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浪漫的狼

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nanaco☆ @ Re:なんと(01/08) 狼さん、お元気です?? その後調子はいか…
浪漫的狼 @ Re[1]:なんと(01/08) nanaco☆さん  わあい。すぐにお返事いた…
nanaco☆ @ Re:なんと(01/08) 狼さん、大変ご無沙汰しております~!!…
wine ガブガブ @ Re:充電します。(04/30) エネルギーが、蓄積されたら、また再開し…
deco7 @ Re:充電します。(04/30) 充電のお役には立ちませんが、遊びに来て…
Mar 20, 2008
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カテゴリ: 創作の部屋


連載第6回




 「もう、咲きはじめた…?」

 しかし高峯が振り仰いだその先にあったのは、無数の木の枝のシルエットに区切られた、ぼ

んやりとした薄暮の空だけであった。

 「どこかに、咲き始めの枝があるのだろうか…。」そう思って、目を凝らして見ても、何も

探すことができないまま、高峯は見上げた首を下へ降ろそうとした。

 長い間上を見上げていたためであろうか、その時高峯は軽い目眩のようなものを感じて思わ

ずよろけてしまった。


 そして、気がつくともう甘い香りはどこかへ消え去っていた。


 「どこか他の樹かな」

 と思うものの、まだ時期的に早く、見渡す限り周囲の樹にも花はついてはいない様子であっ

た。

 …しかし、先程の匂いは紛れもない桃の花の香であり、それは否定できない鮮やかな感覚で

あった。



 高峯は、ちょっぴりノスタルジックな思いを懐きながら、その大きな桃の樹に背を向けて歩

き始めた。途中、誰かに呼び止められるような気がして、何度もその樹を振り返りながら…。


 再び、暫く柔らかい桃畑の斜面を踏みしめて歩き、先程のコンクリートの道に出ると、高峯

は自分の家のある谷へと少しスピードを上げて降りていった。




 その週末は、取りあえずの試験期間ということで、家から殆ど出ることもなく、高峯も一応

テスト勉強に取り組んだ。

 試験は卒業式の翌日の木曜日からなのだが、その前の月曜日と火曜日には授業が思い切りあ

るので、その予習もしなければならない。しかも、提出物も溜まっていて、することは山ほど

ある高峯であった。


 日曜日の午後になって、「これでは明日までには到底間に合わない」と思った高峯は「困っ

た時の結花様」で、プリントを写させてもらおうと、お願いメールを打とうかと携帯電話を取

り出した。

 高峯は携帯電話があまり好きではないので、よく机の抽斗に入れっぱなしにしになってい

る。思えば、木曜日の夜からそのままだった、と取り出して開いてみたが、寂しいことに着信

もメールも殆ど入っていなかった。

 試験期間中だから、部活動の連絡も入っていないし、そもそも自分から進んで使っていない

携帯だから仕方がない。結花のアドレスも知ってはいるが、あまりメール交換などしたことが

無いのも事実だった。

 …そして。高峯は暫く待ち受け画面を眺めていたが、一旦取り出した携帯を閉じて、また机

の中にしまい込んだ。

 実のところ、高峯は、この間のライブ帰りの電車の中で、「これからは勉強も部活も気合い

を入れる。」と、結花の前で格好つけて宣言したばかりだったのだ。


 ということで、さすがにちょっと頼みにくく、「まあテスト範囲だし」と、できるだけ自分

の力でやろうと思い直したのだった。



 高峯の家から結花の家までは、ほんの100メートルほど。少しではあるが、高峯の部屋か

ら結花の家の屋根が見える。

 「結花のやつ『ガリ勉モード』でやってんのかな…。」



 中学時代は結花よりも高峯の方が成績も良かったので、結花はよく「タカネくんと同じ高校

にいけるように頑張る。」と言っていたものだった。が、高校に入ってからは、のほほんと暮

らしている高峯をよそに、結花はこつこつと勉強して、2年の中程辺りからは、定期考査はお

ろか、実力テストでもすっかり逆転されてしまっているというのが現状であった。


 「今度はオレが追いかける番なんだよな…」そんなことをあれこれと考えながら、窓際に立

って外を眺めた高峯であったが、新築の家であろうか、白い幕がかかった建物が結花の家の辺

りに建ち始めており、それがちょうど目隠しになって結花の家は見えなくなってしまってい

た。


 「あんな所に家が建ってたっけ」と思いつつ、「結花の家はどうせ見えても屋根だけだし

な…。」と、高峯は空を見上げた。


 山際にうっすらと黄色がかった靄のようなものがかかっているのが見える。きっと、黄砂で

あろう、…もう春はすぐそこまでやって来ている。

 それを見て、高峯は「オレにも春がこなくっちゃね。」と少し気合いを入れると、再び机に

