全国の名物研究所

全国の名物研究所

名物調査 【埼玉県】



 さて、埼玉って皆さんはどんなイメージをもたれますか? 
 ダサい玉なんて悪口もありましたね~。

 でも、かつては古きよき農村風景があった場所。そして典型的な農業県だったと思いますが、今はすっかりベッドタウン化して、綺麗で洗練された街になりました。

 では、「昔の埼玉の風景って?」

 最近、これを説明するのにとてもわかりやすい方法を知りました。
 ジブリの『トトロ』って映画ご存知ですよね。この風景が私が子どもの頃に見ていた埼玉の風景そのまんま(実際、狭山のあたりがモデルなんです)。あのバーちゃんの言葉なんか、私の亡くなったバーちゃんの言葉と瓜二つ。あの映画を見るたびに、全てが懐かしく感じて他人とは違うシーンで涙しちゃいますぅ(笑)。

 そんな懐かしい埼玉の、まずはお米の話題です(久しぶりの直球勝負って感じ)。

 今、食の安全性が問われていますね。どこでどのように作られ、どう処理されてきたのかについて関心が高まりつつあります。
 今は当たり前の話なんですが、ちょっと前まではホント無頓着でしたね、この手のことに。

 そして、ちょっと関心が出てきた頃、生産者の顔が見える米とかいって「私がつくりました」なんて、いかにもらしい顔写真がパッケージにシールで貼れていたお米がありましたよね。「これなら安心!」といって農家のオヤジの顔見ただけで、多少高くても売れたみたいです。

 でも、さすがに今はそんな表面的なものでは通用しなくなりつつありますね(家の近所のスーパーではまだ十分通用していますけど……)。

 過去にどのくらい農薬を使った田んぼや畑でどれくらいの農薬や化学肥料を使って栽培したか、遺伝子組み換えとかしてないかと、多岐にわたってチェックされて、情報公開がされています。そして、お米の場合、これらの一定基準をクリアすれば、特別栽培米として認定されます。

 毎日食べるものですから、お米の関心は特に高いといえます。

 首都圏にあたる埼玉県や千葉県、神奈川県の農業といえば、今までは一大消費地に隣接した生鮮野菜を供給する、いわば首都の畑みたいな感じでした。そのため、あまり鮮度を問わない根菜類や穀類の栽培はどんどん遠くへと移っていったような気がします。

 今もそれは変わりないんだろうなぁって思っていたら、どうも様子が違ってきたみたい。それに気がついたのは埼玉県の米について調べていた時です。

 埼玉県では、県や農協、消費者団体まで、地産地消、食の安全などの観点から「県産米」を見直す活動を開始しています。このような動きはどこにでも多少はありますが、どっちかというと県外への宣伝活動が盛んですが、埼玉県はそれを県内に向けているのが面白いというか、画期的に感じられます。

 とあるサイトには、「JAS法が今ほど厳しくなかったころ、ブランド米の水増しに使われていたのが埼玉産だった」とか書いてありました。今でもブランド米ならぬ、ブレンド米には「埼玉米」が人気らしい。

 つまり、「埼玉米」というブランドは表に出てこないという悲しい現実があるんです。嘆かわしい~。

 それはなぜかというと、埼玉県内での稲作はもともと少ない生産量の上に、品種が多すぎ、例えば「埼玉産コシヒカリ」とか銘打って流通させたくても絶対量が足りなかったそうです。

 他県がブランドを確立させてしまった今となってはもう手遅れ。いくらおいしい米を作っても「埼玉米? 知らん!」ってことになってしまします。

 ところが、そこに救世主が現れたんですね。食の安全を問う消費行動という……。

 そこで埼玉県は考えたんでしょう。食の安全は遠くで叫ぶよりも近く、それも地元でささやいた方がきっと効果があるぞと。「うちはこんな風にお米を作っていますヨ。良かったら近所だし見に来ませんか?」みたいな。

 顔だけでなく生産している現場も見られれば安心は増します。しかも、埼玉都民といわれようが、埼玉県に住んでいれば、「埼玉の米?」なんて、はなから邪険にはできないでしょうし、少しは愛着あるでしょうから。で、買って食べてみたら、意外と美味しかったり……。

 そして、多い品種を整理するためでしょうか? 「彩のかがやき」という新しい品種を作り、それを埼玉県のお米として一生懸命売り出しています。「彩のかがやき」は病害虫に強く、低タンパクで美味しい品種だそうです。

 ここで、またちょっと面白いのが、「彩のかがやき」という品種がどうやって出来上がったか、そしてどうやって栽培すれば良いのかを、インターネットでとても詳しく紹介していることです。ここまで情報を公開している品種は見たことありません。

