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Aug 9, 2006
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カテゴリ: 普通の日記
5時…辺りが微妙に明るくなってきているのだが、雨の音がやたらうるさい。そういえば台風が来ているということを慣れない山梨放送の天気予報で言っていたのを今頃思い出した。新しい土地での楽しみの一つとしてテレビのローカル局というものがある。47個都道府県があるのと同じように、県毎にローカルテレビがあるようだ。京都なら京都テレビといった具合だ。安いホテルでテレビがついていない懸念があったのだが、無事にテレビがついていたので見てみることにした。どうやら時間も時間だけに天気予報しかやっていなかったのだが、それでもなかなか面白いものだと言える。いつもと違うものは総じて新鮮だ。天気予報ごときでテンションが上がっている私はかなり変に見えたことだろう。

今日の予定はRと一緒にファミレスで勉強することだった。これではいささか色気の欠片もないのだが、もともと色気も何もない私には特に問題があるようには思えなかった。数学が不得意なのは私とそっくりなのでその部分で少しだけでも手伝えることがあったら手伝ってあげたかったのだが…どうもRは私に勉強を教わることが嫌らしかった。なので私には教えることが困難な商業系統のものを持ってきて勉強していた。ちょっとだけ残念だったのだが、そこのところで粋がるようなことはしたくないし、それは特に年上だからといって利点だと考えることはしなくなかった。なので勉強しているRの姿を眺めていることにした。

そういえばRは私が山梨に来る前に妙なことを言っていたのを勉強しているのを眺めながら思い出していた。私の字が見たいと…。確かに私の字は他の人とは少しだけ違っていた。何と言うか…男の書く字には到底見えないような字しか書けないのだ。私自身それほど自分の字が気に入っているわけではない、むしろそれによって高校時代にいい思いをしなかったので嫌いだと言ってもよかった。丸くて小さな字というのはぱっと見たところでは女の子の書いている字に見える。なのでノートを紛失してもそう簡単には帰ってこなかったし、それを利用されることも多かった。私としては人の役に立ちたいというのがあるので言ってくれればいくらでも貸し出すのだが、そのように使われてしまうのは少々心苦しいというものだ。
そんな字が見たいとRが言っていた。前に会いに来た時に一度だけノートを見せたことがあったのだが、その時に随分と興味深そうに見ていたのできっと生で書いているところを見たいのであろう。それくらいならただ書くだけでいいのでお安い御用というものだ。

ルーズリーフを一枚もらってちょっとだけ字を書いてみたのだが、それだけでRは喜んでいるように見えた。こんなことで喜んでくれるなんて私自身も嬉しかった。こんな小さなことで幸せを感じる私はある意味では単純なのかもしれない。
そこで私にふと考えが思いついた。何もできない私が少しだけでもRのどこかに残っていて欲しかった、なので私はRが気に入っているように見えた私の字で…私の直筆の字でラブレターを書くことにした。目の前でRが一生懸命に勉強しているところ私がこんなことをして申し訳ないような感じもしたが…。何もできない私のささやかなサプライズといったところだろうか(笑)思い立った私はRと同じくらい一生懸命に書き始めた。途中でRが何やらノートに一生懸命に書き込んでいる私に気づいて何を書いているのかを聞いてきたのだが、ここでばれてしまってはサプライズの意味がないので頑なに隠していた。お互いに一生懸命に何かをしていたまま時間は過ぎて…3時になった。私はノート一枚に書ききれるようにラブレターを調節して書き終わって…Rから借りた本(これがRの読書感想文の課題らしい)を読んでいた。読書感想文というのは懐かしいもので…どのような本を読んで感想を書くのかが気になってRに頼んで読ませてもらっていたのだが、内容の抽象性に驚いてしまった。ページ数としてはたいしたことはないのだが…感想を書くのはとても難しいものだった、しかもオムニバス形式をとっていて…話に一貫性もなかったような気がした。私の時代は普通の物語や戦争をテーマにしたものが課題だったのだが、現代は変わってしまったのだろうか、私がもしもこの課題を出されていたら困ってしまっていただろう。そんなことを考えながら読んでいたのだが、Rは勉強がひと段落したようでファミレスから出ようという話になった。出来たラブレターを鞄に仕舞ってファミレスを出ることにした。目的地はいつもの公園、私が山梨を発つのが6時半なのであと3時間くらいの時間が残されていた。残りの時間は誰にも邪魔されないところで二人でいたかったのだ、Rも同じ気持ちだったようで合意のもとに向かった。

公園について私たちはゆっくり話できるところを探した。公園とは言ってもお城跡のところに作った公園であるのでかなりの広さがあるのだ。そこで大きなお城の影の芝生のところに決めて座って話をしていた。私たちは普通のカップルのようにいろんなところに出かけることもあまりしない。それは今回のことで少しだけ改善されたものの…やはり基本的には静かなところで話しているのが一番落ち着くということらしい。二人ともインドアなので仕方ないと言えば仕方ないのだが、私はこの時間が結構好きだったりした。
いつものことながら別れる数時間前というのは淋しいもので…今回は特にそうだった。3日間という長い(あくまで私たちの中では)期間一緒にいることでもう随分と精神距離も実距離も縮まっていたように感じたからだ。夕焼けの空に蝉が鳴いている…その状況が余計に淋しさを増幅させていたのかもしれない。そこらをちょこちょこ歩いていたり石に落書きをしているRが異様に愛おしく思えて…こちらにとことこと歩いてきたRを後ろから抱き締めた。Rも淋しがっていたようだった、そのまま座り込んでずっと抱き締めていた。
Rにキスをした、いつものように受け入れてくれる。頬を撫でながら…唇をなぞりながら…私は出来る限りの方法でRに気持ちを伝えようとした。大好きだと言いながら、大切に想っているといいながら…。

Rからふと零れる涙が印象的だった、大丈夫だって言って涙を拭いてあげることしかできなかったが…それでも上出来だったような気がする。私だって離れたくなくて泣きそうだったが…涙もろいところは何年か前から封印しているし…ここで泣いてしまっては離れたくなくなってしまう可能性があるので敢えてRの心配を和らげてあげることに終始した。私だけは気丈にいこうと決めた。

気持ちがゆらゆらして今にも泣きそうだったが…時間になったので駅に向かうことに。駅までの道で横断歩道の信号にひっかかった。その時…私はRに貸す為に持ってきた本の袋に先ほど書いたラブレターをしのばせた。帰ってから気づいて欲しいと思って入れたのだ。
その後駅について…いよいよ別れることになった。人通りが多く何もしてあげられないような気がしたが…私は思い切ってRを抱き締めて軽くキスをした。Rはちょっとだけ笑っていたような気がした。そこで私たちは別れた。振り返ったら戻ってしまいそうで…振り返らないで一気に改札を抜けて行った。ちょっとだけ涙が出た。


帰りの電車…夕闇で辺りは薄暗くなっていたが…音楽を聴くことも、禁煙しながらも数本持っていたタバコを吸うこともなく放心しながら外を眺めていた。段々風景が変わっていくのが無性に悲しかった。
何も考えられずそのまま静岡に着いた。そこからの電車はなくなってしまってそれ以上は帰れなくなってしまったのだが…この3日間にあったことを反芻するには十分な期間であった。

ちょっとだけ昔の泣き虫の私が戻ってきてしまったような…そんな気がした。





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Last updated  Aug 11, 2006 03:02:53 PM
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