生後55日目の仔犬は本当に小さくて、はかなくて、手で持つと潰れそうな気がした。2匹の仔犬はそれぞれ首に赤いリボンと黄色いリボンをつけてもらっていた。黒檀のように真っ黒の艶のいい仔たちだった。
「おいで」と言うと、すぐに突進してきたのは、赤いリボンの仔だった。黄色いリボンの仔は、ゆっくりと少し距離をおきながら、私の方に近づき、右脇から寄ってきた。
1時間ほど2匹の様子を見ていたが、どちらにするか決めかねていた。
Y.Tさんによれば、両方とも800グラムあるとのことだったが、黄色いリボンの仔は、ふっくらとしてずっしり重かったのに比べ、赤いリボンの仔は、軽く感じた。この仔は、痩せていて、触るとあばら骨が手にあたった。耳も立たないかもしれないと言われた。トイレも黄色のリボンの仔は、初めての家でも、きちんと用意していたシートにできた。が、赤いリボンの仔は、失敗していた。しかも、うんちも便秘症のようで硬かった。
赤いリボンの仔は、4匹生まれた中で一番末っ子だそうだ。Y.Tさんに、ひとりでほっておいても大丈夫なタイプだと言われた。
どう見ても考えても黄色いリボンの仔の方が、ふっくらと健康そうに見えた。
仔犬の選び方によれば、当然黄色いリボンの仔をお迎えするのが、「正解」であっただろう。この日のために私は、「仔犬の選び方」なる本を何回も読んでいたのだ。正解は黄色だ!わかっていた・・・が、・・・
初めて出会った瞬間から、心では、決まっていたのに、私はまだ頭で選ぼうとしていた。
さらに時間が過ぎた・・・。
私の腕の中に赤いリボンの仔をのこして、Y.Tさんは去っていった。