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高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁を機に日中関係が悪化するなか、中国が日本を批判する際に「新型軍国主義」との表現を使う事例が目につく。日本の防衛費増大など安全保障を巡る批判ではこれまで「軍国主義の復活」などの表現が使われてきたが、新たな表現は、対日姿勢が一段と厳しくなる兆候とみる向きもある。
この表現は1月の中国共産党機関紙「人民日報」が「鐘声(警醒の鐘の音の意味)」のペンネームで論評記事に載せたことから注目された。日本が軍国主義の道を再び歩もうとしているとの論調は変わらないが、非核三原則の見直しなど具体的な動きを挙げて「日本の核保有の企て」と指摘。昨年11月の高市氏の国会答弁にも「日本の指導者は台湾問題で誤った言論を発表し、公然と中国に対して武力威嚇を示した」と触れてはいるが、批判の矛先は日本の安保政策全体に向けられている印象だ。
現代中国政治を研究する慶応大の加茂具樹教授は、安保関連3文書改定に向けた動きや国家情報会議の創設など高市政権の安保政策を、中国が「(自国が主導する)東アジア秩序に対する挑戦だと受け止めている」と分析。こうした日本への不満や不安が、国会答弁を機に「新型軍国主義」という表現に変わったとみる。
「鐘声」は中国の国際問題や対外政策に関する姿勢を示す際に用いられるペンネームで、中国共産党指導部の意向が反映されているとされる。
一連の記事が対日政策の転換を意味するのか「まだ断定はできない」(加茂氏)ものの、中国商務省が6月、レアアース(希土類)を含む軍民両用品に関する対日輸出管理の強化策を打ち出した際には「新型軍国主義の加速」を理由に挙げ、中国の外務、国防両省の報道官も対日批判の際にしばしば用いるなど、対日外交の新たなキーワードになりつつある。
高市政権の安保政策には、戦後日本の「専守防衛」政策を逸脱するものがあるにせよ、中国も今では3隻の空母を保有して日本や台湾周辺の海域で演習を繰り返し、核弾頭数も急増している。小泉進次郎防衛相が5月、シンガポールでの国際会議で「核兵器と戦略爆撃機を大量に保有する国が、そのいずれも持たない日本を『新型軍国主義』と呼ぶのはおかしい」と反論するなど、批判の応酬は激しくなるばかりだ。
問題は、日中どちらの主張が正しいかではなく、日中政府間の意思疎通が滞ったことで相互不信が増幅し、互いが軍事力や防衛力を強化するという悪循環に陥っていることにある。
加茂氏は、日中関係改善の糸口として「日中双方はまず社会制度や価値観が違うことを認識した上で、共通の利益・価値を見いだして危機管理しなければならない」と指摘する。人の交流が滞れば、相互不信は募るばかりだ。日中関係の改善に向けて、まずは停滞気味の人的交流の回復を急いではどうか。
(論説委員)
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