マックの文弊録

マックの文弊録

2005.08.16
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◇火曜日:旧暦七月十二日 壬申(みづのえ さる)京都・箱根大文字、盆送り火東山大文字

「大文字焼?新しいお菓子でっしゃろか?知りまへんなぁ。」

標準語という「方言」でうっかり大文字焼などというと、誇り高き京都の町衆にはこう云われてしまうのだそうだ。
以前、京都で仕事をしていた友人にそう教わった。

旧暦では立秋から一週間すると盆である。
今年十三日に迎え火を焚いてお迎えしたご先祖の霊の皆さんは、今日十六日には、三泊四日の「帰省」を終えてアチラにお帰りになる。明界俗世に残る子孫達は、祖霊の皆さんの道中無事を祈ってそれぞれの門口に おがら を焚いた。
川なら灯籠を浮かべてお帰りの船とし、山には薪を組んで火を焚いてご先祖の旅路の道標とした。
これが送り火だ。


送り火の風習は、室町時代に始まったものだという。我々が今でも踏襲する風習は、この時代に始まったものが大変に多い。

京都は無論わが国千年の都であり、信心に篤い人々が住む街でもある。
盆が明ける日になると、街々こぞって送り火を焚いたのであろう。その内近くの山肌に木組みをして送り火とするものが出てきた。
そうなると、他所の街も負けられない。「おっ!あっちの山は大という文字を描かはりましたぇ。こっちも負けんと舟の絵を描いたりまひょ。」、「ほならこっちは妙法で漢字二文字どす。どないどす!」・・・・

京都は三方に山を廻らす盆地なのだ。最初、東山にでかでかと大の字の焚き火が出現すれば、これは全都どこからでも望見できる。誇り高い京の町雀や坊さんは、負けじと自分の町の山にも送り火を掲げたのであろう。

こうして、東山の「 大 」(東山如意ヶ嶽)から反時計回りに、「 妙法 」(「妙」の字が万燈籠山。「法」の字が大黒天山)、「 船形 」(西加茂船山)、「 左大文字 」(金閣寺大北山)、「 鳥居形 」(嵯峨曼荼羅山)と五つの送り火が揃い、今の形になったのは、江戸時代中期のことなのだ。それで、「五山送り火」と呼ばれるようになったのである。



この日午後八時になると先ず先輩格の東山の「大」に点火され、数分おきに上の順で点火されてゆき、午後八時二十分頃に最後の「鳥居形」に点火されて「五山送り火」が勢ぞろいする。
京都の祖霊の方々は、道々「あ、舟形に火が入りましたで。」、「いやぁ、ほんま。綺麗やわぁ。ほな今度は左大文字の番どすなぁ。」などとさんざめきながらアチラにお帰りになることだろう。

この送り火の影を酒盃に映して飲むと一年間無病息災で過ごせるとか、残りの灰を奉書紙に包んで携行すると厄除けになるとかいう言い伝えもあるのだそうだ。

暫く前のこと、送り火のこの日に、東山如意ヶ嶽に登って、大の字の右肩に追加の火を焚いて「犬」の字にしてしまった人がいたそうだ。
すると翌年は、もっと下に火を焚いて「太」の字になってしまった。


それで、大文字焼の日は全山登山禁止になってしまったそうだが、テレビを見ていたら、大勢の人が焚き火の脇で点火を見物しているのが映っていたから、今では登山禁止は解けたのかもしれない。
・・・・今度は文字の上に一本横棒を追加して、「天」の字にしてしまう者が出る・・・か?





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最終更新日  2005.08.17 17:15:40 コメントを書く


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