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浪漫的狼

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nanaco☆ @ Re:なんと(01/08) 狼さん、お元気です?? その後調子はいか…
浪漫的狼 @ Re[1]:なんと(01/08) nanaco☆さん  わあい。すぐにお返事いた…
nanaco☆ @ Re:なんと(01/08) 狼さん、大変ご無沙汰しております~!!…
wine ガブガブ @ Re:充電します。(04/30) エネルギーが、蓄積されたら、また再開し…
deco7 @ Re:充電します。(04/30) 充電のお役には立ちませんが、遊びに来て…
Mar 29, 2008
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カテゴリ: 創作の部屋
今日は少し多めに…ネ



連載第15回



 結花を最後に見たのは、先週の金曜日だった。あの、漢文の時間のピースサイン…。そし

て、あの白い幕は日曜日の朝にはもうあった…。

 「オレはてっきり月曜日から結花がいなくなったんだとばかり思ってた…。じゃあ、いつか

  ら…。」



 そして、高峯はもう一度あの金曜日のことを丹念に思い出してみることにした。


 学校を出て、自転車置き場まで行って引き返したこと。部室に寄って…それから靴紐を買い

に寄ったこと、山道を歩いて帰ったこと。


 …そして、あの桃の林を通り抜けたこと…。


 そこで、高峯はやっと思い至ったのである。


 「ひょっとしたら、あの時…。」


 高峯は夢に見たあの桃の大木のそばで、一瞬妙な目眩に似た感覚に襲われたことを思い出し

ていた。そのとき嗅いだ…鮮やかな桃の花の香りとともに。


 「あの日、帰りに荷物はあまり持っていなかった。自転車がパンクしていたので、勉強道具

  もほとんど学校に置きっぱなしで…。携帯も家に置いたままだったし。

  …そうか、あの時オレは何かを通り抜けたんだ。


  財布だけは肌身離さず持っていた、だから…きっと向こうの世界からそのまま持ってきた

  のは…、


  財布だけ…。あのチケットだけだったんだ。」




 その日は、試験が2科目だけだったので、それが終わると高峯は速攻で学校を飛び出した。

「いっそのこと、学校に行く前に…」とも思ったが、それは自重することにした。

 そして、試験が終わって家に帰ると、「ちょっと出かけてくる」と母に告げ、すぐに裏山へ

の道を駆け出した。



 もう、陽射しはすっかり春めいていて、ちょっと山を上り始めただけで、すぐ学生服の下の

トレーナーが汗ばんでくるのが分かった。



 道脇の枯草の間から緑色の若草が所々顔を出している。芽吹き始めた樹々もあるのだろう、

遠目に見ると山肌は浅黄色のベールがかかっているように見える。



 暫く歩くと、高峯の目の前に、再び見慣れた風景が広がってきた。


 「…この間は、夕暮れ時にここを家に向かって下ったんだ…。ひょっとしたらあの時…オレ

  は、もうこちらの世界に来ていたのかも知れない。」


 そう思うと、自分が向かう先が、何か得体の知れない場所のような気がして、少し足が竦む

ような気さえもした。しかし、高峯の中にある結花への思いが彼をあの桃の大木のもとへと駆

り立てていた。






 そして、あの桃の樹が見えてきた。

 しかし、高峯はすぐにその樹に近寄ることをしなかった。そして慎重に一週間前の自分の行

動を振り返った。



 「もしも、自分が向こうからこちらの世界に来たのなら、全く反対に動けば、ひょっとした

  ら元に戻れるかも知れない。SF小説なんかでも良くある話だ。」


 高峯は、自分がよろけそうになった場所に恐る恐る近づくと、前と同じように桃の樹を見上

げた。


 時間はまだこの間よりも随分と早く、まだ花も芽もついていない茶褐色の枝のバックには薄

い水色の空が広がっている。


 そして…、高峯はゆっくりと確かめるように、あの時自分が回ってきた方向と反対向きに樹

の裏へ周り込むと、恐る恐る幹の裏側にあるはずの二つの刻印に目をやった。


 しかし…。


 そこにあったのは、高峯の腰の辺りにつけられた一本の線だけであった。それは明らかに、

幼い高峯の背を表した、比較的高い所にある刻印だった。少し右上がりにつけられたそれは、

間違いなく自分のつけたものであった。


 高峯は落胆した。

 「やっぱり。だめか…。」

 「本当に、結花のことは全ておれの妄想だったんだろうか。」


 彼は何度かその樹の周りをぐるぐると回ってみたが、期待していた変化は何も起こらなかっ

た。そして、最後は幹を背に、そこへ座り込んでしまった。




 「『胡蝶の夢』か…。 …胡蝶は、桃源郷には行けなかったんだ…。」



 虚ろな目で見上げた空。…それは、淡い春の色に満ちていた。けれども、どことなく頼りな

げな空だった。


つづく










残す所あと2回です~

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Last updated  Mar 29, 2008 09:25:01 AM コメント(10) | コメントを書く
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