konosoranosita

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2005.05.09
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カテゴリ: Short stores
あなたは私を見ていた。
あなたの視線を感じない日は無かった。
けれどあなたの視線はまだ幼くて、私はただあなたに微笑むより無かった。

あなたの暑中見舞いの中に私と会えなくなると心が淋しいという行を見つけたとき、私はそれを良くあるファーザーコンプレックスだと決め付けました。
私はとても不安でした。
私はあなたの一途さが怖かったのです。
いえ、あなたが怖いのではなくて私が怖かったと言うべきでしょう。
わたしはあなたに引き込まれそうな自分が怖かったのです。
だから私は当時付き合っていたガールフレンドと頻繁に会うことよって、あなたへ行ってしまわないようにする必要があったのです。


私はもう多分来る事の無いあのプールへ行きたくなって、ガールフレンドと、友達のカップルと4人でぶらぶら出かけました。

プールの前に白の服を着た長い髪の少女が立っていた。それがあなただと判るのに時間はかかりませんでした。
あなたの良い人ねとガールフレンドは言いました。
そんなんじゃないよ、教え子だよと私は言って、皆を置いて歩き出しました。
あなたは急に大人になったように、気高く立って私を見ていた。
元気だった?と聞く私を一瞥してあなたは私から離れていった。
私はあなたの手をひっぱて何処かへ行ってしまい衝動に駆られながらもどうすることも出来ないことを知っていました。
けれど私はまだ何も手にしてはいないのにもう二度とあなたを取り戻すことは出来ないのです。あなたの心はもう完全に私から離れてしまったことがあなたの表情から、あなたの視線から確実でした。
私はとんでもない間違いを起こしてしまったのです。
ガールフレンドは綺麗な子ね、でもきっとあなたを不幸にするわと真面目な顔でいいました。
それから私たちが上手く行かなくなったことは言うまでもありません。私は結果的にガールフレンドと疎遠になり、自然消滅しました。


けれどあなたはびくともしなかった。

私は今でもあのプールの前に立つあなたのあの姿をありありと思い起こすことが出来ます。
あの時のあなたはあの時だけに限定された、少女から大人へ変わるその瞬間のあなたでした。
私はあの時のあなたをはっきり言えば欲しかったのです。
けれどどうすることも出来なかった。










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Last updated  2005.09.07 14:44:55
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