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浪漫的狼

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Dec 31, 2007
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カテゴリ: 創作の部屋
 いよいよ 大晦日
 皆さん、今年一年大変お世話になりました。

来年もいい年になるといいですね。

 それでは、 昨日の続き をどうぞ。








連載第9回



いはない。

 遼太の父はというと、きっと祖父の性格の反動であろうかと思われるが、控え目で物静かな

性格であった。…ただ、その父にしても、「しっかり者」であることには間違いはなく、理数

系が得意であることや生真面目な所は北城家の血筋であろうと思われた。

 ただ、父には悪いが自分にとってはあまり影響力のない父であった…そう遼太は思ってい

た。



 しかし、自分が祖父の影響を強く受け始めたのはいつ頃のことだろうか…。



 そんなことは考えても仕方がない…とは思いながら、遼太は自分の人格を形成する上でとて

も大きい出来事になった、ある事件を思い出していた。




 あれは幼稚園のころではなかったか…。


 遼太はある時、何となく祖父の部屋へ入って、戸棚を開け、そこに、茶色の焼き物が色々と

収めてあるのを発見した。幼い遼太としては、何だか秘密の宝箱を開けたような興奮を感じ

た。

 そこに並んでいる焼き物たちは、一つ一つ形も大きさも違っていた。それまで形の整ったコ

ップや茶碗しか見たことのなかった遼太にはそれが面白くて、「変な茶碗や花瓶だなあ」と思

いはしたが、幼いながらに、そこはかとなく漂う気品のようなものを、それらに感じ取った遼

太は、一番形が面白いと思った小さな花瓶のようなものをそっと取り出した。

 そして、独特の手触りを感じ取ったり、中を覗いて見たりしたのだった。不規則な赤銅色の

模様が何か動物の顔のように見えるな…というような事を考えて暫くそれをじっと眺めてい

た。



 「いけないことをしている」と言う緊張感もあったのだろう、普段なら決して落としたりは

しないだろうそれを、なんと遼太は落としてしまったのだ。

 下は畳だったのだが、運悪くそれは小さな棚の下にある出っ張りに当たってしまい、その拍

子に畳と床の間の境目にある、太い木の上にまともに落ちてしまった。

 そして、綺麗に首の所が割れて欠けてしまったのだった。



 それはとんでもないことをしたということは、幼い自分にもよく分かった。しかし、残念な

ことにその時の遼太の心には、祖父に正直に言ってあやまろうなどという発想は微塵も浮かん

でこなかったのだ。



 それにしても、その時自分が起こした行動はなんと子供らしいことだったろうか…。


 遼太は今更ながらに苦笑いした。



 幼い遼太は自分のお道具箱から工作用ののりとセロハンテープを持ってくると、それを使っ

てその欠けた部分をもとに戻そうと試みたのである。

 祖父がいつ部屋へ戻ってくるか、とはらはらしながら、息をひそめ、糊が乾くのを待ってい

たあの時のことは、裸足の足の裏に感じたひんやりとした畳の冷たさとともに今でもよく覚え

ている。



 本当に、今から思えば噴飯ものであるが、その時は必死で、その出来上がりにも自分なりに

は巧くできた自信があった。

 その花瓶を、祖父が飾っていたり使ったりしているのを遼太は一度も見たことがなく、その

ままこっそり戸棚の奥にしまっておけば、きっと半永久的に見つかることは無いだろう。と。

そんな大それたことを思ったのだった。




 しかし、悪いことはできないものである。その日の夜に祖父の部屋に遼太は呼び出された。

 机の上には、遼太の修理した作品が鎮座ましましており、祖父がその向こうに正座してい

た。その時の祖父の顔…、穏やかだけれども激しいものをその裏に隠した顔。それは幼い自分

にも十分理解できた。



 遼太は当然鉄拳制裁を覚悟していた。それまでも、明らかに間違ったことをした時に祖父か

ら拳骨を頂戴することはちょくちょくあったからである。しかし、その時は違っていた。

 何故か祖父は落ち着いた声で、まず遼太に坐るように命じた。

 そこから先はあまり覚えていないが、祖父のとても悲しそうな様子が心に刻まれている。祖

父は、自分が花瓶を割ったことよりも、それを「ごまかし」たことを酷く怒っていた。



 「自分でやったことは、自分で後始末をしなければならん。そして、それに『嘘や偽り』が

あってはならん。」



 その「言葉」と、目から火が出るほどの拳骨の「痛み」。



 自分の内面がまだどれほど成長していたかどうかは分からないが、その時自分がやったこと

の大きさは拳骨の痛さよりも、祖父の哀しそうな目によって測り知ることができた。


 「うそやごまかしはいけないこと。」


 あれから自分は変わった…。そんな気がする。それから、剣道の稽古にも身が入るようにな

ったし、子供の頃、体が弱く、また一人っ子であるということで随分甘やかされていた自分で

あったが、その「甘やかし」にも自分で気づくようになり、次第に自ら厳しい道を選んで歩む

ようになっていた気がするのである。






只今大掃除中。みなさん、よいお年を
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Last updated  Dec 31, 2007 01:13:02 PM コメント(10) | コメントを書く
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