konosoranosita

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2005.10.12
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「ねえ、何故私なの?何故他の誰かじゃなくて、私?」
エリは前から聞きたいと思っていたこと聞いてみる。
尚人は少しぼんやりしていたけれど、そのエリの問いかけを聞いた途端、我に返ったようだった。

「考え事していたのね。彼女の事気にしてるの?心配だったら行ってあげればいいのに。本当に私、そう思う」
「違うよ、今考えてたのは君のとこだよ。エリを一番に考えないといけないなって思ってたんだ。もう済んだ事をいつまでも引きずっていたら、君に悪いなって」
「そうなの?本当に?心ここにあらずって感じがしたけど」

「何故エリなのかって事だろう。それはね、エリといるとね、違和感がないんだ。それが凄く自然な事に思えて、無理がない。無理する自分がいないし、ありのままの自分でいられる。それって何でもないことのようだけど、それほど大切な事もない気がしたんだ。書店で初めて話したころからずっと思っていた。だから毎日のように顔を出したんだと思う。会って一言でも二言でも言葉を交わすのが楽しかったし、そうしない訳にはいかなかった。僕は普通そんな事は決してしないタイプだから、それはとても珍しいことだったし。君に1日会わないとまるでどこかに大切な何かを忘れてきてしまったみたいに落ち着かなかった・・・。納得してもらえたかな?」

「それって喜んでいい事柄なの?要するに気を使わない相手って事でしょう?」
「ほらね、またそんなふうに君は言うけれど、でもそんなところがいいのかな。とにかく普通でいられるってエリにはわからないかもしれないけれど、僕にはとても大事なことなんだ。静かな波が押したり引いたりするようなそんなささやかな浮き沈みの中で、ゆらゆら揺れていられるような心地良さを君に感じるんだ」


エリは尚人の言葉が嬉かったけれど、性格上そっけない返事しか出来ない。
優しい言葉とか、甘やかされることに慣れていないから、どう受け止めて良いのかがわからないのだ。
両親は、感情というものを出来る限り排除するような二人だったから、甘えた事もなかったし、優しい言葉をかけられた事もなかった。
それを心から望んでいるのにいざそれが目の前にあると、持て余してしまう。

尚人にはその事を話してあるけれど、本当に理解してくれているだろうか?
尚人にだけはわかってほしいとエリは思う。
そっけない子だと思って、離れて行かれてしまう経験が多かった。
わかってはいてもなかなか自分の性質を変える事は出来ない。
でも尚人は唯一今までにない人の様に思える。
そっけないエリのその裏にある本当の気持をわかってくれるような人ではないかと。





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Last updated  2006.01.26 21:26:09
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