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2010.05.04
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カテゴリ: 映画・DVD
アカデミー賞ノミネート作品。
時代はケネディ大統領暗殺の翌年。
公民権法が制定されてすぐの頃です。

アメリカのとあるカトリック学校で起こった疑惑をめぐる心理戦。

学校唯一にして初の黒人男子生徒と、革新的な神父(フィリップ・シーモア・ホフマン)の関係を疑う、校長がメリル・ストリープ。
最初に疑念を持ち、疑惑と真実でゆれる若い担任のシスター(エイミー・アダムス)。この3人の聖職者が主な出演者。

そこに確固たる証拠はなく、あるのは「疑う心」のみ。
結局、真実は最後まで明かされることはなく、しかし事実、その疑念のみで追い詰め神父は転任することにはなります。

生徒と神父の間には、何かあったかもしれないし、なかったかもしれない。

彼自身には「そういう気質」があるということが母親の口から明かされていますね。
「それでも母親か?!」となじるメリル・ストリープに対して、
「大事なのには、あの子を気にかけてくれる人がいること。理由はどうでもいい」
と、その時置かれていた黒人としての社会の実情や、彼自身の性質など、
守られてい世界にいる人間には所詮わからない現実を突きつけている所など、考えさせられます。

見方は色々あると思うんです。
確かに、メリル・ストリープの演じる校長は古い考え方から抜け出すことが出来ないし、
おそらく黒人に対する差別も未だ持っているし、子どもには必要以上に厳格。
そしてそれらを守るためには「神から離れることは結局神を守る事だ」という信念を持って、
大罪である「嘘をつく」ことさえいとわない人です。

でも、一方で、視力の衰えたシスターが施設に送られないように、

不利益を被らないように「普通の生徒」として卒業できるように配慮しているんだと感じる場面もありますね。

神父が、男子生徒といわゆる同性愛としての関係を持つ事件は昔から後を絶たないようです。
(カトリックでは同性愛は罪です)
そして彼女の今までの経験の中でもあった。
だからこそ、彼女は自分の直感に絶対的な自信があった。

周りの人たちは「無かったことにしよう」という態度の中で、
一人だけその疑念に立ち向かう姿は、見方によっては立派です。

ただ、証拠はない。
そして、彼女はその証拠を作るために「嘘」をついてしまった。
”神を守るためには、時には神から離れることも必要だ”という信念で。

彼女は、ブッシュ大統領のメタファーだそうです。
ラスト、「疑惑が・・・疑惑が・・・」と泣き崩れる姿は、自分の行動が果たして正しかったのか、その疑惑に捕らわれた姿に見えました。



さて、一方で神父。
この神父は、男子生徒が学校で浮いている存在だということを知っています。
暴力こそ振るわれていないものの、いわゆる”いじめ”を受けている事を描写するポイントはいくつかありますね。
また、生徒は父親から虐待を受けていることもあり、同情し、気にかけています。

神父が生徒と二人きりになったことに対する釈明には説得力があります。
でも、確かにここにも証拠はない。
そして、校長がついた嘘がきっかけで転任をしたように見え、その行為だけではもしかしたら「あった」のではないかとも見えます。
でも、神父は次の教会では昇進している。
ただ単に昇進のための転任だったのではないか?とも思えるわけで。

校長とは正反対の革新的な考え方の人であり、だからこそ彼を差別せず、
彼の実情を見て彼に優しく接しているのですが、その中で「それ以上の」関係があっても、
不思議ではないよね、というようにも見えなくもない。

彼が嘘をついているかは解らないけれど、ただ一つ言えるのは男子生徒は彼をとても頼りにして、慕っていたということだけですね。
それは、そこに大きな真実としてあると思います。


アメリカのその時代が持っていたであろう社会的な背景に、
さらにカトリックとしての信仰としての背景も絡み合って出来上がった疑念。

その疑念を捨ててしまえば、それはそれで問題なく、何事もなく過ぎ去ったかもしれない。
少なくとも、校長の「確信」を「確証」だと思い込んだ上での追求は間違いだったと言えるでしょう。
でも、校長の「確信」が真実ではないという証拠もまたないわけであり。
「私の経験がそう言っている」という言葉は、正直、それだけをよりどころにして人を疑いぬく怖さと、でもそれは間違っていないことも往々にしてあるなという思いで複雑に感じました。

見ている私からも、結局事実はわからない。ただ、証拠がない中で追い詰める姿は人の持つ疑念や思い込みの怖さを如実に表しているなと感じました。


演出面では、もともとはブロードウェイのストレートプレイだそうで。
トニー賞(たぶん演劇部門)とピューリッツァー賞を取っていますね。
そのためかちらほら舞台っぽい演出があります。
わざとらしく電球が切れたり、雷がなったり。
ベタだなーと思ったけど、舞台劇だと思うと納得。

また、4人の登場人物だけで繰り広げられる密室劇だそうで。
多分、舞台の方がこの問題は浮かび上がりやすいかなぁとは思いました。

メリル・ストリープの鬼気迫る演技というか、疑念にとりつかれた狂気のようなものが非常に気迫があって怖かったです。
でも、面白い映画だと思います。109分と非常に短い映画なので、時間があれば是非。





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Last updated  2010.05.05 00:46:30
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