マックの文弊録

マックの文弊録

2005.07.07
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◇木曜日:旧暦六月二日 壬辰(みずのえ たつ) 小暑、七夕

今日は二十四気の「小暑」。いよいよこれから夏の暑さも本格化してくる。

夏といえば思い出すのはセミの声だ。
僕の郷里では、初夏の頃にはニィニィゼミという小ぶりの蝉が出てきて、盛夏になると、方々で五月蝿いほどにアブラゼミが鳴いていた。
少し山の方に行くと、ミンミンゼミやクマゼミ、つくつく法師なども混じって鳴く。

アブラゼミは人家の近くまで飛んでくるし、他の蝉と較べて少しのろまでもあるようだ。だから、僕は素手で捕まえるのが得意だ。
鳴いている蝉の背後、斜め後ろからそぉっと掌を近づけていく。蝉の複眼の死角を狙うわけだ。気付かれさえしなければ難なく捕まえる事が出来る。

学生の頃、思い立って友人を訪ねて京都に行った時、御所の外苑の林で、このやり方で佃煮になるほどのアブラゼミを捕まえて呆れられた記憶がある。

日本の蝉は、卵から成虫になるまでは約七年間を要するといわれている。

蝉は、成虫になると二週間ほどの命だから、彼らの「人生」は地中にあるといって良い。
地上に出てくるのは、繁殖のためだから、種の存続のためには重要なのだが、蝉を捕食する虫や鳥、そして僕のような天敵がいるから、蝉にとっては危険極まりない二週間となる。

何故十七年とか十三年なのか。
17も13も「素数」である。
素数とは「1と自分自身以外の数では割り切れない自然数(正の整数)」である。因みにアブラゼミの七年も素数である。

捕食者の世代サイクルは概ね二年~三年である。だから、こういう天敵の捕食能力のピークは、2或は3の倍数になる。ところが、17も13も素数だから、運悪くある時大量の天敵に食われてしまっても、次に同様の危険にさらされるのは十七年ゼミの場合は34年後か51年後のことである。十三年ゼミの場合は、26年後か39年後のことだ。その間には天敵を畏れる必要の無いサイクルが最低でも一回はあるから、種の保存は保証される事になる。

不思議なのは、何故蝉が「素数」などというものを知っていて、一斉に大量発生するかということだ。

恐らくは最初の頃は蝉の「各個人」はバラバラで、適当に地上に出てきては捕食者に食われていたのだろう。
その内に捕食者のサイクルと外れた蝉が多く子孫を残すようになってきた。それに連れて
蝉の体内時計も素数に同期するようになってきた。

1の次の素数は3だから、先ず三年ゼミ。でもこれでは捕食者とほぼ同じサイクルになってしまうから効果が無い。



アメリカの蝉はそうは行かない。我が強いし、キリスト教という元来が復讐を旨とする宗教の帰依者だから、次の素数11を目指した。

そして、11にも飽き足らず、13と17という素数に落ち着いた。「ここまでくればザマァミロ」ということなんだろう。
それに、卵から成虫までの期間が余り長くなりすぎると、地上の環境自体が変化しすぎてしまい、天敵よりももっと恐ろしい絶滅の危険も生じる。

こうやって、元来バラバラだった行動が次第に同期していくことを、自己組織化といって、生物界では当たり前の事なのだ。何も神の意志が働いているわけでも何でもない。

自己組織化や同期には、他にも様々な例があり、実はこれを解き明かす事が人間の社会行動に潜む謎を解き明かす役にも立ちそうだと考えられるようになってきた。


余談だけど、オーケストラの演奏が終わると拍手が巻き起こるが、アメリカのコンサートホールでは、いつまでも拍手はバラバラのままで、一定の減衰率で音量が落ちていくのだそうだ。
ところが、東欧のコンサートホールだと、バラバラの拍手は段々同期していって、最後はコンサートホール全体に響き渡る、歩調の取れた手拍子になるのだという。
これも自己組織化の一例なのだが、何故東欧では?と考えると中々含蓄がある。お隣の大国ではどうなのかは興味をそそられる話だ。

アメリカの十七年ゼミは昨年が大発生の年であった。





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最終更新日  2005.07.07 17:16:39
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