Sunflower

Sunflower

涙




お母さん離れが出来なくて、いつも幼稚園で泣いてばかりいた。


「泣き虫のれーみちゃん」


みんなからはいつもそう呼ばれていた。


クラスにもなじめなくて、いつも泣いては園長先生のところに逃げ込んでいたあの頃。


あまりにも毎日泣くから親も頭をかかえるし、私も泣くことを責められてもどうしても涙が出ちゃうんだからどうにも出来ないし苦しかった。


今でも泣くときの気持ちやこみ上げてくる感じはしっかり覚えている。


泣きじゃくる息苦しさ、塩辛い涙の味。


そんなとき、お母さんが私にくれた古ぼけた木箱のオルゴール。


「涙のたまて箱」って名づけて私にくれた。


フタをあけると、赤いフェルト生地の小物入れになっていて、流れてくるのは「月光」


「涙はね、流しすぎちゃうと本当に泣きたいときに流れてこなくなるの。
だから涙が出そうになったときはこのオルゴールをあけて中に涙をためておくのよ。本当に涙が必要なときのためにね」


そう言ってお母さんはそっと頭をなでてくれた。


それからしばらくして、私は泣かなくなった。


幼稚園での友達も少しずつ出来た。


オルゴールの音も私には必要なくなった。


でもいつもそのオルゴールは私のそばにあった。




あれから17年。


人前でほとんど泣かなくなった私が人前で泣いたのは2回。


一回は小学校2年生のとき。


初めて出来た親友と呼べる友達が引っ越してしまったとき。


ずっと泣かないように我慢してたのに、いざ別れのときは本当にわんわん泣いてしまった。


でも泣いてる私の肩を抱いていてくれた先生、そしてその後も笑わせてくれようとしてくれた友達。その嬉しさ、温かさにまた涙したっけ。


2回目は小学校6年生のとき。


ある子が私の悪口を言ってたのを聞いて、トイレでわんわん泣いた。


でも一緒にいてくれた友達が「私は味方だよ!」と肩をぎゅっとにぎりしめてくれていた。


中高は泣いたのは結構あったけど、常に人気のないところで泣いてたなぁ。


トイレや誰も来そうにない校舎裏の庭で。


どれも私の一人になれるお気に入りの場所だった。


そして、昨日、大学4年生になった私は友達の前で大声で泣いた。


人前3回目。


でも今までとは違う涙。


昨日は本当に自分のプライドや殻を破って本当の自分を見せた涙。


たぶん、一番の信頼をおけているその子の前だから流せた涙。


泣くつもりなんてこれっぽっちもなかったのに。


言いたくて、でも誰にも言えなくて。


自分の嫌な部分が悶々と殻の中で大きくなっていて。


私は今まで自分のそういう部分を人前で見せたことはあまりない。


強がりだから。見栄っ張りだから。


自分の非の部分を認めたくない自分がいたから。


でももう今回はどうしようもなかった。


大抵のことの相談や悩みはその子といつも語り合っていた。


本当に大事な大切な友達。


でも、自分の醜い部分はたとえその子にも知られたくなかったし見せたくなかった。


その子にとって幸せな出来事、私は祝福してあげるべきことが出来ない、なんて。辛い、寂しいなんて。


とても言えなかった。


離れていっちゃう気がして。


でも昨日、全部吐き出してしまった。


全て。嫌な部分や闇の部分も。


ふいに堰切ったように溢れ出した涙を止めることが出来ず、嗚咽交じりに泣いた。


その子はずっと抱きしめてくれていて頭をなでてくれながら黙って聞いていてくれた。


私の次から次に出てくるあらゆることも全部聴いてくれた。


醜い自分をさらけ出したらどうなるんだろうって考えたことがあった。


離れてく?嫌がられる?見放される?


自分がどう思われているか、どう評価されてるのかがすごく怖くて。


でも、その子の腕の中はとても温かかったの。


人間のぬくもりを感じたの。


嫌な自分を全てさらけ出した後も、その子の抱きしめていてくれる腕はゆるむことなかったの。


こんな自分でも認めてくれるの?


こんな私でも受け入れてくれるの?


醜いものを吐き出したその後に、心の奥深いところからすごく温かいものがあふれてくるのを感じたんだ。


それは何事にも言い換えられない安堵感、安心感。


今まで色んな涙を流してきたけれど、こんな涙を流したことなかった。


涙の宝箱。


今なら意味が分かる。


涙を流すことで、人間としての壁を一つ一つ破られていく。


心の殻もまた取り払われていく。


そして泣いた後って絶対ふと笑っちゃうんだよね。


涙って笑顔への一番の近道なのかもしれないね。


昨日の夜、私は久しぶりにすごく幸せな気持ちで床につくことができたの。


またこれで前を向いてすすんで行ける。


あのオルゴールの木箱、久しぶりに開けてみようかな。

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: