青空のように

青空のように

ミスティック・リバー


「ミスティック・リバー」(03.クリント・イーストウッド制作、監督、音楽!)は、近年まれにみる傑作であった。

3人の少年が遊んでいると、2人の男が現れ(非常に不気味)、警官だとだまして少年のひとりを車に乗せる。この少年が選ばれたのは、家が離れているという「偶然」のためだ。
少年は監禁され、性的暴行を受ける。

3人は大人になり、今はもう挨拶を交わす程度の付き合いである。
この3人が、殺人事件の容疑者(ティム・ロビンス)、刑事(ケヴィン・ベーコン)、被害者(19歳の少女)の父(ショーン・ペン)として、関わりを持たざるを得なくなる。ゾクゾクする発端ではないか。

なにより、主演の3人が素晴らしい。
僕は若い頃、ショーン・ペン、ケヴィン・ベーコンがキライであった。僕にとってショーンは、「いろいろ問題を起す、マドンナの最初のダンナ」であり、ケヴィンは「あまりセンスのよくないフット・ルースで有名になった人」というだけだった。
しかしここでのショーン・ペンは、「暴力の世界からやってきた人・キッカケがあれば再び暴力の世界に帰っていく人」を演じて、圧巻である。そういう匂いを持った父親が娘に注ぐ愛情の深さも、しみじみと感じさせてくれる。いつからこんな渋い役者になったんだ!僕が知らなかっただけか。オスカー受賞当然。

ティム・ロビンスの「ザ・プレイヤー」(92 ロバート・アルトマン)を観た時、このオーソン・ウェルズ似の大男は、いつか天下をとるに違いないと思った。
しかし、その後の活動を見ると、この童顔の才人(監督作あり)は、自分の才能を持て余したまま、中年を迎えてしまったようだった。
だが、「幼い日性的暴力を受け、中年になった今もその傷と記憶から逃れられず、綱渡りの毎日を生きる男」をかなりふけた顔で演じるティム・ロビンスは、俳優として初めて真価を見せてくれる。オスカー受賞当然。

映画は悲痛な結末を迎えるが、この物語を締めくくるのはケヴィン・ベーコンである。
3人とも家庭にトラブルを抱えているのだが、なかでも「電話はかけてくるが、一言も喋らない別居中の妻」と、それをやさしく受け止めているケヴィンの関係が、この映画世界を一層深くしている。
ケヴィン・ベーコンは終始受けの芝居だがとても良い。ファンになりました。
ラスト、夫のやさしい言葉に、ついに妻が口を開くシーンは感動的だ。


こういうのを、映画的興奮というのだと、僕は思う。
クリント・イーストウッドのファンでよかったなとあらためて思いました。

この映画がアカデミー賞の何部門を受賞したのかネットで調べてたら、多くのブログで感想が書いてあった。
「重くて暗い」という感想が多かったが、だってこれは「悲劇」なんだもん。
「偶然」がいかに大きく人生を(悪い方に)変えていくか(ショーンとケヴィンが、何度も「誘拐されたのがアイツではなく、俺やおまえだったらどうなっていたか」と議論する)。
汚い大人たちによってつけられた傷が、いかに深く長く被害者の心に留まるものなのかを語る映画なのだ。そりゃ、重くて暗いわ。

「ミリオンダラー・ベイビー」は、尊厳死を扱った映画らしい。重くて暗いはずだ。これは、映画館に観に行きます。




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