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2026年08月21日
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カテゴリ: 資料館



こんにちは、資料館です。
「猿橋」は、江戸時代の半ばごろから日本三奇橋の一つとして全国に知られ、その珍しい構造や険しい峡谷にかかる姿がたくさんの書物に記されまた絵画に描かれてきました。
今回は、その中の一つ、『みとものかず(美登毛能数)』から「猿橋」について書かれている部分を紹介します。
ちなみに、「みとものかず」は明治13(1880)年に明治天皇が行った甲州・東山道巡幸に随行した池原香穉(いけはらかわか)が著した紀行文です。


午前十一時のころ猿橋駅につかせ給へり。この駅より廿八町余りにして、猿はしにいたる。長さ十七間幅二間の板橋なり。桂川の川岸あひむかひて、削りたてたる如き巌の上にわたせり。橋の上より水際まて十二三間、水面より水低まてまた十二三間あり、といへり。まことに其淵の水青みわたりて藍のことく、橋のふへより見おろせは、めるくめきて危ふけなることいふはかりなし。さて橋のつめに立つゝ、つくつくとみわたせは、向のきしのなからはかりより生出てたる木とも、あまそゝりそゝりたちて、くらうしけりたる中より、一筋の瀧津瀬、ひゝきもさやかにとゝろきおつるか、これも五六丈もやあらん。いはほをつたひてほどはしるに、そのもとにすなとりする舟ひとつ横はれる、筆にも詞にもおよふへきにあらねと。
さる橋のきしより落る瀧つせに夏猶寒きこゝちのみして。うちわたりて岸よりすこしおりて、橋のうらを見る所あり。こゝより仰きみるに、橋柱たつべきところならねは、両岸より巨きなる材を雁の並ひゆくらんやうにつきつきにさし出して、橋のけたをうけて、其のうへに板をふせたり。そのたくみなることめをおとろかせり。そもそもわが国、はしのめつらかなるもの周防の岩国橋、と此のはしなりけり。さる中に、岩国のは、そのたくみたへにしてのとかなり。こゝのは、其さまくしひにしてすごし。いはゝから絵に似たり、かしこのは、土佐かかける筆ともいふへくなん。あないするところのもの立出て、この橋かけ替てより、三十年はかりにもやなり侍らん今はまたかけ替つへき年頃になれり、といへり、いかなる人か、かはかりたくみなるものをかけそめけん。そのもとのしられぬはいとあたらしくこそ。 おもふに、もと東西の岸より、枝をさしかはせる大樹とものありけん、今もさる梢ともの、ほとほとかなたこなたよりおひしけれるかみゆるに、かならず、いにしへは大なる木ともの有りけんことしられぬ。そのをりは、もはら猿などの梢をつたひてわたりしところなるへし。それにならひてつくれるならん、さるゆゑにより猿橋とはいひけんかし。 かの勢田より宇治にゆく川中にしゝとびといふあり。又大堰川の川上にも猿飛といふ所ありて、をりをりさるものともの、とびわたるあり。といへるをも、おもひ合すべし。或はさる橋は算はしといふこと葉の訛れるなり。といへり。いつれまことなるやしらす。
『みとものかず』(1932『​ 甲斐志料集成 ​』第一巻所収)


橋のサイズや、周囲の景観について述べた後、その特異な構造に触れ、どのような発想に基づいて創られたのかを考察しています。
曰く、「東西の岸から枝をさし交しているところから、その梢づたいに猿が渡っていく姿にヒントを得て考案したのではないか。そこから「猿橋」という橋名がつけられたのだろう」としています。
上の「猿橋」の写真を見てもわかるように、上の段にいくにしたがって伸びていく4段重ねの桔木(刎木=はねぎ)を大木の枝に見立てているわけです。
「猿橋」架橋の起源については諸説あり、どれもこれも「伝説」の域を出ていません。
前回の「国定忠治」と同様に、それぞれがそれぞれの納得する「伝説」を楽しんでいただければ良いと思います。

※おまけ
引用した文は活字本から翻刻したものです。
この他に​ くずし字の印刷本 ​もありますが、文字の表記に一部違いが見られるものの内容的には同じです。
なお、擬古文調で書かれているので、読むのをためらう人もいるかもしれません。
そんな時は、上の翻刻文を全文コピーしてAIに現代語訳するよう指示してみてください。
Geminiくんは、きれいに現代語訳してくるばかりか、解説もしてくれます。
また、犬目峠から笹子峠までについての記述もありますので、時間がある時にでもぜひともご一読ください。





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最終更新日  2026年08月21日 13時21分11秒
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