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2006/06/19
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カテゴリ: 個人図書館
百日紅(上) 百日紅(下)

≪北斎、お栄、英泉、国直……奔放な絵師たちが闊歩する江戸の街。淡々とした明るさと幻想が織りなす傑作。≫


●杉浦日向子
●ちくま文庫
●コミック


杉浦さんの作品の中でも、ものすごく好きな作品のひとつ。
さるすべり。

葛飾北斎を中心に、その娘のお栄、弟子の英泉(杉浦さんがいっちすきな英ちゃん)、そして他派ながら北斎を尊敬する国直。

ここの人物が個性的で、だれも好きになってしまう。

でも、話はいろんなところに飛んで、百物語のように奇奇怪怪なものも登場する。
私が好きなのは上巻の其の三「恋」。

版元から「あんたの絵はしょせん人まねだ」とぼろくそに言われて、しょげた英泉が、湯屋帰りのお栄に出会う。
二人で土手にしゃがみながら、何を話すでもなく、自分の心の中のわだかまりを考えている。


正面を向いたままお栄が言う。
「コウしてると何かいい事あるだろうか」
正面を向いたまま英泉が言う。
「コウしてりゃやさしい女が声をかきゃしめえかと思って……」
お栄がため息つくように
「詰まらねえな なんだか」

英泉も弱ったように、絵の仕事をまだ2本引き受けているが、人まねになってしまいそうなのを心配していると口にすると、お栄が湯屋帰りの洗い髪をばさっとさせて 「エイ 馬鹿野郎」 と立ち上がり、土手に吹く風に髪をなびかせてひと言 「阿呆らしい」
この終り方、すごく好きです。

もう一つ、其の二十四「因果娘」
何の呪いか、若い娘の両肩にしがみつく干からびた老人の手。
荒々しいひげだらけの兄と二人で、元気に毎日練り歯磨きの宣伝商売をしているが、娘はその手がひそかな悩み。

ふっと長屋の表を通りかかった祈祷師にお払いしてもらい手をはずそうとするが、何の因果か手はますます食い込むばかり。

祈祷師を追い出したあと、娘が 「チクショウ こんな体じゃ嫁にゆけん!!」
「嫁だとォ てめえ 男ができたのかッ!」 と兄がにらみつける。
「ばかッ 手なんか背負ってどうなるもんでもないわッ 考えてもみやがれッ!!」 と眼をとがらせて言い返す娘に、兄は途端にシュンとなって 「そうか」
「えーん」 と兄のひざに泣きつく娘。

次の日、興行の準備をする娘が、両肩にしがみつく手にまで白粉をぬっているのを見た兄はぎょっとしてやめさせようとするが、娘は振り返って
「いいだろう わたいのんなんだから」
ラストは晴れ晴れしいいつもどおりの練り歯磨き宣伝のひとこまでチョン。



最も秀逸で印象に残るのは、単行本収録の時最終話として収録された其の二十八「野分」
これは最初から最後まで、すばらしい。
独特の雰囲気。
さすがガロ出身。
最後のひとこま、なんともいえない。

来月の今ごろは杉浦さんの一周忌。
作品全部読む一日がやってくる。





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最終更新日  2006/06/19 09:15:49 PM
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