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お馬さんといっしょ
世界史コンテンツ(のようなもの)
~中世ヨーロッパ 1限目 お馬さんといっしょ~
「皆さん準備はよろしいですか? これから1限目の授業を始めます。」
「シエルせんせ~に質問! なんでいきなり中世なの?流れからすると古代のギリシアとかアッシリアの話が出てきそうに思えるけど?」
「良い質問ですね。フランス語で言うと
bonne question
」
「・・・そうゆう微妙なパクリネタはやめなさいって」
「え~と、基本的には中世~近世の流れで授業を行い、その流れの中で、古代の戦争についてもフォローするというスタンスでやろうと考えています」
「ボソボソ…
主な種本が『火器の誕生とヨーロッパの戦争』とか『長篠合戦の世界史』とか2ch過去ログ等だからだろうが」
「何か仰いましたか涼子さん」
「いや別に…続けて貰っていっこうにかまわん」
「もう一つ質問! 昔の古い戦争を学ぶことに意味なんかあるの? 現代の戦争は
反応弾頭を搭載した弾道弾が半時間で敵国を焦土にすることが出来る世界
なんだし、馬とか槍とかで戦っている連中のことなんか知ってもナンセンスじゃない?」
「そんなことはありません。例え古代の話であっても、
基本的な軍事原則には変化はない
と考えて頂いてけっこうです。技術は進化しても原則はかわらない…そういうものです。それに核戦争なんてめったに起こるものではありませんし」
「
どのみち一般人には不要な知識に変わりない。
プロの軍人なら教養として知っておけば役に立つこともあるかもしれないがな。大体いい加減な素人知識があったところで個人的な趣味の域を出るものではない。生兵法は怪我の元だ」
「この授業は、意義として
祖国防衛
とかを掲げているわけではありませんので、問題ないと思いますよ。はっきり言えば
個人的な趣味
ですから」
「そんな身も蓋もないことを…」
「だったら世界史コンテンツなどと名乗らなければ良いだろう」
「それでは授業を続けますよ~」
「都合の悪い意見には聞く耳もたずか、
どこぞの半島の連中並
だな」
「
私は生粋のフランス人ですよ!半島人並なんて差別です!!謝罪と訂正を要求します!!!かんしゃくおこる!!!!!11!!!!111!!!
」
「あ、シエルが壊れた」
「(
フランス人も大して変わらない
気もするが、まぁ触れないでおこう)」
「・・・はっ、取り乱してしまいました。あの民族と同一視されたと思ったらかんしゃくおきて…」
「さっさと授業の続きやりなさいよ、シエル」
「では、さっそく。いよいよ本題に入ろうと思います。
中世ヨーロッパではずせないのがフランク王国。中世ヨーロッパを代表する
騎兵による急襲戦術
発祥の地。我がフランスの元になった国でもあります」
「フランク族って投擲斧(フランキスカ)と槍(アンゴン)で戦う変な髷を結ってる連中?」
「そうです。さすがにそのあたりの歴史には詳しいですね」
「Aokっていうゲームで出てきたから知ってるの。この投擲斧(フランキスカ)って近接武器扱いで射程があるからけっこう使えるわ。所詮
チュートンナイトに比べればカス
だけど。ちなみに私が生まれたのは12世紀だし、もうこんな連中いなかったわよ」
「・・・話を続けましょう。端折って説明すると、フランク族はゲルマン民族の移動で今のフランスあたりに住み着き、徐々に現地のローマ軍の戦術を受け入れました。さらに北アフリカからもたらされた大型軍馬が普及し、重装甲化が進みます。ただし重装騎兵は高価なので、数の上では軽騎兵が主力ですが」
「流石に端折り過ぎじゃないの?」
「そうですか?だったらもう1回、少し詳しく説明しますよ。
5世紀頃からのゲルマン民族の移動でローマ領ガリアに進出したフランク族は、当地のガロ・ローマ系有力者やローマの辺境駐留軍、ラエティを自軍に取り込む際にローマ軍の戦術と兵科を導入していきました。
