名無し人の観察日記

名無し人の観察日記

2005.02.23
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テーマ: 戦争反対(1197)
カテゴリ: カテゴリ未分類
 私のなくなった二人の祖父は、いろんな意味で対照的な人たちでした。
 父方の祖父は明治生まれの海軍軍人。志願して海軍に入り、苦労と努力の末、少尉にまで登りつめました。一般の兵から軍歴をはじめて、少尉にまでなるのは1000人に1人と言われた時代の話です。
 明治の男らしく、余計な事は一言も言わない祖父でしたが、やはり青春を捧げた海軍には格別の思い入れがあったのでしょう。良くその頃の話をしてくれました。空母「翔鶴」に乗って真珠湾攻撃に参加した事や、南方の航路で船団を襲ってくる潜水艦と戦った話などです。私が戦争というテーマに興味を持ち、調べだしたのは、この父方の祖父の影響が大きかったと思います。
 一方、母方の祖父は徴兵されて陸軍に入り、兵士のまま軍歴を終えました。関西人らしく話し好きだった母方の祖父の、軍隊時代の思い出の中でも一番の得意だったのが、大陸での魚釣りの話です。
 祖父の配属された部隊の駐屯地は南京でした。そう、あの大虐殺があったとされる南京です。ただ、祖父の話を聞く限りでは、そうした事件は(少なくとも中国が主張するような形では)なかったように思えます。
 ある日、川端を通りがかった祖父は、水面に巨大な黒い影を見かけました。釣りが趣味だった祖父は、これは大物とばかりに釣り上げることを決意しますが、内地から持ってきた道具では歯が立ちそうにありません。そこで、仲良くしていた中国人の鍛治屋に、部隊で使わなくなった馬の蹄鉄を渡し、これを削って巨大な釣り針を作ってもらいました。他にも大きな釣竿などを用意し、あの影を見た場所で3日間ほど粘った末、ようやくその大物を釣る事に成功しました。
 その話が嘘ではない、と言う証拠に、祖父はその大物の鱗を剥がして作った靴べらを見せてくれましたが、それが本物だったのかどうか、今となっては分かりません。
 二人の祖父は私の両親が結婚するまで顔を合わせた事はなかったのですが、一度だけ、その人生が交差したことがあります。1945年8月、広島での事でした。
 内地に帰っていた二人は、たまたま広島に近い部隊に配属されており、原爆投下から数日後に、現地に救援に行きました。軍隊時代の話はいろいろとしてくれた二人でしたが、この日広島で見たものについては、二人とも多くを語ろうとはしませんでした。ただ、後に広島の事を特集したテレビ番組などがある度に、二人ともこう言っていたそうです。


 地獄とまで言われた南方航路の護衛に従事した父方の祖父、激戦の続いた大陸の戦場に立った祖父。二人がどういう思いで孫の私に軍隊の思い出を語ったのか、もう聞く事は出来ません。ただはっきりしているのは、二人とも戦争の悲惨さについてはともかく、自分が属した「軍隊」と言う組織への恨み言や愚痴は一言も口にはしなかった、と言う事です。
 祖父たちの話を思い出すとき、私は「戦争に反対する」と言う当たり前の事と同時に、恐らくは二人と同じ思いで「国を守ろう」としている人々への感謝の気持ちもまた、新たにする事にしています。





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Last updated  2005.02.23 23:29:12
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祖父への感謝  
私の祖父も、徴兵され、大陸で負傷。
内地に送還され、終戦を迎えました。

その後、平凡な一サラリーマンとして働き、ひっそりと生涯を終えました。

もう祖父の記憶も遠い昔のこととなりましたが、国を守り、戦後は復興のために、或いは家族を養う前に懸命に働いた祖父へ感謝しています。

祖父の世代、命を賭けて国や家族を守ろうとした方々がいるからこそ、自分がここに存在し、日本という国が存在していることを忘れてはならないと思います。 (2005.02.24 00:43:37)

確か・・・  
ふは さん
僕の父方のひいおじいちゃんが日露戦争海軍で軍艦の機関室で石炭入れてたそうです
後、父方の親戚は大東亜戦争で陸軍か海軍かどちらか知りませんが整備士で
母方の親戚(韓国人)が確か志願して海軍航空隊のパイロットしてそうな

必死に頑張って日本を支えてくれた方々に感謝です。 (2005.02.24 01:29:45)

そうですね  
 ケロヨンmk2さん、ふはさん、書き込みありがとうございます。

 戦わなければ大事なものを守る事ができなかったあの狂瀾怒涛の時代に、生命を賭けて立ち向かっていった全ての人々が、今生きている私たちを支えてくれているのだと思います。
  (2005.02.24 23:52:12)

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