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桜井淑敏氏の講演を聞くのはうれしい。なんといっても個人的には、シティ・ターボシビックSIプレリュード…など当時、桜井氏が開発を手がけた車を一通り乗っていたくらいだから。どれも大変ユニークで魅力的な車だった。そうした市販車の開発を監修しつつ、F1チームの総監督までこなしていたんだから文字通りスーパービジネスマンだったと言っても過言ではない。しかも、その両方で記録を打ち立てたのだから頭の中を開けて覗いてみたい気がする。「セナとシューマッハはどちらが速いのか?」の質問に対する答えも「なるほどなぁ」とタメ息が出た。思うに、理系的なロジカルな思考と、文化芸術をこよなく愛する姿勢が見事にブレンドされた方だなぁと。セナと出会って、彼をホンダに乗せるために2チームにエンジンを供給することを選択する。そのためには予算の増額を獲得しなければならない。そこで全線テレビ中継の構想を掲げ、交渉に入る。テレビ局がつきやすくするために日本人ドライバー中島悟の起用を考える。それを天才セナに飲ませる。…などなど、F1の総監督って、エンジンなんかの開発指揮官的にしか思っていなかったので、その業務量と奥行きに驚いた。セナのエピソードでは、「センシング能力が高い」といこと。マシンがどんな挙動でどんな状態にあるのか?を瞬時に察する力が高い、と。そして、それをメカニックに的確に伝える力もあったらしい。当時エンジンの回転計のメモリは200回転ずつメモリがついていた。セナはそれを「50回転単位に変更して欲しい」と要求してきた。そんなに小さな単位でコントロールできないし意味が無いと思いつつ、セナの能力を試してみると、見事に「このコナーでは12550回転だった」と、言い当ててしまう。するとこちらも応えなければならなくなる。セナとの技術開発は楽しかった、と。こちらが改良するとすぐにそれに気がついてくれる。そして、その分、必ず速くなる。そういう関係が築けたことが素晴らしかった、と。氏の言葉で印象的なのは「初めての時が最大のチャンス!」ということ。初めて取り組む時に手を抜いたらそこでもう勝負あったである、と。それと本田宗一郎氏については、次から次へと変わるF1の規定について、ホンダバッシングがまさに最高潮に達した時についにターボエンジンの廃止が決まった。ホンダが勝つとすぐに規定が変わることにもう嫌気がさしてきた。ここまで来るともうF1から撤退するしかないと本田宗一郎氏に相談に行くと…、「なるほど。で、その規定はホンダだけに適用になるのか?」と本田氏。いくらなんでもそんなルールはなく、全てのチームが対象に決まっている。それを伝えると、「なんだ、あいつらはバカだなぁ。それじゃあ意味がないじゃないか。また、うちが勝つに決まっている。同じ土俵なら絶対に負けやしない。皆、同じ規制なら意味が無いじゃないか。ところで、相談ってなんだ?」「いいや、別に…。もういいです…」と部屋を出たらしい(笑)。なんとも凄まじくシンプルなスリピットが流れていたんですね。こういう時代だからこそ、以前よりもジーンと心に染み渡るお話しでした。
2005/05/01
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先日、ある有名企業のプロジェクトの打合せに呼ばれました。合計で3社の専門会社が呼ばれました。(私たちもその中の1社でした)その日時を決めるのに、参加者全員の都合を合わせるのに手間取りましたが、何とか時間を合わせて集まれることになりました。会議室に到着してそれぞれが自己紹介&名刺交換をして主催者3人を待ってました。(部長、マネージャー、リーダーの3人)遅れること15分。3人が入室してきました。主催の中心であるマネージャーが遅れを詫びると同時に、「申し訳ないですが、今日は色々とバタバタと忙しくて私と部長は15:00までしか参加できません。そのあとはリーダーとやってください。よろしく、、、」と切り出しました。「えーということで、まずはメールでお伝えし通り、このテーマについての提案をお願いします。時間もないので早くやりましょう」と続きました。すると、参加していた専門業者のI社長が「君たちは自分が勝手過ぎるという自覚はないのか?」と立ち上がりました。「至急とかどうしても来て欲しいというから、私たちはこうして集まったんだ。それを遅れて来て、自分たちは忙しいから時間がない。あとは部下とやってくれだと?よくそんな寝ぼけたことが言えるな。何様なんだ?これは会社としての公式な会議じゃないのか?それになぜ途中で退席するんだ?その原因がバタバタじゃわからん。最初から日時の設定を間違えたということなのか?それに上司の部長、あんたはなぜ何も言わないんだ?あなたの部下のマネージャーのこの態度は明らかにフェアじゃない。叱らなくていいのか?大きな赤字を出して社内が大変なのはわかるが、その原因はこんな小さな所にもあるということに気づいた方がいい。だいたいこんな状態で進めても良い案なんか生まれるはずがないし私の案を出すのもごめんだ。時間を10分間差し上げる。私たちは一旦退室するからこの会議をどのように続けるのか?辞めるのか?あなたたちで話し合ったらいい」と言って、さっさと退室してしまいました(汗)。もちろん私たちも後に続いて退室しました。多分、大手有名企業の驕りがあったのだと思います。冷静に考えれば新入社員にもわかるような、こういう失礼な態度にも気づけないほど社風は錆びていたのです。10分後に会議室のドアが開いて、入室すると、「予定していた16:00まで全員が会議に参加するので許して欲しい」と部長より謝罪がありました。10分間の時間を使って、次に入れてしまった会議をキャンセルしたようでした。するとI社長は「確かに今までも御社とは何度か一緒に仕事をした。