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千菊丸2151さんカテゴリ
「あの梅の木は」 第
14
話
マスターが淹れてくれた珈琲はとても美味しくて
「美味しい!この珈琲いつもと同じですか?」
香織がそう言うとマスターは嬉しそうに
「これはマイ焙煎なんだよ。店に出してるのとはちょっと違う、
けど、この違いが分かるとは大したもんだね」
「私、珈琲大好きなんです」
香織もマスターに褒められて嬉しそうに言った。
一方、裕也はそんな余裕は無く・・・
「あの、急かすようですいませんが・・・」
「うん、いいよ聞かせてもらおう」
マスターは裕也に向き直り、もう一口啜ってカップをソーサーに
置いた。
「あの日、ぼくらは水道道路から中野通りを右に折れて、笹塚駅
方向に歩いてました。そしたら前から同年代の男女二人が
歩いて来たんです」
「うん、・・・」
「で、なんだか異常に気になり始めて・・・」
そこで裕也が香織に目を移すと、香織が先をつないだ。
「その二人のうち男の子の方に目が釘付けになっちゃったんです」
「・・・見た目が特別だった?」
今度は裕也が説明役を代わった。
「あの男はぼくに、瓜二つだったんです」
「・・・君たちは相当なショックを受けたみたいだが、そんなに
似てた?」
「それはもう、似てたとかそっくりだとか、そういう
範疇じゃなかったんです!」
「うーん、この世には自分に瓜二つな人間がいるって、聞いた
ことがあるが・・・」
「いや、マスター、あの二人はぼくらと同じ制服を着てて、校章
まで同じだったんですよ!『瓜二つ』を通り越してませんか?」
マスターはもう醒めてしまってた珈琲をもう一口啜った。
「それじゃあ、もう君そのものと受け止めてしまうよね・・・で、
彼女も?」
マスターが香織を振り返って問い、香織が間髪入れずに答えた。
「いいえ、女の子の方は、私とはまったく別人で・・・」
「・・・両方ともそっくりなら、通りに面したお店のガラスに
映ったのを見間違えた、ということも考えられなくはないが、
片方は別人となると・・・いよいよリアルだな・・・それから
どうなった?」
「向こうの男子もぼくも、お互いに目が離せなくなって・・・すれ
違うまでは・・・そしてついにすれ違うその時は、心臓が飛び出して
しまうんじゃないかって、あんな異常な経験は初めてで・・・」
「それは、五次元の世界を信じない人に話しても『夢を見てた』と
言われてお終いだろうね」
「マスターは、マスターはどうなんですか?」
裕也が問い、香織が身を乗り出す。
「ぼくは、五次元の世界をどちらかというと信じている。そうだ、
君たちに、役に立つと思う本がある。それ明日にでも・明日君たちの
都合は?」
二人は顔を見合わせて打合せを始めた。
「私は仕事だけど、5時すぎには上がれる」
「俺も明日は残業しない。5時に上がって明大前と初台だ、5時
30分笹塚な」
「私はちょっと小走りになるけど・・・」
「1~2分のことは言わないさ」
「という事で、5時45分頃ではどうでしょうか」
「うん、それでいいよ待ってるから慌てて転ばないようにね」
「はい、店休日なのにすいません」
裕也にならって香織も頭を下げた。
「いや、君たちには悪いけど、最近退屈してたから頭をシャキッと
させてもらえそうで・・・だから全然気にしなくていいよ」
裕也と香織は、さっきよりもっと丁寧に頭を下げてから店を出た。
「相談して良かったような気がする」
香織がそう言い、裕也が頷き、彼女の肩を抱き寄せながら
「お前のお陰さ・・・ありがとうな」
「あの梅の木は」 第13話 2026.05.14 コメント(2)
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