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浪漫的狼

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浪漫的狼 @ Re[1]:なんと(01/08) nanaco☆さん  わあい。すぐにお返事いた…
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Jan 31, 2009
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カテゴリ: 創作の部屋


『鏡の森』(その3)




 「王に、お願いがあります。次の冒険では、必ずや銀の百合の根を持ち帰ろうと思うのです

  が、その為に、あちらに持っていきたいものがあるのです。」

 王は、もはや恐れをなして次の冒険を嫌がるのではないかと思っていたウォレスが自ら志願

して来たこと、そして前回彼が持ち帰った薬草の効果が覿面であったことに、かなり上機嫌で

あった。

 「そうか、なんなりと申してみよ」

 ウォレスは言った。

 「ドラゴンは大変凶暴で、かつ賢い怪物です。倒すのはなかなか難しいと。

  そこで、ドラゴンをおびき出し、その隙に銀の百合を手に入れることを考えております。

  …そのために、ドラゴンに捧げる生け贄が必要なのです。」

 「生け贄…じゃと。」

 「はい。それも、若い乙女が…。銀の百合を守るドラゴンは、手強いです。」


 王はウォレスの顔を流し目でじっと見ていたが、暫くして答えた。


 「よし、ならば国中の女の中で、お前が一番気に入った娘を連れて行くがよい。ただし、ワ

  シの娘以外ということは分かっておろうがの。ふあっ、ふあっ。」


 王には一人娘がいた。

 噂では、次に侵攻しようとしている強国デルサイから、そこの若い王子との縁談を持ちかけ

られているということであった。が、巷での評判は、王はあくまでデルサイについては武力制

圧を考えており、娘はウォレスと結婚させることを考えているのでは…ということであった。


 ウォレスも、もとは皇族の出であるから、血筋的にもさほど問題はないし、なにしろ民の指

示を圧倒的に受けている。彼と娘を結びつけることは自らの政権を盤石のものにすることを意

味していた。


 もしも、無事にウォレスが銀の百合の根を持ち帰った暁には、王は娘とウォレスを結婚させ

ようと考えているのではないか…と、そこまで話す者もいた。


 しかし、ウォレスはそのような噂には耳を貸さず、忠実な部下を演じ続けていた。



 彼は王の言葉に対して、頭を下げると、次の言葉を口にした。

 「王…、あとは『塩』でございます。塩を5樽ほど持っていきたいと。」

 「なに、『塩』じゃと。そんなものは幾らでも持っていくがよいが、何に使うのじゃ。」

 「ドラゴンはもの凄く澄んだ湖の中にいます。その水は真水です。…ですから、塩に弱い

  と。…これは…生け贄の話と同様に、あの魔女に喋らせた話なのですが…。」

 「お前が討ち取ったあの…魔女か。」


 そこで、ヒレドス王は少し間を置いた。そして、また言った。


 「まさか、お前…魔女に誑かされているのではないだろうな。」

 しかしウォレスは、そこはきっぱりと言ってのけた。

 「はい。命乞いをしている時に喋らせたので、間違いはないだろうと。」

 「ふん。まあいずれにせよ、お前は銀の百合の根を持ち帰ればいいのだ。

  しっかりやるがよい。」

 王は、そう言うと、側近の差し出した器から、葡萄酒をぐびぐびと飲み下した。

 そして、「ブハァ」と臭い息を吐き出し、またこう告げた。


 「満月の夜は十日後だが、準備の方はよいのじゃろうな。」

ウォレスは落ち着いた声で、「はい。」と答えた。

 「生け贄にする乙女の目星はついているのか。」

 「はい。」

 「そうか、それは良かった。ちゃんと、ドラゴンをおびき出せるだけの器量を持っている女

  を選べよ、もっともドラゴンがそんな眼を持っているかどうかはわからぬがの。ふあっ、

  ふあっ。」


 ウォレスは跪いて、一礼すると、その場を後にした。



 それから数日後の夜、ウォレスはまたあの酒場を訪れた。

 取り巻きたちがすぐにウォレスの周りに近づいてきたが、彼は一言「済まぬが、今日は外し

てくれぬか。」と言い、一人で一番奥の椅子に腰掛けた。


 そこの酒場に娘がいた。

 名前はナターシャと言った。その昔、その酒場の前に捨てられていたみなしごであった。 

 ただ、彼女は運良くその酒場の主人に拾われて、ずっとそこで育てられた。

 そして何時の日からか、その酒場で働くようになり、その器量と気だての良さから、まさに

押しも押されもせぬ看板娘になっていた。


 ウォレスは「酒をくれ」と一言告げると、黙ったまま椅子に座っていた。その様子は誰も寄

せ付けないような雰囲気を持っていた。

 ナターシャは大きな陶器の瓶になみなみとつがれた葡萄酒を持ってウォレスに近づいた。酒

場にいた者たちは、皆それぞれに話をしている振りをしながら、ウォレスの一挙手一投足に注

目していた。


 彼は、机の上に瓶を置いたナターシャの耳元で何かを囁いた。すると、ナターシャの表情が

一気に強ばった。それは誰の目にも分かるほどであった。


 巷での、ここの所の話題はと言えば、誰もが「ウォレスが選ぶ乙女」であった。

 城内の噂は瞬く間に広まっており、ウォレスがまた冒険の旅に出るということと、ドラゴン

の生け贄に若い女が連れて行かれるということがあちこちで話の種になっていた。

 そして、ウォレスが選ぶ女性は一体誰かということが注目されていた。

 民の間では、王が自分の娘以外なら誰でも良いといったということまでが知れ渡っているの

だった。

 「次の満月」、ということはもうそろそろ「決定」される時期であろうとは誰もに予想でき

ていた。

 つまり、まさに今その瞬間を目の当たりにしたのだと、誰もが心の中で感じていたのだっ

た。


 ウォレスはそんな周囲のざわめきには目もくれず、青ざめるナターシャに何かを告げた後、

残りの葡萄酒を一気に飲み干し、すぐに酒場を立ち去った。



 そして、いよいよ満月の夜が近づいていた。 




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Last updated  Jan 31, 2009 09:38:46 PM コメント(1) | コメントを書く
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(Feb 1, 2009 06:01:30 AM)

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