「いや、そんないいですよ」と答えた途端、その人のお腹がグゥーッと鳴った。「決まりですね、そこのDでいいですか」と何だか急に気が楽になって私は自分の車に乗り込んだ。Dの店内は混んでいたが、運良く二人掛けのテーブルがあいてそこに案内された。オーダーを済ませて私が「本当に今日はありがとうございました。もう私一人だったら、どうしようもない所でした。助かりました」と改めて礼を言うと「いや、まぁ考えてみればJAFとか呼べば済んだんでしょうけどね、なんかどうしようもない感じでしたもんね」と言う顔を見ながら私は「なんだ、ずい分ボクじゃないの」と思っていた。ますますリラックスした私は家はどこ?だの学生さん?だのと身元調査のような質問攻めをしていた。よくよく聞いてみると家は離れていたが、歳は私より一つ下なだけで中学校は同じだった事が判明した。差し出した名刺には、N市内にある設計事務所の主任設計士とあった。「技術職だし、通勤も車なんでこんな格好でいいんですよね」と言う彼は確かに学生に見えるほどラフなスタイルであり、人間もかなりラフな、というか素朴な人柄のようだった。

