私は理解できなかった。いや、どうしても理解したくはなかったのだ。本当はとうの昔にうっすらと気付いていたのだとは思うのだが、理性の部分がその事を理解するのを拒んでいた。事実だけを考えれば、男同士の話に首を突っ込む、空気の読めない嫌な女、という図式にしか見えないところだが、あれは全くそんなものではなかった。大石の私を見る目は、からんできたチンピラから恋人を庇う時のそれであり、太田が最後に私をちらっと見た顔は、どう見ても邪魔者を追い払った時の勝者の顔だった。あの頃の私は、大石に魅かれていると言うよりは、大石を引き戻したい一心で、どうしても太田に負けたくなかった。私が太田なんかに負ける筈がない、と思う一方で、絶対に勝てない予感もしていた。その一件の後も私達3人は一緒に通学していた。大石はどう思っていたのかは知らないが、私と太田は完全にムキになっていた。私と太田が言葉を交わす事はなかったが、両方が一方的に大石に話し掛けていた。はたから見ると太田が邪魔者に見えたようだが、どこまでいっても邪魔者は私だった。最初から勝ち目のない私の一人相撲だという事に気付くのに、時間はかからなかった。