だから私は業者の立場なのかもしれないが、それは仕事を受注してからで今は違う。これ企画をどう仕事にするか?という案出しにお付き合いしているのだ。お互いが歩み寄る段階のはずだ。仮に受注して仕事が始まってもお互いに社会人として当たり前のことを守ってやりたい。そこに発注者と業者の区分はないはずだ。お互いに正々堂々と仕事をするようにしたい。それがOKなら私はこのまま参加したい。いかがか?」と発言しました。もちろん全員が賛同してようやく会議が始まりました。このようなことは実はどんな企業でも陥る過ちですが、傾向としては大企業になればなるほど、その頻度が高いと思います。(身分の勘違い)社内の組織ピラミッドが高くなる分、こうした勘違いが起きやすいのは事実です。それにしても個人的には、久しぶりに素晴らしい大人に出会ったような気がしました。どんな企業でも自分たちの態度のことはわからないものです。誰かに指摘してもらって初めて気づくことは多いけど、実際には「正しく指摘してくれる勇気のある人は少ない」のです。このところ赤字が続く多くの企業の原因は何なのか?EUの問題から、少子高齢化など結びつけようと思えば山ほどの理由はあるけど、こうした「正しいことが言えない社風」も大きな原因の一つなんだと思います。(どっちの原因が先なのか?それを解明した人はいないが)「正しいことが言える社風」というと「風通しが良くて…」というように快適な感じがしますが、現実には社員全員が自分の行動や発言に対して責任を取らなければなりません。意見しても聞いてもらえるだけの実績も必要だし、勤務態度も求められます。(毎日遅刻してくるようなやつの話は聞かないでしょう)そういう責任を取らない人が増えてくると「正しいことが言えない社風」ができあがります。せっかく毎日働くなら、自分の行動と発言に責任を持っていつも堂々と正しいことを発言できるようにいたいものです。===このI社長は、私たちの身近な人に置き換えれば、「伝説のトレーナー:ミッキーマウスに頼らない本物の指導力」の町丸さんでしょうか。
2012/08/09
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先日も、30代の知人(女性)から、何か良い仕事がないか?紹介して欲しいという依頼の連絡がありました。今は、就職難だから、本当に良い仕事がない、とのこと。しかし、企業側は、仕事ができる人、もっと言えば売上げを上げられる人なら、いくらでも欲しい。経済状況が厳しいから、まぁまぁの人を採用する余力がない、というのが正直なところでしょう。サービス業の現場出身者には、本当に接客のうまい人も多くいます。しかし、それでも30代になって仕事に困る人たちには特徴があります。「お客様の笑顔が大好きです」「接客が私に向いている」とばかりに、現場の接客だけしかやってないのです。(ラクしちゃったわけです)飲食店でも衣料品店でもいわゆるお店や商業施設系の仕事をやってれば、20代半ばや後半にかけて、店長にならないか?と勧められたり、会社側は、少しずつ管理職に導こうとするけど、本人が「私は現場好きなんです」とかで、なかなかエントリーしない、という現状があります。私たちの業界では「接客バカ」「現場バカ」と言います。(町丸さんのお言葉です:笑)3年以上続いているなら、たいていの人は接客が好きで、現場が好きなのです。ただ、それで30代を迎えて「もっと給与をください」と言われても、出せない会社が多いのが現実です。店長になると、給与も高くなるけど、肝心の接客時間も減るし、スタッフに注意もしなければならないから、かつてのような仲間モードで働くことはできなくなります。シフトの管理もするので、遅刻や欠勤に警告を出さなくてはならないし、毎日、本部や幹部からの売上げ報告、予測を求められます。そして、それは全部やっておくいた方がいいことばかりなのです。そういうのが嫌で逃げちゃった人が高待遇を求めるには、相当苦労します。3年くらい現場をやったら、リーダーや副店長などやって、本部の営業などもやる方がいいに決まってます。お客さんを集めるのがどれほど大変なのか?名刺を持って一から営業してみるとわかります。それがわかると、現場の接客も変わります。マナーとか接客スキルのレベルではなく、本当のマインドが注入されて遥かにレベルアップします。人事部を経験すれば、良い人材の採用がいかに大変かわかるので、その後、現場での指導が格段に向上します。(人事部だけの経験者はダメだけど)サービス業でもそういうクロスした経験が必要です。そうでないと30代に稼ぐことができないからです。利益をあげられなければ、高待遇を用意することは不可能だからです。どんなにマナーが良くて笑顔で、商品の知識があっても、全て個人技の世界だけのノウハウでは限界があるのです。店長などの管理経験もある人は、マニュアルを作れます。また、売上げを作る事ができます。これが大きな違いです。経験にまとまりがある。ただ現場で数年間働いていた人には、好き、得意、ということばの連発で、マニュアルも作らないし、マニュアルは意味がない、とか言い出します(笑)。こうなると、経験と勘が大好きになってしまっているので、新人スタッフの教育には向かないです。サービス業でスタートして今年で26年目ですが、周りを見渡せば、多少プレッシャーを感じながらも、素直に次のステップにトライしていった人たちは、皆(男性も女性も)、管理職で活躍しています。(独立しても管理営業経験は活きている)これからサービス業の仕事に就く人には、ぜひ自分で進んでこうしたキャリアプランを立てて実践してもらいたいと思います。そうすれば、多少不況であっても、職場には困らないはずです。
2009/09/29
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