向かうのだった。








 翌日。いつもより早く家を出た高峯は修理した自転車の走りを確かめるようにペダルを踏み

しめた。しっかりと空気が入ったタイヤはぐいぐいとその力を受け、どんどんとスピードが上

がっていく。襟足を抜ける風が冷たく心地よい。

 早く家を出た時には、結花と時々遭遇する曲がり角が近づいてきた。



 「結花、ちょうど出てこないかな…。ここで結花が出てきたら今日はラッキーデーというこ

  とにしよう…。」

 ちょっぴりそんな願いを思い浮かべながら、クリーニング屋のあるその角に近づいた。けれ

ども、カーブミラーにはヘルメットをかぶった中学生の姿しか映っていなかった。


 「残念…。でも、結花のやつ、もう学校に行ってんのかな。ひょっとして、オレが早かった

  のかな…。ま、とにかく学校、学校。」


  高峯は一段とペダルを強く踏んだ。



 学校が近づくと、徒歩通学の者や自転車通学の者が次々に姿を現し、当然のことながら、そ

の集団は全て校門へと吸収されていく。当たり前のことではあるが、何だか不思議な感じもす

るものだ。そんなことを感じつつ、高峯もその中の一人として校門に向かっていった。


 高峯は自転車のスピードを落とすと、いつものように徒歩で歩いている山崎の肩を叩き、

「うーっす」と声をかけた。後から、

 「今日の英2のノート貸してくれよ、3限目な~。」と野太い声が追いかけてくる。

 「おお、いいぜ、そのかわり漢文ヘルプな~。」


 高峯の学校は、自転車置き場が教室から遠いところにある。特に2年生の教室は自転車置き

場から下駄箱まで軽く100メートルはあるので、直接教室に行ける徒歩通の者に合わせては

いられない。お互いに「後、教室で。」ということは良く分かっているのだ。

 ということで、高峯は山崎を置き去りにして走り去った。


 自転車置き場まで行き着くと、いつもなら遅刻ぎりぎりで停められないほどなのだが、今日

はまだまだ空いていた。

 気分よく自転車を降りて、駐輪すると、大きなエナメルのバッグを肩に掛けて歩き出した。

いつもなら部活の着替えなどでパンパンのバッグも今日は大きくへこんでいる。

 ふと、高峯は自分の置き場の隣のブロックに目をやった。そこは自分と同じ、2年C組の女

子のスペースである。が、そこに見慣れた結花の白い自転車はなかった。

 これまで、結花が高峯より遅いことなど殆どないというのが事実だった。それも、1年に1

回あるかどうかほどの確率だった。


 「どうしたのかな、やっぱり今日はオレが早すぎたのかな…」高峯は思ったが、時計を見る

とそれほど早いわけでもない。小学校から一日も休んだことのない「皆勤娘」の結花が休むと

も思えなかった。

 ちょっと立ち止まってあれこれ考えたが、歩き始めるとそのままそのことはもうすっかり忘

れ、前を少し猫背で歩いているクラスメートの川田の姿を見つけると、高峯は小走りで駆け出

していた。



 教室に入ると、いつもの仲間達がすぐに集まってきた。そして、トイレの横にある廊下の突

き当たりの出っ張った所、通称「でっぱり」へ移動して暫く喋っていた。

 大体話題の中心はというと、「週末いかに勉強していなかったか」ということで、それぞれ

が頽廃的な週末の報告を熱心にし合うのだった。が、そんな自虐的な話題に花を咲かせながら

も、「もう俺達受験生だよな~」という雰囲気も、言外に漂う微妙な時期でもあった。



 予鈴が鳴っても、まだ暫く話していたが、廊下の向こうから数学の山下先生が登場した。い

つものように、指示棒をタクトのように振りながら歩いてくる。と、一緒に話をしていた坂本

が「やっべ~。オレ板書するの忘れてた~。」と言うや否や猛ダッシュで教室へ駆け込んで行

った。皆、苦笑してはいたが、そろそろ本鈴が鳴る頃だということも察知し、三々五々教室へ

散っていった。




 異変に気がついたのは、授業が始まって半分ぐらいたってからだった。 はじめ、高峯は自

分の目を疑った。

 高峯は2月の席替えで、席が前の方になってしまったので、反対に一番後に席が移動した結

花にはそれまで全く目が行っていなかったのだ。

 いつものことながら、正面の黒板に書ききれなかった答案は後ろの黒板にも書かれるのだ

が、解説のために先生が教室の後ろに移動して、説明を始めた時であった。



 「あれ。結花は?」



 窓際から2番目の列の一番後ろには黒ぶち眼鏡の池田さんがいる。結花はその列の最後尾だ

ったはずなのだが、結花の姿はそこになかった。


 というか、そこには結花の机自体が存在しなかった。
つづく







さあ、本格的に始まりましたヨ

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Last updated  Mar 20, 2008 09:56:34 AM
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