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"ciao-kyoro' homepage" May,2004~
りーたん誕生秘話(NICUに運ばれて)
<NICUにて…保育器に張り付いているのは私の手です>
私の出産は難産道強靭という理由で帝王切開だった。
私の母は、私の時と弟の時の二回に渡り、子宮口が硬いままでなかなか産まれず、
そのうちに胎児の心音に異常が生じたため、緊急帝王切開をしている。
担当の先生には「お母様と体質が似るので、もしかしたら帝王切開かもよ」と言われていた。
「じゃ、私も切るのかなぁ・・・」とうっすらは考えていたものの
「難産道強靭なので切りましょう」と宣告された時はショックだった。
自然分娩の感動に憧れを持っていたのに…。
それに実際身体に傷を負うということはかなり覚悟のいることで相当悩んだものだ。
でも、新しい命には替えられない…。
「先生わかりました。では帝王切開でお願いします」
1週間ほど悩んだ末に告げた。
34週くらいだったと思う。
そして相談の結果、普通の妊婦さんよりも早い37週に手術を行うことになった。
手術の日は母が決めた。おじいちゃまの月命日にしたいと強く希望していたためだ。
2003年4月21日
手術の日が確定したと同時に私のお腹の中の赤ちゃんの誕生日が決まった。
4月19日 入院
4月20日 21時から絶食
4月21日 10時手術室へ
生まれて初めて手術着を着て点滴を受けながらストレッチャーに乗せられ運ばれた。
これから赤ちゃんに会える!のにそんなおめでたいことなどまるで無関係かのような「純・手術を受ける人」状態であった。
なのに手術室にかかっているBGMはR&B系のゆっくりとしたバラード。
「そうだよなぁ、どっか治す手術じゃなくてこれから赤ちゃん産むんだもんね、リラックスしてねってことか」
とは思ったけれど、なんだか場違いな感じもした。
手術に立ち会う先生や看護士さんがひとしきり挨拶をして、手術は始まった。
腰のあたりに麻酔。
まずその痛さにびっくり!思わず腰が引けてしまう。
「そんなんじゃお母さんになれないわよ!我慢して!」そんな声が飛んできた。
足先からだんだん痺れていって胸のあたりまでじーんとポカポカしてくる。
頭がボーっとなって息が苦しくなっていく。
空気が薄く感じて呼吸がハァハァと浅くしかできなくて、本当に苦しい。気持ち悪すぎてどうにかなってしまいそうだった。
そうこうしているうちに水がゲボっという音を立てた。手術室の皆さんが口々に
「女の子ですよ!」
「おめでとうございます!」
と言ってくれている中、こんにちは赤ちゃんの歌が流れた。
でもなかなか赤ちゃんは近くに来てくれない。
ただホラー映画の怪物の声のような苦しいギャーギャーという泣き声しか聞こえてこない。
その時、何かがおかしい…と感覚的に察していたような気がする。
胎脂がついたままの赤ちゃんをやっと見れた時、彼女はとても苦しそうで目が助けて!と言っていた。
「なんでもうママのお腹から私を出しちゃったの??」そんな風に訴えているように見えた。
そのあとは記憶がない。
次にある記憶はもう病室で、いったい何時間経ったのか時間の感覚さえ分からなくなっていた。
今でもどのくらい意識がなかったのか思い出せない。
『私の赤ちゃんは肺に羊水が入って多呼吸となり、生まれて何時間もしないうちに救急車で都立の病院に運ばれてしまった』
とのこと。
旦那がひとりで付き添っていると言う。
また目の前が真っ暗になった。
結局生まれた我が子をこの胸に抱くこともなく、一生のうちで一番感動するはずだった一日が終わった。
4月21日午後 りーたん(胎名ぴよちゃん)緊急搬送の後NICUへ入る
担当医の先生からの状況説明によると、帝王切開の場合、赤ちゃんがびっくりして羊水を飲んでしまうことが多く、その状態にも
軽いものから重いものまである。
肺にまで羊水が入ってしまったりーたんの場合はどちらかと言えば重い方。
しかし幸い出産した週数が早かったため、羊水が濁っていなかったし肺が乾けば大丈夫…とのことであった。
NICUでのりーたんの様子は、仕事が明けると毎日娘に会いに行ってくれた旦那からの報告と
(彼は毎日、りーたんの入院している病院と私の病院、両方に顔を出してくれていた)
彼が逐一デジカメで撮っている保育器に入ったりーたんの写真、
それからNICUのスタッフの方が毎日書いて下さる育児ノートで知らされてきていた。
唯一彼女のぬくもりを感じることができる物は、
保育器に入り鼻にチューブを付けられた我が子の苦しそうな表情の写真…
それしかなかったが、麻酔が切れお腹の傷の痛みとの戦いが本格化していた私を勇気づけてくれた。
