マックの文弊録

マックの文弊録

2005.07.12
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カテゴリ: 小言こうべえ


福島では今日は田植え祭りだという。東北ではこんなに遅くに田植えをするのだろうか?

さてさて、「夢見るぺちゃ」さんは、「ありがとう」の衰退を嘆いておられる。
又、「釈迦楽教授」は、目の前でドアを閉めて平気な学生のマナーの無さに憤慨していらっしゃる。

ご尤も。
僕自身も最近車同士の小さな事故に行き会って、同様の思いをした。
細い道で対向車とすれ違うために、少し広くなった場所で隅へ車を寄せた。対向車の後にはもう一台の車が続いているので、これもやり過ごさなければいけない。
対向車は所謂SUVで、結構な車幅がある。この車が、すれ違いざま待っていた車のお尻に自分のお尻をぶつけた。
明らかに自分の車幅を見誤ってのハンドル操作ミスだ。

SUVから降り立ったのは、いかにも育ちの良さそうな”オジョータマ”である。しかしこのオジョータマは、いきなり「警察を呼びましょう」と甲高くもか細い声でおっしゃる。

待っていた方の車は良い迷惑だ。どうも急いでどこかへ行く用事がお有りの様子で、自分の車のお尻を眺めて、それがちょっとした補修で治ると思ったのだろう。「一応免許証と名前だけ控えさせてください。」そうおっしゃる。つまり、当然のことながら彼は被害者だと思ってのことなのだ。

件のオジョウタマは、「警察を呼びましょう」の後は、「お父さまに電話をします」と、携帯電話で何やら話している。
要するに、彼女には状況が分かっていない。明らかに自分の運転ミスなのに、そういう意識が無いものだから、単純に警察に頼ろうとする。挙句にお父様だ。

自分が何をしたのかを分からないのは愚かである。しかも当事者としての責任などはなっから意識になく、警察だお父様だと他に権威を求めて憚らないのは、自分を無垢なバカだと喧伝するのと同じで言語道断だ。
何より、事故を貰ってしまった形の運転者は、オジョータマのこういった発言によって、段々本来の被害者としての地位を剥奪されて行った訳で、お気の毒であった。

周囲でやむなく事の成り行きを見守らざるを得なかった我々が、このオジョータマの態度を不愉快に感じたのは何故か。
それは「済みません」の一言が金輪際無かった所為なのだ。
相手に対しても、狭い道ゆえに決着が着くまでの間、付きあわされて待っていなくてはならなかった我々にも、「済みません」の一言さえあれば、その場の気分は随分違ったものになっていただろう。

こういう「小さな気配り」は英語ではCheap Moralという。
「ありがとう」は、Thank you. Thanks. Appreciated.だ。

Excuse me.というのは誰でも知っているだろうが、これは文字通り「吾を大目に見よ」で、日本語では「失礼」だ。軽く云うにはSorryで、イギリスの街中では「ソリー」「ソリー」とのべつ耳にすることが出来る。もうちょっと気取って云うと、Pardon me.となるが、これを白人特有の朗々たるバリトンで頭の上方から言われると、謝られたはずのこちらが何だか情けなくなってしまう程だ。

それでも、Cheap Moralと云うとおり、さほどの心が篭っているわけではない。要するに、「吾は汝の敵ならず」という姿勢を相手に示す符牒の様なものだ。

元来言葉と言うものは、先ずはお互い殺し合いに及ばなくても良い無害な存在なのだという意思表明をするところに生じる。それが本来なのだ。

人里離れた山道で行き会う人に、「今日は」と声を掛けるのは、挨拶してお互いをねぎらうという訳ではない。先ずは自分は狐狸妖怪の類でなく同じ人間であり、汝に何等害意を持つ者ではない、と宣言する意義があるのだ。

後に続く人の鼻先でドアを閉めるのではなく、形だけでもドアを支えて会釈をするのも同じである。ドアの一つや二つ、自分で開けられなくてどうする。だけど、鼻先でピシャっと閉まったドアには、やはり敵意を感じる。仮に数センチに過ぎなくても、前の人が支えていてくれれば、実質的に自分で開けなくてはならないにしても、気分は良かろうというものだ。


こういうものに深い意味を持たせるのは行き過ぎだ。元来がCheap moralというのは、大勢の人間が共存していくための約束事、潤滑剤なのだ。

だからこそ、こういう約束事すら身についていない連中が問題なのだ。
潤滑剤を知らない人間が増えてくれば、世の中に摩擦が生じる。そうしてギスギス、ギクシャクした雰囲気が蔓延して、社会全体が不愉快になってくる。

敢えて言えば、心根なんかはどうでもいい。
心で何を思っていようがどうでもいい。バカでもチョンでもいい。せめて、お互いに無用な摩擦を生じさせないための約束事くらいは守れるような人間であって欲しいと思うのである。





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最終更新日  2005.07.13 00:15:52 コメントを書く
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