konosoranosita

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2005.10.09
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「それでもう、彼女のお母さんから連絡はないの?」
「今のところはないけど。でもどうかな?今日きっと入院して、医者といろいろと話をしたと思うから、明日あたり電話でもくるかもしれないな」
「彼女の症状が悪化して大変だって言われたらどうする?」
「気持がないのに手出しするべきじゃないって気がついたんだ。今までは人にどう思われるかを気にしていたけれど、彼女の為にも、自分の為にも何もしない方が良いんだと思う。医者にも言われたし、その通りだと思うから」
「ちゃんと話をして別れた訳じゃないんでしょう?彼女はそれで納得できるの?」
「そういう問題じゃもうないんだよ。彼女と話し合うって事さえ今はできる状態ではないんだ。会いに行かないとおかしくなるから会いに行っていただけだった。この一年間は。話なんて特にしなかった。ただ何時間か一緒にいれば、ただ付き合っているという状態であればそれで彼女は良かったんだ。別れ話なんてしたら、発作が起きて手におえなくなるから。何度もそれを繰り返してきてたし。だから今更ちゃんと話して別れられるっていうものじゃないんだよ」
「でも何だかかわいそうね。私だったら凄く悲しいと思う。病気なのに。でもあなたには迷惑な話よね。初めからそんな病気があるってわかってたら付き合わなかったのね」
「それを知っていたら付き合わなかった。確かに。君は何も知らないから彼女に同情するけれど、もし君に彼氏がいたとして、そんな状態だったらきっと凄く怖いと思うよ。何されるかわからないんだから。おかしくなると凄い力になるし、何も怖くなくなるみたいで、何処からでも飛び降りちゃいそうな状態になったりするんだ。殴りかかってきたりもするし。あまりこうゆう事は言うべきじゃないけれど、君に僕が薄情な奴ではないってわかってほしかったから、つい言い訳のように話してしまったけれど・・」
「そうね、私が思うほど簡単な事じゃないわね」

「別に良いけど」
「そうじゃなくて、僕が言いたいのはね、君とこれからもずっと会っていきたいって事なんだ」
「だから良いって言ったでしょう」
「君は鈍感だな。僕の言いたいことがわからない?」
「わからない。まわりくどい言い方は通用しないのよ。言いたいことがあるのならはっきりとわかり易く言って頂戴」

尚人は笑っていた。そして、僕と付き合ってくれる?ってとても照れくさそうに言った。
と言うよりエリに言わされたのかも知れないとエリは思う。

嬉しかったけれど手放しでは喜べなかったのは否めない。
誰かが不幸で、自分だけが幸せになれる訳がない。
だから普通だったらその喜びに酔ってしまいそうだけれど、心は醒めていた。

多分彼女の母親から尚人に連絡があるだろう。

そうすれば、一度顔を出せば、それは一度で済まなくなるだろうし、母親も期待してしまうだろう。
尚人に対して。

エリは尚人が心配と言うよりも、むしろそんな彼女をきっぱりと切ってしまえる人ではあって欲しくは無いと思うのだった。
それに尚人が自分に心が向いてくれていても、それは今までの不自由な生活の反動で、誰でも良く見えてしまうのではないかと思ったりもした。
何故自分でなければならないのかを尚人に聞いてはいない。









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Last updated  2006.01.26 21:30:00
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