宝物だった。
4月22日 2903g (出生時は3078g)
口からミルクを飲むと呼吸の負担になるため、チューブでミルクをもらう。
保育器の酸素濃度は高め。
4月23日 2785g
胎便がまだ出ていなかったため浣腸。保育器の酸素濃度は高め。
私の両親も毎日NICUに見に行ってくれていたので、仕事が終わってから来てくれる旦那よりも早くりーたんの様子を聞くことができた。
「今日(23日)と明日(24日)が峠って言われた」
と泣きながら母が教えてくれた。
この日はじめて実は命が危ない…ということを悟った。
思い返すとこの二日間は言いようもない不安と最悪の憶測で胸が押し潰されそうだった。
そして私の状況をよく知らない看護婦さんの
「おっぱい調子どうですか?よく吸ってくれてます?」
の声かけでぷつんと何かが切れた。
堰を切ったかのように涙があふれる。
泣くまいと思っても止めることはできなった。
どのくらい泣いただろうか?限界まで泣いたところでふと気づいた。
「私がりーたんの回復を信じなくてどうするの?母親じゃない」
辛かったが一生懸命信じようと自分を勇気づけ二日間を過ごした。
例の写真にほほを寄せながら。
「私もがんばってるんだからママもがんばって!」と言われているような気がした。
担当の助産婦さんも気分転換のためにエッセンシャルオイルでフットバスをして下さったり、そんな私を励まし続けてくれた。
そして4月25日…
面会時間になって母が病室に駆け込んで来た。
「NICUを出てGCU(集中治療室よりも軽い治療室)に移れたって!!」
「え?どういうこと?」と分かっていない私。
「だからもう大丈夫なんだって!ぴよちゃん助かったんだって!」
その後、嬉しくて嬉しくて神様ありがとうを繰り返し、母と抱き合って号泣した。
生命力が強いのか、それからの回復は早かったようで、
4月26日 2646g
呼吸が落ち着いてきたため、酸素を少し減らして口からミルクを飲む。とても上手に飲めているとのこと。
4月27日 2691g
私に外出許可が下りたので、お腹の傷をいたわりながらりーたんに面会に行く。
保育器に入ったりーたんははだかんぼでチューブをいっぱい付けられていた。でも元気に身体をバタバタしていた。
「生きてくれてありがとう!がんばってくれてありがとう!」
保育器の穴から手を入れてちっちゃな手に触れた。
その時、ママって分かってくれたのかどうなのか私の指をギュっと握ってくれた。
なんか胸が熱くなって泣いてしまった。
4月28日
保育器を出てコット(ベッド)に移る。
旦那がだっことおむつ替えをする。緊張したけど嬉しかったとのこと。
4月29日
この日も面会に行く。
そして…
生まれてはじめて我が子を抱くことができた。
でも抱き方が分からなくてぎくしゃくな抱き方しかできない。
なんかくすぐったくて「え?私がだっことかしちゃっていいの?」などと自分の子供なのに思った。
りーたんは泣きもせずおとなしく抱かれている。
そしてミルクを飲ませた。
これから毎日こんなことができるんだ…。
はじめて母親になった幸せを実感して、やっと心から微笑むことができた。
<生まれてはじめてのミルク…>
4月30日 私のいる病院に転院
生まれてから10日ぶりに一緒の生活がはじまった。
10日遅れの授乳レッスン、沐浴指導、そして3時間おきの授乳室での授乳…。
急にバタバタと忙しくなって睡眠時間も少なくなり、やっと他のママ達と同じサイクルに。
昼間は同室してもいいので、コットで眠るりーたんをまじまじと見ることができる。
ぼーっと幸せな瞬間。
いろいろあったけど、一番がんばってくれたのはあなた。
ママはそのがんばりに恥ないように立派なママになるからね。
これからずーっとずーっとどうぞよろしく。
5月3日 退院
**********
生まれてすぐ搬送されるイレギュラーな出来事があって、旦那は一皮むけたように父親らしくなっていった。
仕事が忙しい中、りーたんと私の両方に毎日会いに来てくれて本当に感謝!
また、毎日来て励まして痺れた身体を一生懸命さすってくれた父と母にも改めて感謝を表したい。
私の病院の先生、助産婦さん、りーたんの病院の先生、スタッフの方々、お見舞いに来て下さったみんな、
皆様ありがとうございました!
きっといろんな方々の助けがなければ今はなかったに違いない。
そしてそして。
がんばって生きてくれた我が子のことをいつも忘れず、
「生まれてきてくれてありがとう!」
の気持ちをずーっと持ちつづけていかなくては…。
初心忘るべからず。
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