雨の日は音楽を

雨の日は音楽を

2022年01月17日
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カテゴリ: 歌曲
​ ​​ 前回の 10 「Rast 小休止」で、ついついお休みしてしまいました。また書き始めました。 ​​

 若者はどうやら無人の小屋にたどり着いて、寒さを凌いでいる。しかし、第2連で鶏の声で目覚めているので、人家の近くなのであろうか。鶏は野生の種類は無いから人家が近いこと、無人の小屋で火の気が無いため窓ガラスに氷の華が木の葉のように見えていることから、どうやら農家の納屋にでももぐりこんだのだろうか。藁にもぐりこんで寝ていて、見た夢のことを綴っているのだろう。

 第1連と4連が夢の中の、楽しく美しく(詩の中には書いてイないが当然のことだが暖かい)思い出が花開いて、間奏が美しい春のイメージを想起させている。楽しい気持ちがあふれるように歌いたいものだ。楽譜の "Etwas bewegt" 「少しはずんで」は、若者の心が夢で動かされていることを暗示しているのであろう。

 シューベルトの巧みさは、第2連と第5連では、寒々として小屋で目が覚めるという、厳しい現実を突きつけられた若者の絶望と第1連と第4連の夢の世界とをメロディーの対比によって描写している点である。指示も "Schnell." 早く、となっていて且つメゾフォルテの2小節、すぐにフォルテのピアノが心臓がドッキンとするように鳴ると、第2連は「目が覚め」第5連は「心が覚醒」をピアノで歌うのだが、ここは少し遅目に歌い、「Auge 目」「Herze 心」を強調したい。音符も付点8分音符と16分音符で母音を少し延ばせるのだから。

 ここで"Langsam" ゆっくりと指示される第3連と第6連に注目しよう。優しく響く伴奏は、若者の心臓の鼓動を表しているようだ。第3連では夢とは対照的に冬そのものの凍りついた窓ガラスの氷の華の木の葉を若者は見つめる。氷の木の葉は「冬の最中に花々の夢を見る者を笑っているようだ」と自嘲する。目が覚めてからの若者は、やっと自分の置かれている状況に気づき始める。花の夢なんぞ見ている場合では無い。所持金も少なく、宿泊に金は掛けられず、食べ物を買うのがやっとで、この先どうなるのか.....

 第6連では、起き上がった若者は再び目を閉じて、自分の心臓の鼓動を聴く。虚しく氷の木の葉に問いかけるのだが、答えは自明なのも若者はすでに理解している。氷の木の葉が緑色に成ることはあり得ないし、二度とあの女を胸に抱くことも無い。

 全部で6連から成るこの「春を夢見て」は、"Etwas bewegt" "Schnell." "Langsam" "Etwas bewegt" "Schnell." "Langsam" と繰り返している有節形式の曲であるが、後半になると、若者は漠然と自分の「死」を予感し始めるのである。曲中に鶏と鴉が出てくるが、鶏が鳴いて目覚める幸せを、鴉が二度打ち砕く形となっている。この後、第15曲目で正に「鴉」が出てくる伏線として、ここで鴉は幸せな目覚めとまどろみを打ち砕いている。でもこの11曲目では、若者はまだ目覚めの短い幸福を味わえるのだ。

------------------------------以下オマケ----------------------------
 「冬の旅」を聴く人は、ちらっとであるが、若者はどこをどうやって歩いているのかと気になるものである。

 まず第1曲目で親方の家から抜け出し、第2曲目で少し歩いて振り返る。第3曲目で滂沱の涙を流し、第4曲目で女との思い出のつまった雪の野原を思い出す。第5曲目で街の門近くの菩提樹を通り過ぎて、何時間も歩き続ける。第6曲の歌詞で、出発点から川に突き当たり、上流方向に歩いていることがわかる。もっとも出発点も川の名も不明なのだから、相対的な位置しか分からない。涙が川に流れ込んであの女の住む街の通りの下を通るとあるので、上流にいるのであろう。

 第7曲目では暖かい季節に来たことがある小川に出て、今は凍りついた川の水を思い嘆いている。しかし第8曲目では、かなり遠くだが、逃げてきた街の尖塔が見えているので、足の裏が熱くなるような歩き方で、小川を越えたあたりから急ぐ。ということは、かなり高度が上がってきているのだろうか。

 第9曲目は、深い谷の上に出てしまい、少しオカルトじみて来るが、下の方に鬼火が導いているように見える。もうどこを歩いているのかもわからなくなっているので、第10曲目で小屋を見つけてやすむことができた。この小屋って炭焼き小屋となっているので、こんな雪の降る季節は無人なのだろうか。でも小屋の中で火を起こしていないのか、第11曲目でまどの霜(氷の木の葉)が溶けていないのはなぜ?などと、シューベルトの曲から離れていってしまうから、ここまでにして、後は----->続く

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Last updated  2022年01月17日 23時02分23秒
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