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浪漫的狼

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nanaco☆ @ Re:なんと(01/08) 狼さん、お元気です?? その後調子はいか…
浪漫的狼 @ Re[1]:なんと(01/08) nanaco☆さん  わあい。すぐにお返事いた…
nanaco☆ @ Re:なんと(01/08) 狼さん、大変ご無沙汰しております~!!…
wine ガブガブ @ Re:充電します。(04/30) エネルギーが、蓄積されたら、また再開し…
deco7 @ Re:充電します。(04/30) 充電のお役には立ちませんが、遊びに来て…
Jan 8, 2008
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カテゴリ: 創作の部屋
最終回/連載第17回




 遼太はあの後、母の手紙を二度、そして、祖父のメッセージを三度繰り返して聴いた。

 そして、実家に電話をすると、「ありがとう。メッセージ、聴いたよ。じっちゃんの約束、

これから果たすから…」と、ただそれだけ言うと、手短に切ってしまった。

 もっと、何か言わなければいけないような気もしたが、遼太自身、それ以上何をどれだけ話

せばいいか、見当がつかなかったのだ。


 そして、気持ちが落ち着いたところで遼太は腹ごしらえをし、風呂にも入った。

 いつもなら、烏の行水なのだが、今日は気分的にも何となく「清める」という心境であり、

いつもよりもかなり丁寧に洗った。



 そして…


 机の上には酒瓶と徳利とぐい呑み二つが綺麗に並べられていた。母の手紙の中に入っていた

写真も目覚まし時計を写真立てがわりにして側に立てられていた。

 もうすぐ、日付がかわり、「3月7日」になる。

 遼太の二十回目の誕生日は目前だった。



 遼太は、何となく日付が変わるまでは、祖父の願掛けが達成しないような気がして、それを

待つことにしていた。…ただ、それもあとほんの少しになっていた。

 ファンヒーターは動き続けていたが、それほど部屋は暖かくならない。それだけ、今日は冷

えているということであるが、さすがに締め切ったままだと空気が悪い。

 何となく部屋の中の空気が澱んでいるような気がして、「換気でもするか」と、やや手持ち

ぶさたであった遼太は立ち上がり、カーテンを開けた。

 水滴がついて曇ったガラス窓の向こうに暗闇が見える。遼太は静かにサッシを開けた。



 そこには遼太の目を疑うような光景があった。



 雪。 …雪。 ……雪。



 いつから降っていたのだろう。遼太の目の前には一面の銀世界となりつつある街が広がって

いた。

 見上げれば、窓枠に切り取られた黒い四角の空から、静かに白い雪片がひらひらと舞い降り

ているのが見える。



 遼太の田舎では当たり前のように降る雪も、こちらではあまり目にすることはなかった。…

ましてや積もることなど、高校時代から田舎を離れて過ごしている遼太にとっても初めてのこ

とであった。



 遼太は寒いのも忘れて暫く窓越しに雪を眺めていた。



 気づくと、時計はもう12時になろうとしていた。遼太はそのまま、窓を開け放ったまま

で、テーブルを前に腰をおろした。そして、小さな酒瓶の栓を抜き、二つのぐい呑みに少しず

つ酒を注いだ。


 甘く、華やかな、芳しい香りがたちこめる。

 遼太にとって、初体験の「酒」であった。

 というのも、遼太の家では本当に酒を見ることがなく、家族全員が「下戸」ということで、

子供の頃から育てられたため、盆や正月はおろか、冠婚葬祭の席でも親戚を含め、酒を飲んで

いる人を殆ど見ることはなかった。

 そして、遼太自身そういうものだと思い込んでいた。だから、高校時代に学園祭の打ち上げ

と称してこっそり集まった時も、就職が決まって職場で歓迎会を開いてもらった時も、いくら

勧められても遼太は固辞してきた。

 きょうび、無理矢理に飲ませようとする強引な友人も上司もいないので、それで遼太は一度

も酒を口にすることなく二十歳を迎えようとしていたわけであった。

 遼太は二つのぐい呑みに酒を注ぎ終えると、正座をして、そこに居る祖父と対峙した。



 「じっちゃん。俺、二十歳になったよ。」



 彼は右手にぐい呑みを持ち、机の上に置かれたもう一つのそれに軽くぶつけた。そして、戸

惑うことなく、一気に自分の器に注がれた酒を飲み干した。

 甘いような辛いような、今までに感じたことのない独特の感覚が口の中に広がり、喉が焼け

付くような感じがして、遼太は思わず咳き込んでしまった。

 少し頭がくらくらした。

 そして、体の中心に火が点ったような、温かい感触が腹から胸のあたりにじわりと広がって

いくのが感じられた。



 「これが酒か…。」


 遼太は、初めての酒の味を噛みしめながら、自分がこの世に生を受けてから今に至るまでの

二十年間という歳月を思った。そして、そこにはいつも祖父や父母の姿があったことを、今更

のように有り難く思うのだった。



窓を閉めるのも忘れて、遼太は暗闇の中で降り続く雪を見ていた。




 「遼太よ、春の雪は里に降るんじゃ…」


  …また、何処かで「じっちゃん」の声がしたような気がした。

                                            《了》







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Last updated  Jan 8, 2008 09:04:42 PM コメント(18) | コメントを書く
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