画展に展示
2008年10月02日
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木(に)1 ~座りうたに寄せてアイヌのモシリでは木を「ニ」と呼んでいた林が「リン」であるのに似てアジアの人々は同じ一本の木から広がっていったようだチュプカ ワ カムイ ランイワニ テッカ オレウイワ テキサム エタンネ マウ アヌ満月の夜アオダモの木に光が降りて光の力が人々に幸せをもたらす誰もいなかったはずのその下で座りながら木を囲む人々が体をゆらせ 手をたたき幸せを願う一本の木の下でうたう人々の声が月が沈み 夜がしらしらと明けるまで大地にゆっくりと広がってゆく 10月都留詩画展に展示 詩中のアイヌ語の歌詞は『KEWTUM PIRKA』中の「2.チュプカ ワ カムイ ラン」(UPOPO by HIROO TADASHI PASTORALE RECORDS)より引用[原文ではチュプカのプとエキサムのムは発音の関係で小文字で記述されているが詩の中では小文字として表記できないためやむを得ず小文字にしていない。]
2008年10月02日
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なぞる一枚の写真がある幼い私の背後に大きな体だけが写っている古びたモノクロームその背後に今も住む家の外壁撮ることが好きな父との珍しいツウショットあのときの私は今は私の父の姿眠れない夜に一人浴槽に浸かっていると家族から離れてゆったりしていた父をトイレに起きた小学生の私が風呂場の明かりに見つけたことが思い出された目が合った父はなんだかばつが悪そうだったあのときの私の父は今は私の姿混雑する駅の階段で無表情の人の流れに兄弟が呑み込まれると押すな子どもがいるぞと叫び怒る父の形相少し恥ずかしかったけれど広げられた手のひらとともによみがえる安堵感あのときの父は今も父の姿私がなぞる父は父として今を生きる父の軌跡として父の知らない父として誰かの心の中に生きるであろう父の姿として
2008年09月27日
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リング 土星にはリングがあって夜空に輝いている中学生の時に先輩が照準を合わせてくれた屈折望遠鏡の先大気の中の風に ゆらゆらとゆがんで揺れる土星があった水底の波越しの星のようであった大人になり夜空も見上げず土星を見ることもなく多くの人々と仕事をしながらいつか見たその姿を記憶の水底に引きずり過ごしてきたいつだったか土星の付近にボイジャーという無人の星間飛行艇が近づいてリングの写真を送ってきた 土星の輪はレコードのように細い筋の輪の薄い重なりで巨大な惑星を取り巻いていた結婚して子どもができて久しぶりに昔の友にも会ってニュースは土星のような輪のある惑星が他にもあると伝えていたリングは他の太陽系の星にもあって宇宙には輪のある惑星の方が多いのではないかと今も夜空に輝いているだろう土星は生きている私の中で輝く一つ星である孤高の存在ではなくなりありふれた惑星として宇宙の隙間を埋めているとしても水底のような夜のしじまのいたるところに揺れる土星たちを想像してみた
2008年09月26日
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背 中ブログに写真を載せるときには本人とわからないように写真を掲載するわが子の写真を載せるときはいつも後ろ姿の写真を使う水族館をのぞき込む兄弟の後ろ姿海に向かう兄と弟自転車で兄を追いかける弟の背中背中の写真を撮り続けていると大切なものがそこにあることがわかる背中を撮る約束事は顔を見せないということではないいつか遠くにいってしまうかけがえのないものを見送ることだ 決して振り向かないという見えない証文を守るように一枚 また 一枚と子どもたちの背中の写真を撮り続ける
2008年09月23日
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