マックの文弊録

マックの文弊録

2005.05.08
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◇旧暦四月一日(朔) 壬辰(みずのえ たつ) 世界赤十字デー 東京下谷神社祭

今日から旧暦の四月に入った。卯の花のにおう卯月になったのだ。
長大な連休の最終日は、予報が「高気圧に覆われ晴れ」であったにもかかわらず、僕の住む辺りでは陰鬱な雲が立ちこめ、肌寒い一日になった。

今年、この日は旧暦四月の最初の日であるだけではなく大連休最後の日で、母の日で、そして知人の誕生日でもある。肌寒い曇天下でもなにやら晴れがましい気持ちにすらなる。でも旧暦ではエイプリルフールの習慣はないから、お得意の冗談をカマわけにも行かず、その点は大いにつまらない。

この頃、卯の花ではないが、クスノキに花が咲いている。
御茶ノ水駅から会社に向かう、並木の美しい小径を下った先の右手に、小さなお稲荷さんがある。都会ならではの区画整理の所為なんだろう、今は境内も狭く交差点の端に押し込められたように小さなお社だ。
クスノキはこの交差点に向かい合うように二本生えている。さして大きな木ではないから、由緒云々は分からないけれど、それでもかつて、このお稲荷さんのご神木であったろう事くらいは容易に想像できる。

クスノキは常緑樹だ。春になると、明るい緑色の若葉がわらわらと出てきて、越年の濃緑の葉群れの縁辺を華やがせる。そうして、若葉が出揃うと、古い葉は潔く落ちてしまうのだそうだ。それは知らなかった。

小学校三年の年末に転向した先の、岐阜市立加納小学校は、旧徳川親藩奥平藩配領の加納城の二の丸跡を利用して建てられた学校で、校庭の北の端には公孫樹の植えられた鬼門があり、これを僕らは「思い出の森」と呼んで、親しんでいた。


この誇り高い放送室から校庭に出るとすぐのところに、濃密な緑の闇をたたえていたのがクスノキなのだ。

また、昭和31年頃の所沢周辺を舞台にした「トトロ」では、さつきとメイが引っ越してきた家の隣の神社に大きく聳え立ち、メイちゃんが初めてトトロに出会った場所でもある大木は、やはりクスノキであった。

だから僕はクスノキが好きだ。
地べからスッと立ち上がった黒っぽい幹の地肌には、律儀に縦長の亀甲紋を刻み、照葉樹独特の鬱蒼とした濃緑の葉の作る木の下闇は、そこに隠れていれば本当にトトロやコロボックルなどに会えるだけでなく、放送局長という晴れがましい地位に頬を紅潮させた昔の僕自身にも会えそうな気がしてくる。

クスノキは楠と書くけれど、「楠」という字が指すのは実はタブの木である。本来は「樟」の字を充てるのが正しい。「樟」は、樟脳の「樟」だ。
クスノキは、フィトンチッドというテレピン油系の分泌物(モノテルペン系ケトン基)を空気中に放散することが盛んで、葉っぱや木の皮を剥いで鼻先に持ってくると、樟脳の匂いがする。
つまりはクスノキには殺虫成分を空気中に放散する性質があり、だから神聖たるべき神社にも植えられ、トトロも害虫に悩まされることもなく住んでいられるのだろう。昔は虫がつかないというので、箪笥を作る際の用材としても珍重されたようだ。

そのクスノキは、丁度今頃、花を咲かせる。下の写真の通り地味な花だ。大きさは直径五ミリ程度に過ぎないが、しっかり正六角形を作っている。良く見ないと分からないから、余計に良く見ると楽しいのだ。

この花はやがて秋になると黒い丸い実を実らせる。





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最終更新日  2005.05.08 23:51:57
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