マックの文弊録

マックの文弊録

2005.08.12
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カテゴリ: IT世界の話
◇金曜日:旧暦七月八日 戊辰(つちのえ たつ) 徳島阿波踊り
昼顔も暑い
今日の午後、五年前に人材派遣の会社を興した知人に会って来た。
創業直後に会って話をした際、彼は「単なる派遣ではない。登録した全員に倫理教育をする。その上で社員に登用して派遣をするのだ。今やどの企業だって、単なる労働力を求めているのではない。仕事においても又人間としてもモラルを持ったスタッフを求めているはずなのだ。」と語っていた。

僕も些少ながら出資をさせていただいたご縁で、その後折りに触れて色々なお知らせをいただく。それが、届くたびに新規支店の開設案内である。聞けば創業五年にして、全国に拠点を数十箇所新設し、スタッフも今や1300人に達したという。決算も良好で、前年度の決算では数億円の利益を計上できるという。凄まじいまでの成長だ。

ほぼ一年前に自前の会社を立ち上げたものの、未だに四苦八苦している我が身からすれば不思議でしょうがない。今回当社の仕事と少しご縁が出来そうになったので、ご挨拶を兼ねて急成長の秘密を伺いたいと会いに行った訳である。

彼は、「やっていることは、数年前と全く変りません。」とおっしゃる。「数年前にお話したとおりの事が、今は事業として勝手に進みだしただけのことです。」と。

彼は今では「五大雇用」と号して、身体障害者、知的障害者、引きこもり、NEET、そしてシニアを対象にスタッフを募り、彼らに技術教育のみならず、「感謝の心」、「親の恩に報いること」などといった倫理面での教育(と、いうより一種の教化、或いは感化という方が正確なようだ)を施す。その上で彼らを派遣するのだという。つまり、「放って置けば社会の負債になってしまう人材を、有為な資産に転換して、社会に還元するお手伝いをさせていただいているのです。」と。

彼自身過去に障害者であった時期があり、そこから自力で回復した経験がある。「その時の力の源泉が感謝の心だったのです。そして、今は皆さんから感謝されている。お互いに感謝の気持ちでお付き合いできているのだから、事業がうまく行かないはずはありません。」
しっかりと力のこもった声で、自信を持っておっしゃる。



NEETや引きこもりなどは、一人わが国のみの問題ではない。そういう背景があるのだから、彼はこれから五年間で、事業を海外25カ国に拡張し被雇用者を50000人規模にまで増やすのだとおっしゃる。
又、「普通の企業は株主圧力によって短期的な経営効率に集中しなければならない。そういう環境では、こういう長期的な視野に立った事業など出来ない。だから、当分は公開を考えないつもりです。」ともおっしゃった。

「凄いなぁ!」
彼と別れて、猛暑の街路に出た時の率直な感想だった。
彼のビジネスは、現在の社会的なニーズをうまく捕まえてそれらを組み合わせているから、ビジネスモデルとしても成功するだろう事は良く分かる。
安易に株式公開を目指さないという姿勢も非常に共感できる。

しかし、理屈よりも彼自身から伝わってくる熱意、信念のオーラには圧倒された。あのオーラが人をしてカリスマたらしめる源泉なのだろう。
またそれが、「感謝の心」とか「親の恩」という、常識的に否定できないものと結びつくと、一種宗教的な匂いすらしてくる。
話の途中で、「感謝の心は前頭葉から入り、前頭葉の血行を活性化し、それが海馬を・・・・」と、こじつけめいたものが出掛かったが、そんな「理論武装」などなさらぬが良い。もっと似非宗教的な匂いが強くなってしまう。そんなものが無くったって、社会的使命を帯びて「弱者」の資産化にまい進されている姿勢だけで、大いに尊敬できる。凄いと感銘する。

彼などは、新興のエネルギッシュな経営者の一典型として、本当に凄いと思った。

翻って見れば、僕などはとても真似は出来ないな。

物事には常に疑問を以って当たる、というのが科学者としての基本的態度だ。自らの考えを立てても、それはあくまでも仮説であって、常に別の見方や別の考え方の存在を意識せざるを得ない。実証によって自らの仮説の齟齬が明らかになったら、惜しげもなくそれを捨てて、新しい仮説を模索する。
科学者は、彼のような経営者や、宗教家にはなり難いものなのだ。

しかし一方で、色々なものの見方を理解し、異なる考え方を尊重する態度は、結果的により高次なレベルでの視野を与えてくれるものであろう。そういった新しい着想を常に求め、時至るや果敢に実行に移す。そういう姿勢を貫くことで、科学者であっても、いやむしろ科学者であるからこそ、別の次元での「経営者としてのカリスマ性」を獲得できると思うのだ。このカリスマ性を支えるものは情念ではなく理念である。

未だ水面から首を出しておくことに苦労しているベンチャーのリーダーである僕としては、彼の真似をするなどというような無理をせず、自分本来のやり方で彼と拮抗できるレベルに、先ずは到達してやろうと思った次第である。

それにしても、彼の話や話しぶりには大いに感銘を受けた。これは大いに参考にさせていただくつもりだ。色々な分野で活躍している人に会ってお話を聞くと、必ずこういう感銘を受け、触発される。

・・・あれ、これも「感謝の心」なのかな?





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最終更新日  2005.08.14 20:54:33
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