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浪漫的狼

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nanaco☆ @ Re:なんと(01/08) 狼さん、お元気です?? その後調子はいか…
浪漫的狼 @ Re[1]:なんと(01/08) nanaco☆さん  わあい。すぐにお返事いた…
nanaco☆ @ Re:なんと(01/08) 狼さん、大変ご無沙汰しております~!!…
wine ガブガブ @ Re:充電します。(04/30) エネルギーが、蓄積されたら、また再開し…
deco7 @ Re:充電します。(04/30) 充電のお役には立ちませんが、遊びに来て…
Feb 1, 2009
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カテゴリ: 創作の部屋
『鏡の森』(その4)



 玉座を前に家臣達に囲まれ、ウォレスとナターシャは再び鏡の中へと向かうことの報告を行

った。

 王は、だるそうな目を少し見開いて言った。

 「名を何と申す」

 「ナターシャでございます。」

 「その方はみなしごであると聞くが。」

 「はい。その通りでございます。」

 そこで、王はニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべた。

 「…ウォレスも、考えたものじゃ。

  みなしごじゃと、悲しむ家族がいないということじゃな。」


 「はい。」


 その返事は、隣に控えていたウォレスのものであった。

  ナターシャは俯いて少し唇をかみしめていたが、それは顔にかかった栗色の髪で隠されて

おり、彼女の様子に気づく者はいなかった。

 「みなしご」であるとは言え、彼女ほど多くの民から愛されている女性はいない。

 そんな彼女が生け贄になって悲しまない者はない。

 親代わりの酒場の主人であろうと、それは同じ事であった…。

 ただ、その悲しみは、肉親を失うそれとはまた別のものであり、ウォレスの決断に誰も異を

唱える者は無かった。



 そして、ついに満月の夜が来た。

 西の空にオレンジ色の満月が浮かび上がった頃、城内ではもう準備は万端整っていた。

 「本当に大丈夫か。」

 ウォレスに伴の者、援護の兵士をつけるように何度も大臣の心配声が掛けられたが、ウォレ

スは固辞した。無駄な死人を出すわけにはいかないというのが理由であった。

 鏡が広間の窓辺に据え付けられ、集まった多くの者たちは、南の空に月がやってくるのを息

をひそめて見守った。

 円い月が辺りの星の輝きを霞ませ、煌々と照りはじめた。そして、窓からその青白い光が差

し込み始めると、鏡の表がゆらゆらと揺らめき始めるのだった。


 「おお」


 その鏡の向こうには黒い森が広がっているのが見えた。

 周囲の者たちは暫しそのその奇跡に目を奪われていたが、すぐにそれぞれの役目を果たすべ

く動き始めた。

 鏡のそばに仁王立ちになっているウォレスの元に、塩を詰めた樽が並べられた。 ウォレス

は大の男が3人がかりで運んできたそれを、いとも簡単に片手で持ち上げると、鏡の中へと放

り込んだ。

 鏡の表は飛沫をあげることこそ無かったが、ちょうど水面のそれと同じように、静かにその

樽を飲み込んでいった。

 一つ、二つ、三つ…と、樽が五つ全て鏡の中に消え、次に武器や食料などが詰め込まれてい

ると思われる木箱やら大きな革袋が次々に投げ込まれた。

 そして、広間にあった全てが鏡の中に収まった後、ウォレスは、


 「では。行って参る」

 と告げた。

 王は、「無事を祈るぞ」とだけ言うと、すぐに後ろを向いて立ち去ろうとした、

と、ウォレスはその王に声を掛けた。

 「恐れ入りますが、王よ。もしも私が帰らぬようなことになっても、救いはいりませぬ。ド

  ラゴンは、こちらの世界にまでは来ませぬ故。」


 ウォレスの目は真剣であった。王は、少し間を置いて、

 「判っておるわ。」

 と横目で彼の方に視線をやった。


 そして、そのやりとりに周囲の者は胸を撫で下ろすした。

 天下無双のウォレスがかなわない者に、一体誰が勝てようか…。


 そして、ウォレスはナターシャの手をとり、「よいか」と声を掛けた。ナターシャは静かに

頷いた。その目には涙が浮かんでいるように潤んでいた。


 「では、いざ。」


 そう告げると、ウォレスはナターシャを両手に抱きかかえて、鏡の中に右足を差し入れた。

二人の影はすうっと、水に溶け込むようにその中へと消えた。


 月の光の煌めきが、雫のように見えた。






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Last updated  Feb 1, 2009 05:59:56 PM
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