マックの文弊録

マックの文弊録

2005.06.27
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カテゴリ: 小言こうべえ
◇旧暦五月二十一日:壬午(みずのえ うま)

今ここに積載量過多で後暫くで確実に沈んでしまう船が、よたよたと航海している。
見ていると今にも沈みそうな船である。

船長とクルーの一団は、何とか手遅れになる前に手を打とうと考えている。

船には、乗船する時に手荷物や預けた荷物の明細のチェックを受けた人たちの他に、自己申告だけで済ませた人達も乗っている。
他は、上記の乗客たちの同伴者、それに元々荷物など持っていない人たちも乗っている。この人たちは船賃も払っていない。

船を軽くするには、積んでいるものを捨てるより他はない。
荷物を積み込んだ人たちはそれなりの立場にあり、力もある人たちである。何より船賃を払って乗っている。
だから、荷物も持たずタダで乗船した「お気楽な人たち」に降りてもらえばいいのだが、生憎近くに港はないし、まさかこの人たちを船から捨てる事も出来ない。


先々代の船長の時にも乗船客全員に一律の割合で荷物を捨てさせたことがあった。ところがこの時船は沈没よりも進路を誤って座礁する危機に陥った。その後遺症は長く尾を引いて、今でも全員の痛みとして残っている。

そこで船長は一計を巡らし、荷物明細を把握している一団に向かって、
「乗船客の中で、ちゃんと真摯に船賃を払い、荷物の明細まで知らせてくれているのはあなた方です。本当に信頼できるし感謝しています。この船を救えるのはあなた方だけです。ここは一つ、船全体の事を考えて協力してください。ついては。これこれこれだけの荷物を捨ててくれませんか?」
と頼み込んだのである。

この一団は過去からずっと、同じような目に会いながら「協力」させられてきている。だから馴れているといえば馴れているのだが、今回は捨てろと言われた荷物の量が余りに多い。
「何故自己申告だけで済ませている連中は、同じように捨てろとは云われないのか?」「何故いつも我々なのか?」
「船のため船のためと言うけれど、どうして船長やクルーは予め分かっていたはずの危機にもっと早く対処してこなかったのか?」
などなど、批判や不満が募り、反対の声はいよいよ高くなるばかりである。

そういう不穏な動きを一通り見極めた上で船長はやおら、「それでは、やはり乗船客全員が一律に荷物を捨てることにましょう。それなら公平だから皆さんも異論はないでしょう。但し、今回はこれだけの量を捨ててもらいます。」と宣言したのである。

しかし、予め過酷な要求を突きつけられていた「明細把握され済みの一団」には最早反対の声も小さく、結局これは船長の思い通りに実行されたのである。

ところで、後で分かった事だが、船長とそのクルーたちは、全体量では大した事がないものの、一人あたりにすれば断突に沢山の荷物を積んでいたのだ。そして、彼らの荷物は、色々な口実を設けては捨てられる事を免れたのである。







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最終更新日  2005.06.28 15:16:36
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