ごく個人的な好みの問題に過ぎませんが、バッハの教会音楽と、例えばフランスバロックの器楽曲とでは、私なりの選考基準が違うことに、最近、気がつきました。バッハの教会カンタータは、どうもやっぱり、カール・リヒターに落ち着きます。例えば、BWV232のロ短調ミサ曲。いくつか、演奏を聴き比べてみたところ、洗練、みやび、技術的完成度という点では、カール・リヒターや、聖トーマス教会の合唱団よりも、はるかに優れた演奏が沢山あり(Gloria in excelsis Deoをトーマス教会の少年達が歌いこなせているようには聞こえませんでしたが、古楽器で高い評価を得ている方々の演奏では、さすがに見事な歌いぶりに聞こえました)、高い評価を得ているようです。こうした風潮の中で、カール・リヒターや聖トーマス教会合唱団を好むのは、いわば、ダサイ趣味かもしれません。しかし、巷で好評を博している古楽器の洗練された技術的完成度の高い演奏には、精神的についてゆけないものを感じることもあります。無形の何かに強く惹きつけられます。