詳しくは埼玉県農林総合研究センターの サイト をご覧ください。


 う~ん、さすが埼玉。賢い! そういえるかどうかは今後の成り行きしだいですが、埼玉のお米にはがんばって欲しいです、ハイ。

 ちなみに 日本穀物検定 では、
 埼玉県は県東のコシヒカリのみランキングされており、A’でした。去年はAだったのに残念だなぁ。

その後、「彩のかがやき」を埼玉の農協で購入し、食した感想を以下に記載します。

 ゴールデンウィーク、埼玉に帰ったときに以前このブログで紹介しました埼玉のニューフェイス「彩のかがやき」という、地元でしか買えないらしいレアなお米をゲットしました。

 でも、パッケージがとっても貧相。お世辞にも購買意欲をそそってくれるとは言い難い……。だって、ビニール袋にただシールが貼ってあるだけなんですもの。

 シールには「特別栽培農産物」とあり、「このお米は化学合成農薬及び化学肥料を慣行の5割以下に減らして栽培された農産物です」とすごく小さな文字で書いてあります。

 これ読んでも、普通チンプンカンプンですよね。もっと判りやすくならんかねぇ。それに埼玉米の将来を背負って立つ期待の星の割には主張が足りなさ過ぎ。萌え系の意味不明の女の子イラストなんかは必要ないけど、それにしてもこれじゃああんまり。しかもちょっと待って、表示はこのシールのみ。産地の表示やその%とか等級、さらには精米日とか表示しなくても良いんだっけ?

 「大丈夫なのかぁ~」って心配になりますね。

 でも、食べてみたらまあまあの味。値段も食味も石川産の普通のコシヒカリと同じくらい。しかも冷めても粘りともちもち感が強いのは感心できます。おにぎりとかお弁当にも適した米。

 ちなみにサイボクの農産物直売所ではこの米売ってませんでした。聞くと生産者が特定できない米はおかない主義だそうです。


さて、埼玉の続きです。

 埼玉県の味覚は同じ関東でもちょっと違うらしいんです。野瀬泰申著の『全日本食の方言地図』(日経新聞社刊)なんか読むと、統計的に埼玉だけが他の都県とは好みが違うことがあるようです。

 これは、埼玉県は首都圏でも特にいろいろな地方の出身者が多く住むために違うんではないか? みたいな意見があったりしますが、それは千葉県も神奈川県も東京都だって似たりよったりです。そんなに違いはないはずです。

 では、なぜゆえに?

 私が思うに埼玉県とは、もともと恵まれた土地だったと思われます。

 埼玉県の名物に、草加せんべい、五家宝(円筒形のおこしのような菓子)、それにうどんがあります。
 せんべいと五家宝は米、うどんは小麦。どっちも土地が肥沃でないと採れません。

 関東地方はうどんよりそばというイメージが強いでしょう。それはなぜかというともともと小麦が採れる豊かな土地が少なく、その代わりにやせた土地でも栽培できるそばが主流になったためだとお思います。

 ところが埼玉だけは関東では珍しいうどん文化圏なんです。加須市のうどんは有名ですが、加須に限らず埼玉はどこでもうどんが根付いています。祭りなどの晴れの食膳にも、祝い事や法事など親戚縁者が集まるときもうどんが登場します。何でもかんでもうどん。とにかくうどんが幅を利かせているのが埼玉県なのです。

 このうどん文化、小麦文化、そして肥沃な土地が、関東では突出した味覚のベースにあるんではないかって私は思います。前回、埼玉を首都圏の畑と称しましたが、本来は穀倉地帯だったんです。

 そして、関東の真っ黒いうどんのつゆは有名ですが、埼玉の一般家庭では鳥や豚でだしをとった醤油ベースの温かいつけ汁にほうれん草のおひたしと冷たいうどんをつけて食べるんです。夏はゴマと砂糖をすり鉢ですって確か醤油とシソ(ミョウガも?)を加えた冷や汁で冷や麦やうどんを食べます。
 私の母親は埼玉県の出身なので子どもの頃からうどんといえばこの食べ方が主流でした。だから、これが世の中どこでも同じだと思っていました。

 ところがそれはどうやら埼玉独特の食べ方だったみたいですね。埼玉出身のうちのカミさんも同じだったようですが(笑)。でも、埼玉ではそれが常識なんですよ。

 埼玉がどうしてそのような味付けでうどんを食べるかまではわかりませんが、どうもそのせいか、関東風の濃いつゆのうどんよりも関西風の味付けを好む埼玉県人が身の回りには多いような気がします。

 東京で「うわ~、なんだこのうどんのつゆは!」って思っている関西人の方、一度埼玉の一般家庭のうどんを食べてみてはいかがでしょうか?(お店に出ていないかも)

【そのほかの埼玉名物】

川越(小京都)の芋菓子、狭山のお茶、秩父のまんじゅう、最近では東松山の焼き鳥なんかも有名でしょうか。北埼玉地方には一見お好み焼風の「フライ」と、コロッケの中におからが入ったような「ゼリーフライ」というものがあるとか(食べたことはない)。

© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: