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剣竜さん
こあきんどさん
1 同一性確認のため、物を示すこと。
2 記憶喚起のため、物を示すこと。
3 供述明確化のため、物を利用すること。
まず、「1 同一性確認のため」は、刑訴規則199の10で認められています。
物の特徴を丁寧に証言してもらい、その上で物を見せます。
たとえば、凶器の包丁をを見たという証人に対しては、包丁の種類、刃渡りの長さ、柄の長さ、刃の材質、柄の材質、刃の色、柄の色、長さ、材質、見たときの付着物の状況などを丁寧に聞いた上で、「あなたが見た包丁はこれですか?」と聞きます。
「はい」と言われたら、「なぜ、そういえますか?」とだめ押しをします。
いきなり包丁を示したのでは、誘導尋問と同じなので異議が出されてしまうでしょう。
ちなみに、普通、ここで示すものは証拠申請の手続きを採っていると思いますが、何らかの理由で採っていない場合には、証拠の出所を示さなくてはなりません。
示さないと、最悪、弁護人の捏造証拠と疑われても文句は言えないことになります。
「2 記憶喚起のため」は刑訴規則199条の11で認められていますが、裁判長の許可が必要です。
そこで、許可を求める発言をしなくてはなりません。
「1 同一性確認のため」と同様、まずは、丁寧に質問します。
そのうえで、どうしても記憶が蘇りそうになかったら「裁判長、証人の記憶喚起のためひつようがありますので、○○を証人に示して尋問する許可を下さい。なお、○○は、既に検察官にも閲覧してもらっています」といって下さい。
このとき、うっかり、「○○を利用して」と言わないようにしてください。「記憶がないことに乗じて刷り込む気だ」と異議を出されてしまいます。
さて、もっとも良く使うのが「3 供述の明確化のため」です。
拡大地図に書き込みをしてもらったり、物を使って動作再現をしてもらうことは、比較的よく見かけます。
これは、刑訴規則199の12で認められていますが、やはり裁判長の許可が必要です。
まずは、証言だけで丁寧に証言してもらいます。
そのうえで、今までの証言を明確にするために、物を使う許可を求めます。
「裁判長、今の供述を明確にするため、○○を利用して尋問することの許可をください。なお、○○は、既に検察官にも閲覧してもらっています」
こうして、たとえば、拡大地図を使う許可が得られたとしましょう。
証人に書き込んでもらう必要がありますが、やはり、証人の方は緊張してらっしゃいます。
そこで、行動を逐一指示する方がむしろ丁寧であり、証人の方も安心します。
つまり、まずは「お立ち下さい」から始まり、最後は「お座り下さい」まで指示させてもらうのです。
さて、証人に立っていただいたとしましょう。
この段階では、拡大地図がなんなのか、裁判官・裁判員の方には、何となくしか分かりません。そこで、証人の方に、「これは何ですか?」と聞くのが第二手となります。
そして、地図の説明をしてもらった後、証人の方に書き込んでもらうのですが、いきなり書き込まない方が無難です。まずは、一旦指で指し示してもらい、問題なければ書き込んでもらいます(つい、書き込みを省略したくなりますが、書き込んでもらった方が裁判官・裁判員には丁寧です。)
指で指し示してもらうときも、「示して下さい」では証人を戸惑わせてしまします。「指で指して下さい」という方が丁寧です。
書き込んでもらった場合、裁判所職員にデジカメ撮影してもらって、調書添付を求めたうえ、拡大地図自体は、評議室に持ち込んでもらうよう、依頼するのが良いとうことです。
ところで、そもそも、拡大地図など、ビジュアルエイドを使うのは、「4 動作」に関する場面で使う方が良いです。ここぞという時に使うべきだそうです。
私は、「3 舞台設定」の場面で使ってしまい、講師に注意を受けました。
物を使って動作再現を求める場合もほぼ同じですが、動作再現を求める前には、より細かく動作を聞いた方が良いです。いい加減にして動作再現に入ると、挙動による誘導として異議が出されかねません。
また、動作再現を求める場合、再度の質問はしない方が良いです。
やはり、微妙に異なる恐れがあるからです。
たとえば、被害者が被告人に棒で襲いかかったというのを再現してもらう場合で、棒で尋問する許可をもらったとしましょう。
その場合「では、再度伺います。被害者は、被告人にどうやって殴りかかりましたか」などと聞かない方が良いのです。いきなり、「では、私が被告人役をやりますので、さきほどの証言のとおり、あなたが見たとおりに、殴りかかってください」と言ってしまって良いのです。
なお、証拠で包丁が出されていても、安全上、証拠の包丁は使いません。
模造刀を使うことになると思いますが、模造であることをちゃんと示さないと、フェアな印象を持ってもらえません。
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