マックの文弊録

マックの文弊録

2005.12.30
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◇12月30日金曜日; 旧霜月二十九日 戊子
今日も又東京は晴れ。風が強い。
岩沙参(イワシャジン)
何 だか今年はちっとも年末の気がしない。そういえばクリスマスだって全然クリスマスらしくなかった。これは僕だけなのだろうかと思って周りの人間に聞いても、皆同じ事をいう。今年はそういう年なのかもしれないなと、一時そんな風に思ったけれど、僕の周りの人間は何らかの形で僕と同じ環境を共有している者ばかりだ。つまりは、僕の周辺だけが徒党を組んで、あたふたどたばたと年末に駆け込んだということなんだろうな。

晦 日の30日も、会社に出て色々やっていたが、前日秋田の泥湯温泉では、温泉客がガス中毒で亡くなった。硫化水素中毒だそうだ。温泉地などで風のない日に近隣を散歩していると、こういう被害に合う危険がある。
硫化水素は空気より重いから、風のない日には窪地に溜まる。しかも無色で、周囲の空気と区別がつかないから、歩いている途中にこういう窪地に迷い込んでも分からない。それで、中毒死してしまうのだ。わが国は火山国だから、方々に地下からのガスが噴出す地獄谷などという地名があるが、こういうところに不用意に踏み込んだりすると、文字通りの地獄谷になってしまう。犠牲になったのは、東京からの家族で小さな子供も居たということだから、年末にむごいことではある。

と ころで、
「どうもこの頃、体の ぐわい がはっきりしなかったんです。それで、やっぱり日頃の疲れが溜まったのだろうと うがった 思いがあったんです。だから温泉に出かけることにしました。色々約束のある人も居たんですが、そういう人には、温泉地の おみあげ しなびた 温泉にゆっくり浸かって、くつろいだ後に宿でいただいた鮟鱇鍋には肝も入り、あの もったり した味わいは何とも云えませんでしたね。・・・・」

こ れは、どこかの方言?
いやいや、壮年期でいらっしゃるれっきとした大人の方が折に触れておっしゃったり書かれたりした、「ちょっと変な日本語」をまとめてみたのだ。
「ぐわい」は「ぐあい」ですね。「ぐあい」だと変換してちゃんと「具合」になるけれど、「ぐわい」だと「愚ワイ」なんてなっちゃって・・・・これは、なかなか含蓄があるなぁ。
「うがった」は、この人は「疑った」とか「間違った」などと類義に思っていらした。でも本当は「穿った」で、鑿などの鋭い刃物で表面を掘り下げて、事の本質を突くという意味ですね。しかし、それが嵩じると考えすぎということになり、「間違った」という意味にも近くはなるけれど。
「おみあげ」は、無論「おみやげ」。しかし、これは発音上の訛りのようなもので罪が無い。
「しなびた」は「鄙びた」ですね、どうしたって。江戸っ子の訛りならともかく、「しなびた温泉」じゃぁどうも。
鮟鱇も「もったり」した味わいでは美味しそうじゃないなぁ。これはやはり「まったりした味わい」とか、「もっちりした食感」とかでないと。

思 うに僕らより少し時代が下ると、皆さん余り本をお読みにならなくなったんではなかろうか?本といってもちゃんと字がたくさん書いてある本のことで、平仮名やカタカナの擬音語が溢れている画像中心の本のことではない。文字で意味を伝えようという意図がはっきりしているのであれば、別にちゃんとした文学書でなくても何でも良い。第一「ちゃんとした文学書」なんて、本当にあるのだかどうだか。
人間は耳からことばを覚えて、やがて字を見てこれの意味を知り、言葉の文字への書きようや、その発音を矯正するのである。これは、洋の東西を問わない。

わ
めでたい時は言葉遣いもめでたく、そうでない時は更なる禍を避けるために言葉を慎んだ。我が同胞は耳にも優れ、弓の弦を弾いてその音で魔を祓い、平と発し仄と合わせて韻を整えた。我々はその子孫である。やはり我が国土、我等が心に宿る言霊の伝統は守りたいと思うのである。
その為には、やはり本を読むべきであろう。

だ って、いくらなんでも「しなびた温泉」じゃぁ・・・・ねぇ。





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最終更新日  2005.12.31 23:08:14
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