マックの文弊録

マックの文弊録

2005.07.31
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◇日曜日:旧暦六月二十六日 丙辰(ひのえ たつ)大阪住吉祭、芦ノ湖水祭
ニッコウキスゲ
26日に台風で一荒れした後は、首都圏一円は猛暑に包まれている。
都会の夏空には、薄い雲母の層が一枚敷かれているようだ。
青の下にキラキラ細かい光が散り撒かれているようで、それが暑さを一層酷くする。
同じ夏空でも、南の島や、山の高みに登れば、その青は青より、蒼または藍と云うほどにあくまでも濃く、鮮やかで深いのであろう。

未だ満一歳を過ぎたばかりの会社は、入ってくるお金と出て行くそれのタイミングが合わず、散々苦労させられる。つまりは資金繰りである。
出来立ての会社というのは、それまで何もなかったところで、誰も知らない組織として商売を始めるのだから、当然ながら、ものにしろサービスにしろ中々売れない。しかし、出て行くお金は決まっており、決して入る分と連動してくれない。むしろ、離陸する飛行機と同じで、巡航高度に達するまでは、平常時より余計に燃料が必要になるのだ。

辻褄が合わなくなりそうだと、どこかからお金を調達してこなければならないが、これが容易なことではない。わが国の金融機関はもとより、政府が準備する制度融資も、生まれたての会社には実に冷たい。創立後営業を開始して(そして、実際の入金があってから)一年未満の期間は、事実上お金は借りられないようになっている。要約すれば「決算書がないから判断できない」とか、「実績が無いから」とかいうのがその理由である。

つまりは、当社のような所謂ベンチャー企業は、生まれて一年間は広野に放置しておく。放置された会社は、七転八倒して何とか生き残る算段をしなければならない。無論この一年間に力尽きて野垂れ死にしていく赤ちゃん会社も少なくないはずである。


僕などは親から「人様に笑われたり、お金を借りたりするような人間になってはいけません」と育てられたのだけれど、会社を始めてからお金を借りるプロになってしまった。この世界、お金を借りていないと信用が無い。嘘みたいだが本当なのだ。お金を借りているほどエライという、何だか妙な世界であることも、我が身を以って学んだ。

先日来、某化粧品会社の粉飾決算が問題になっていて、逮捕者も出た。分かっているだけで¥750億。調べればもっと増えるかもしれないとのことだ。でも、もっともっと小さい、目先のお金に四苦八苦している身からすれば、「そんなに赤字を出すことが出来たんだからいいよなぁ!うらやましい!」というのが正直な実感である。

それにしても、色々な人のお蔭で何とか生き延びてはいる。それに、少しずつ明るい方向も見えてきた。
こうしてみると、今までの一連の苦労はやはり、まともな経営に到達するために必要な通過儀礼なのかも知れないとも思う。実際本当に色々なことを勉強した。つまりは、それ以前は如何に無知でノンキだったかという事でもある。

何れにしろ、そろそろ本格的な夏休みシーズンに入る周囲を尻目に、今年はまだまだ猛暑の中、雲母の光の散乱の下を走り回らなければならない。

あぁ、信州の温泉に行きたい!高原の露天風呂に身体を思いっきり伸ばしてゆっくりしたい!信州の高原は雲母の層の無い、抜けるような蒼空に涼しい風が吹き渡っていることだろう。今頃はニッコウキスゲが群れを為して咲き、その可憐な黄を涼風に揺らせているのではないか?

今宵はせめて、家の浴槽に湯の花を入れて、窓を開け放して湯船に浸かりながら、ひと時の反実仮想に耽ることとはしよう。

※ニッコウキスゲ: 日光黄菅 別名;禅庭花
ユリの仲間の多年草で、中部以北の高原などに生え、夏に鮮やかな濃黄色の花を咲かせる。葉が菅笠の材料にするスゲに似ていて、日光地方に多く見られるのでこの名前が付いたという。何だか借り物だらけの名前で、気の毒な気がする。
この花は、一日花だ。朝に咲いた花は、夕方には萎んでしまう。





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最終更新日  2005.07.31 17:20:30
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