メロヴィング朝初期の領土拡張期にあったフランク軍は、大量の兵力を供給する必要から、いまだライン河の東に居を構えていた後進的なフランク系部族からも大量の兵員を動員していました。
このため、当時のフランク軍は、ローマの戦術で戦う軍隊と過去の伝統的な戦術で戦う二種類の軍隊が同居し、更に被征服民や同盟国の様々な種類の軍隊も加わっていました。
勿論、これらの軍隊は個々の独立性を維持していた訳ではなかったのですが、対外戦争を戦い続けるフランク軍に、大規模な改編と戦術教義の変更を遂行する余裕はありません。
ローマの戦術や編制はフランク軍に徐々に浸透していきましたが、それが一応の普遍化を見るのは、メロヴィング朝フランク王国の征服期がようやく終息した6世紀中頃になってからでした。
フランクの重装騎兵「カバラリウス」の戦術と装備もカタフラクトのそれを概ね継承していましたが、より重装甲化していくことになります。
フランク騎兵の胴鎧は、袖と裾の長い鎖鎧または鱗鎧で、腕部は肘まで、脚部は大腿部
まで防護されていました。
動きにくい鱗鎧は不評だったらしく、やがて鎖鎧が一般に普及していきました。
また、頭部と頸部、胴部のかなりの部分が装甲化された馬鎧も使用されていました。
ローマのカタフラクトの鎧は肩と腰までしか防護しておらず、馬も非装甲か一部しか装甲化されていなかったみたいですが。
北アフリカ原種の輓馬級の大型軍馬がイベリア半島のイスラム教徒を経由して普及したことが、この重量増加を可能にしていたようです。
もっとも、フランク軍の中核をなす封臣軍の兵士たちの装備は騎兵に限らず自弁を原則としていたために個人差が見られましたが、フランクの重装騎兵は勅令によって携行すべき装備が規定されていました。
特に鎧は必須の装備とされており、重装騎兵に定められた者が鎧を未携行のまま従軍した際には、軍律に問われて地位や土地を没収されることもあったそうです。
もちろん、フランク軍の騎兵は全員が重装騎兵だった訳ではありませんでした。
むしろ量では軽装騎兵が重装騎兵を上回っていたみたいでして、攻防力では劣りますが機動力に優れる軽装騎兵は、偵察や警戒、伝令等に運用され、時には重装騎兵を支援して戦闘に従事しました。
しかし、軽装騎兵の存在は、そのような戦術的な要求よりも経済的な事情のほうが大きかったようで…当時、重装騎兵に必要な軍用馬と装備一式を揃えるための相場は牛10頭以上に匹敵し、予備の馬や装備も勘案すると値段は更に跳ね上がったそうです。
騎兵を揃えようとすれば、どうしても廉価な軽装騎兵の比率が上昇せざるを得なかったということです」
「・・・・・・」
「どうかしましたか?」
「・・・やっぱり端折ってもらっていい」
「ところで、なんでフランク族の話をしているんだ?」
「
栄えあるフランス
の源流となった民族だからに決まっているじゃありませんか!」
「・・・・・・正気か?(やはり
アレと同レベル
だな)」
「冗談ですよ、冗談。騎兵の急襲戦術はフランク王国で発祥したことは先ほど言いましたが、中世の戦術を語る上で非常に重要な要素である急襲戦術であるからこそ、その起源から説明する必要があると思うんです」
「定説では騎乗突撃を考案したは
ノルマン人
と聞いたことがあるが…」
「・・・・・・の、ノルマンディー地方はフランスですし、第一ノルマン人に騎乗戦術を教えたのはフランク族です!
急襲戦術の起源はフランク族です!!!
「そう言えば、フランス王アンリ2世のもとに嫁いだメディチ家のカトリーヌが、当時イタリアから多くの料理人や食材、食事のマナーまでもフランスに持ち込んだのよね~。その理屈で考えると、フランス料理の起源はイタリア料理となるわね」
「し、失敬な!
フランス料理はルイ14世が完成させた芸術品ですかんしゃくおこる!!!!!11!!!!111!!!
