フリーページ

2007年11月14日
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
淡い照明にさらされて皆の演奏に乗り遅れまいとギターの弦を奏でていた男は目を射るような強いスポットライトが自分自身を照らし出したとたん露出オーバーのフイルムのように頭の中が真っ白に感光した。

指に意識が通らない。目前の楽譜に書かれている音符が勝手に踊りだし意味をなさない。おまけに吐き気までも催し全身の血が胃袋に集まってしまっていた。

「さあ~それでは続いてお送りする曲は・・・・・・・・・・・・・・・・・」

男にはアナウンスの声が何処か遥か遠くの知らない人物を紹介している気がしていた。そしてそれなのに何故に自分の名を言っているのが訝しく思った。

「おい キテレツ見てみろよ、ここに『五十台の貴方も見果てぬ夢の演奏に参加しませんか』って広報に載ってるぞ なに なに オーデションはきたる六日か どうだいっちょう受けてみるか?」

「あほう言え 我々ど素人が受かるわけないやん でもちょっと冷やかしで行ってみるか」

そんな軽い冗談から始まったオーデションに如何した訳か不思議に通ってしまい。あれよあれよと言う間に舞台の上にギターを抱えて上っていた。

男は舞台の幕が上がる前に意識が舞い上がらない様に何度も何度も手のひらに『人』と書いて飲み込んだ。

人 食う 人 食う 人 食う 人食う ・・・・・・・・・・・・・・それでも不安にかられ叉 人と言う字を手に書いては食っていた。



男は音が出たと思った。後はもう分けが分からなかった。兎に角、譜面を追いながら白い闇を音符で埋めていった。

やっと自分の奏でる音が耳に捕らえられる頃になると最後の局面になっていた。弦が振るえ長い余韻が流れるとようよう曲は終わった。

安堵を憶えた男の手のひらはギターの胴に添えられた。男は終わったと思った。雲を踏む足取りで歩んだ。

頬を火照らしながら舞台から降りた男は頭は空っぽなのに胃が詰まったように重いのに気づいた。

胸が痞えて消化不良をおこしている。今にも吐きそうになった。そんな様子を見た傍らの男が声をかけてきた。

「どうした?演奏が済んだのに気分が悪いのか?」

男は俯いた顔をようよう上げて答えた。

「ええ あがらないように 演奏の前に 人を食い過ぎたのがどうもまだ消化しきれてないようで・・・・・・」





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2007年11月14日 23時45分41秒
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

はやと89314

はやと89314

コメント新着

ヨッシー89314 @ Re:卒業式(03/25) さすが、はやとさんの息子さん!! 父親同…
ヨッシー89314 @ Re:いいわけもこんなもんで(03/18) まあ、人生ここまで来れば焦る事はありま…
ヨッシー89314 @ Re:途中です(03/16) そう言えば、お互いに、じっちゃんと呼ば…
ヨッシー89314 @ Re:菜の花にモンシロチョウ(03/11) 是非、次の次元ははやとさんの独壇場にし…
ヨッシー89314 @ Re:はるとおからじ(03/09) お疲れ様でした。 お互いに春の気分ですね…

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: