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2009年01月23日
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テーマ: 掲載小説!(222)
カテゴリ: 一夜の記憶
第3話 『残酷な仕打ち』 <全20話>



ブレイクは肩をすくめた。

「力になれるかと思って来たんだ」

まだ悪夢のまっただなかにいるように感じながら、ジョゼフィーンは訳がわからずに彼を見つめた。

「どういう意味?」

ブレイクはジョゼフィーンの体に視線を走らせた。鎖骨がくっきりと目だち、腰骨がドレスの薄い生地を突きあげているようすもわかる。モデルなのでいつもほっそりしていたが、いまは風が吹けば飛ばされそうに見えた。いとことの結婚生活で、骨と皮ばかりになってしまったのだろうか?

「よくもこんなふうに逃げだせたもんだよ」

ブレイクは言った。ジョゼフィーンは言葉の意味が理解できなかったので、ぽかんと彼を見つめた。考えてみれば、さっきから何ひとつ理解できていない。



「ちょっと預金を調べてみたほうがいい」

ブレイクは歯をきしらせて言った。青い炎を放つ目しか見えずに、ジョゼフィーンは繰り返した。

「預金?」

ブレイクの予感に過ぎないが、いとこのルークなら、服だけでなく金も持っていったと疑って当然だった。

「とにかく調べてみろ。ルークが自分で働いた稼ぎで旅行しているのかどうかも怪しいもんだ」

静かに言う。不安が湧きあがって血が冷たくなるのを、ジョゼフィーンは感じた。首を振って否定しても、最悪の事態を想像しないではいられなかった。それでも、わたしのお金まで持っていかないだろう。いや、そうだろうか?友だちだと思っていた女性と平気で逃げてしまうぐらいだから、それよりひどいこともやりかねないのでは?ブレイクの視線を感じながら、机のところへ歩いていって、銀行の電話番号を探した。受話器を取りあげて、番号を押す。相手が出ると、震える声で言った。

「当座預金の残高を教えていただきたいの。普通預金も調べてくださるかしら?」

読みあげられた金額に、ジョゼフィーンは息をのみ、手を震わせた。振り返ると、輝く目から放たれる刺すような視線にぶつかった。

「両方とも空だったわ」



「あの人がぜんぶ持っていったのね」

ブレイクは口をねじまげた。どうしようもなくわがままないとこに、すべてを注ぎこんだ叔母が哀れになった。

「きみのたいせつなルークは、ただの泥棒と変わらないらしいな」

湧きあがった不安がふいに押し寄せて、ジョゼフィーンの足をさらった。

「まさか、こんなことするなんて!」

ブレイクがいらだたしげに低いため息をついた。

「そうかな。いかにもやりそうなことだ。あいつと結婚するなんてばかだと言っただろう、ジョゼフィーン。あいつのことは生まれてからほとんどずっと知っていた。どんな人間か知ってたんだよ。だから、ぼくの言うことを聞くべきだったんだ」

そう、ブレイクの言うことを聞くべきだったのだ。しかし、彼の腕のなかで過ごした夜のせいで彼の印象が悪くなっていたときに、どうして言うことを聞けただろう。なにしろ、あの夜以来、ジョゼフィーンを求めてくれたことがなかったのだから。

「いまさら、“言った、言った”って、何よ!そんなことを蒸し返して、気分がいい?」

湧き起こる怒りで、尋ねる声が震えた。ブレイクが首を振った。

「いや。それより、警察に通報しないといけない」

「警察?」

夫のことを警察に届けるというの?もちろん、そんなことは問題外だった。ブレイクがもどかしそうに言った。

「当然だろう。いくらきみのたいせつなルークだって、きみの財産をしぼり取って逃げていいわけがない。ほとんどがきみの金だったんだろう?」

たしかに、そうだった。ルークの俳優としての成功の道は、ジョゼフィーンと結婚したころには完全に断たれていた。ジョゼフィーンがモデルの仕事でかなり稼いでいたので、ふたりはそのお金で生活した。しかし、ジョゼフィーンがべつの道に進むために勉強しようと決めると、夫婦のどちらにも収入がなくなった。そのうえ、ビジネススクールの授業料を払わなければならなかったので、蓄えてあった財産にもそうとう手をつけていたのだ。
ジョゼフィーンは沈んだ声で答えた。

「ええ、わたしのお金だったわ」

「それはそれは」

ブレイクがつぶやいた。そのとたん、ジョゼフィーンの目から涙がこぼれそうになって、口のなかに塩辛い味がした。すぐ前に立つ男性に視線を戻して、感情のない顔を見あげる。近寄りがたいところはあるかもしれないが、いまはとても頼もしく見えた。

「ああ、ブレイク。これからどうすればいいの?」

                        第4話(1/26公開)へつづく…
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All rights reserved including the right of reproduction in whole or in part in any form. This edition is published by arrangement with Harlequin Enterprises II B.V./ S.a.r.l.  All characters in this book are fictitious. Any resemblance to actual persons, living or dead, is purely coincidental.

Published by Harlequin K.K., Tokyo, 2008






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最終更新日  2009年01月23日 09時55分36秒
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