霊柩車を追う様に追走するバス。
乗っているみんなの顔は特に哀しみに包まれている訳ではない。
しかし、気が付くと会話が無くなっている。
黙々と進むバス。
途中で兄の働いていた会社に立ち寄って貰う。
雨の中、社員全員が建物の前に並んで、兄を見送りに出て来てくれていた。
一旦、建物の入り口の前に停め、低い警笛を残して霊柩車は走り出す。
兄は、この職場で命を燃やしていたのだ。
目の前に並んでくれた人達と、一緒に冗談を言いながら沢山の結果を残して来たのだ。
思いもかけず、そこに居た兄の姿が見えるかのような気がして来ていた。
ここに居る人達とう共有した苦労、喜び、躊躇、決断、日常・・・
悲しみよりも誇らしさを感じながら、涙が止まらなくなっていた。
兄は、ここでみんなに好かれていたという事が、何故か分かった。
闘病中も、入院してからも、歩けなくなっても、それでも籍を置いてくれた会社。
生存しているだけになっても、一員として認め続けられていた。
その兄が、命の全てが燃え尽きるまで頑張って、戻って来たのだ。
凱旋を祝って貰えているのかのような、誇らしさを感じてしまった。
その空気を引き摺るように進むバス。
誇らしさを失うことなく、バスはそのまま火葬場に付けられた。
住職の読経が進む間も、その誇らしさは失せる事がなかった。
最後の挨拶をして炉に入って行く姿を見送っても、家族の涙は長くは続かなかった。
会社を一周した時に感じた誇らしさが、みんなを満足感に包み込んでいたのかも知れない。
火葬を待つ間に、もう一つの不思議に出会う事になった。
ドアノブに引っ掛けて、礼服のボタンが飛んだ。
自分の礼服はダブルで、ボタンホールを介して力のかかるボタンは、礼服の外側に一つ、内側のベルトに一つ。
そして、外側のボタンの逆側に、何の負荷もかからない飾りボタンが一つ。
飛んだのはその、飾りボタンだった。
ドアノブは確立を無視して、そのボタンを選択的に引き千切っていた。
火葬の済んだ骨は見るからに脆く、崩れ落ち、手足の関節から先はその形を失ってしまっていた。
目に付いたのは、腹の左側に位置する茶の列になった灰。
丁度、ストーマから先の、出口を失った大腸の位置になるのだろうか。
そこの何が有ったのか、明らかに他とは違う色の灰の列が鮮やかだった。
そして、腰骨の左側を染める、紫色の斑点。
いつも痛がっていた、骨転移部分なのだろうか。
残った骨は脆く、一番太い腿の骨すら箸で拾う際に崩れてしまった。
半分だけ原型を留めていた頭蓋骨も、箸で挟んだ瞬間に割れ、表と裏に剥がれてしまった。
耐えられるだけ耐えたのだろう。
志半ばでなどという言葉は、兄の生き方には適用出来ない。
何もかも、果たしたという言葉の形容が相応しい。
ここまでやった、自慢の兄の最後の仕事の結果を、見せ付けられているようだった。
Soul Aliveを聞きながら・・・ Mar 1, 2008
卒業して行ったキミへ Feb 26, 2008
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