」
「ええ、それも、ロシア・イギリス・オーストリアの宮廷料理を
パクりまくってね
」
「(そう言えば
某民族
も
ジュースが美味しいことを誇るストロー
のような連中だったな)」
「ふぅ…止めましょう。またかんしゃくをおこしてしまいました。祖国を侮辱されるとつい」
「(
事実
とはやはり危険なものだ)話を戻そう。急襲戦術が重要なのは分かったが、なぜそれが新しく考案された戦術なのかよく分からないのだが。騎兵は古代から存在したし、集中的に運用されてもいた。いったい従来の騎兵戦術と何が違う?」
「単純に言ってしまえば馬具の進化です。しっかりと足で踏ん張ることの出来る鐙、革帯でしっかりと固定できるようになった鞍、この2つの馬具によって極めて安定性の高い乗騎が可能となりました」
「それだけでは騎兵の戦術的価値が劇的に変化するとは思えないが」
「そうですね。重要なのは、
安定的な馬上から槍を小脇に抱えて突撃できるようになった
ことです」
「???いまいちよく分からない。馬上で槍を使うことは昔から行われていたが、それと何が違うのだ?」
「全然違いますよ。従来の騎兵は槍を使うにしても
腕の力だけ
で突いていました。それでは威力もたかが知れています。しかし、
馬を十分に加速させ、槍を脇に抱えて、人馬の体重を槍に載せる
ことができればどうでしょうか?前者とは比較にならない運動エネルギーで敵に突撃することができます。それは、安定的な騎乗という条件なしには為し得ない戦術行動です」
「確かにおっかないわね~。近づいて槍でつんつんされるよりも、騎兵が一体になって突っ込んで来る方が遙かに威圧感もあると思う」
「普通の人は怖くて逃げちゃいますね。騎兵に集団で突撃されるのは恐ろしいですよ~。ちなみに、この襲撃戦術のキモは、
敵歩兵の隊形を崩すことが出来る
ということです」
「なるほど。隊形を崩されれば組織的戦闘を行うことが出来なくなる…」
「え~なんで?」
「今とは違って無線機などない時代だからな。
士官の声が届く範囲までしか兵士を管制することができない
」
「はい。そのとおりです。装甲槍騎兵の突撃によって生じた隊形の乱れに軽装騎兵や歩兵をなだれ込ませれば、もはや敵部隊は協調して戦闘を継続することなど不可能になります。このように、中世になって
装甲槍騎兵は、戦闘において決定的な役割を果たす兵科
になりました。
「歩兵じゃダメなの?Aokならチュートンナイト軍団の進撃を止められる騎兵なんて存在しないわ。だいたい
ローマ軍やギリシア軍は歩兵が主力だった
じゃない」
「
中世の頃の歩兵は練度が低くてとても攻撃には使えません。
隊形を保ちながら攻撃を行うという技術は非常に難しく、当時、それをやってのけたのは悪名高き
スイス傭兵
くらいのものですよ」
「ギリシアやローマに出来て、なぜ中世の諸侯の兵にできんのだ?」
「ローマ軍団は常備軍で常に厳しい訓練が課せられていました。それには莫大な費用がかかります。広大な帝国を持つローマには、その財政負担に耐える基盤が備わっていたのです。ギリシアの場合はちょっと特殊なんですが、ファランクスは基本的に単純な正面突撃しかやらない戦術ですので、訓練が比較的簡単です。それに士気の高い中産階級が主力であったことも利点ですね。古代の戦術については、また後ほどの授業でお話しますよ」
「ん~要するに、中世では装甲槍騎兵最強!ってこと?」
「そうとも言えないんですよね。装甲槍騎兵の専門化の過程として、
多目的な槍で腕の力で攻撃
↓
脇の下に槍を抱えて突撃
↓
胸甲の支え具に槍を固定して突撃
こういう流れで発展していくのですが、急襲戦術に特化するあまり戦術的柔軟性を失ってしまいます。決戦兵科として完成の域に達した装甲槍騎兵ですが、急襲戦術だけで勝負が決するような戦闘は例外的なものであって、他の兵科との緊密な協同と予備的な戦術行動が、「急襲戦術」を演出する上で必要なわけですね。
急襲戦術に特化してしまった騎兵は、むしろ最も他兵科の支援を必要とした兵科
であるとの認識を持ってください」
「その他兵科の予備的な戦術行動というものがイマイチよく分からない」
「いくら強力な装甲槍騎兵でも、真っ正面から歩兵密集陣の槍衾に飛び込んでは返り討ちに遭ってしまいます。そこで、歩兵が敵主力を拘束したり、弓兵が攻勢準備射撃で敵部隊を制圧したりして、装甲槍騎兵が急襲戦術を実行できるような状況を作り出すことなんですが…そろそろ時間が来てしましました。続きは次の授業で行うことにしましょう」
「次こそ火器が出てくるんだろう?」
「さて、どうでしょうか(ごめんなさい、たぶんまだでません)」
「なんか良くわかんなかったけど、また次もよろしくね」
「それではまた~」
2限目を始める
※アイコンは
眠りの園
よりお借りしています。
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