マックの文弊録

マックの文弊録

2005.08.11
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カテゴリ: IT世界の話
◇木曜日:旧暦七月七日 丙寅(ひのえ とら)高知よさこい祭、旧七夕
古川の疎水のほとり-3
大組織と小組織の本質的な相違は、凡庸な人間を許容できるかどうかの一点である。
無論許容できるのが大組織、出来ないのが小組織だ。

昔、日本の大組織を離れて、初めてガイシケーの大組織の一員になった時のことだ。無論僕の管掌範囲は、日本の総体的に小さな固まりに過ぎなかったけれども、そのガイシケーそのものは、全体で3万人以上の社員を抱える大きな組織だった。
移籍後しばらくして昇進することとなり、打合せや管理者教育も兼ねてニューイングランドにあった本社に出向いた。一通り儀式めいた手順があった後、人事担当の重役の部屋に呼ばれて、「マックさん、マネージャの仕事は、一言で云うと何だか分かりますか?」と訊ねられ、一瞬返答に詰まった。

こういう質問を受けると、「部下としてお預かりしたスタッフを束ね、しっかりと育て、相互の融和によってチームワークを実現し、会社の業務推進のためにより貢献できるようにすること。」
そう答えるのが、大方の日本人の「常識」だろうと思う。
僕も多分そんなことを答えたはずだ。
そしたら彼は静かに首を振って、「Fire & Hireだよ。」とのたもうた。

これはショックだった。同時に目から鱗でもあった。「なるほど、毛唐はそう考えるんだ。」と実に新鮮だった。


「ガイシケーは良いですねぇ。お給料も良いし、休暇もたっぷりあるし、五時になればさっさと帰れるし。」などという美しい誤解に基づいた言葉を一頃良く耳にしたものだが、入ってみればとんでもない。五時に帰るのは相対的に下級の職員か事務職員くらいのものだ。
上位に行けば行くほど皆猛烈に働く。エクゼキュティブともなれば、就業時間の定めなど有って無きが如しだ。どこに居ようが何時だろうが、事実上行住坐臥常にOn Jobで居なければならないのが、ガイシケーのエクゼキュティブだ。
そうして、重い責任とそれに対するチャレンジが常に付いて回る。そしてその結果を期日まで出さなければならない。

そういう環境下では、融和とか育てるなどという迂遠なことなどやっていられない。(そういうのは、教育部門の責任だ。)目標達成に貢献できない、或いはそれに障害になるようなスタッフは、即座にFireしなければならないし、それに代わるもっと優秀なスタッフをHireしなければならない。それが組織の長として求められる資質なのだ。
先の重役の質問は、「マックさん、あなたにそれが出来ますか?」ということだったのである。


わが国の政治の世界は、衆議院解散以後9.11の選挙に向けて雪崩を打っている。僭越ながら過日僕がこのブログに書いた方向に向かっているようだ。
それにしてもこのところの我が宰相の手際には、日本人離れした目を剥くような鮮やかさがある。
反旗を翻したものには容赦なく追撃の矢を放ち、手を緩めない。まさにFire & Hireそのものである。
追撃を受ける側は未だ有効な手を打つことができない。「我が党の伝統に反する」、「えげつない」、「下品だ」、「囚人をライオンと戦わせたローマ皇帝の如き所業」、「今は選挙に臨んで、党内融和を強め団結して選挙に当たるべき時なのに」、「これは安政の大獄だ」・・・これらは押しなべて、日本人の情に訴えようとする情緒的な泣き言にしか聞こえない。

こうなってくると、我が宰相の狙うシナリオは誰の目にも非常に明瞭で誤解の余地が無い。「誰にも分かるマニフェスト」が自然に完成しつつある。対するに、反対勢力は上述の通りだし、岡田君の勢力の主張もいささか色褪せてしまった印象を払拭できない。

我が国民の大勢、特に無党派層を形成する都市のサラリーマン層は、政治、経済、外交であれ、ぬらりくらりとした在来型の動きの不条理に大概飽き々している。そういう中では、カリスマ的リーダーが出てくればそれに靡いてしまいがちなのは、過去の世界の歴史を見ても大いに有り得る事だ。


それにしても、小組織を率いるものとしては羨ましい気持ちが募る。Fire & Hireができるのも、ある程度の規模以上の組織であるからこそだ。

小組織こそ凡庸を許容できないけれど、代替が居ない。或いは外にも求めづらいのが現実なのだ。

昔スパイ小説を好んで読んだ時期があった。
当時のソビエトのKGBでは、失敗したスタッフを容赦なく銃殺して代替要員を充てた。そういうシーンが頻繁に出てくる。文字通りのFireなのだ。
銃殺される要員だって、非常に優秀なのだ。それを惜しげもなく切り捨てられる。凄いと思った。


無論一方でこういう考え方には、恐怖政治、独裁政治だとか、人道的でない、という側面もある。それは事実だ。

しかし、のんびりしたオペレーションでは即座に敗者とならざるを得ないような環境におかれた組織のリーダーとしては、思想的危険性を充分に自覚しつつも、Fire & Hireにはついつい魅了されてしまうのである。





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最終更新日  2005.08.12 08:21:26
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