椿荘日記

椿荘日記

「CHRSTMAS DAY」


「カクテルパーテイ」は、「テイ」と「デイナー」の中間的な存在で、普通は五時頃からはじまり、丁度「デイナー」の時間(八時)の前に終わるようになっています。軽いおつまみ程度の食事と飲み物で、夕食前のお喋りを楽しむのです。
約束の時間より少し遅れて伺うと、飾り付けされた樅の木の立つ、旧農家らしい大きな石造りの暖炉の前のソファに、やはり招待された近隣の夫妻が腰掛けていました。挨拶を交わしていると、続々と招待客が戸口の大きな梁の下に姿を見せました。

やはり挨拶を交わしたり、各々腰掛ける場所を探しているうちに,ご主人がホットワインを振舞いはじめました。
ホットワインはグリュ-ワインともいい、鍋で暖めた砂糖入りの赤ワインとブランデーに丁子や肉桂を刺したレモンで香り付けした、イギリス及びヨーロッパの、冬の飲み物です。
良い香りとアルコールで体もすっかり暖まり、お喋りも佳境に入ってくると、今度はオーブンで焼いたプラムのベーコン巻きの登場です。甘いプラムとベーコンの程よい塩分が空きはじめたお腹に染み渡り、招待客全員に笑顔が浮かびました。

メインはやはりミンスミート(干した果物と牛の背脂を混ぜ合わせて、なじませたもの)の詰まったミンスパイです。イギリスのクリスマスのお菓子では、やはりミンスミートを使ったプデイングが知られていますが、こちらはクリスマスデイの食事の後に供される場合が殆どで、テイなど軽めの集まり(及び、聖歌隊へのお礼として、献金と一緒に差し出されます)では、ミンスパイやシュトレーン(もともとはドイツ菓子ですが、イギリスでとても好まれています。センターにマジパンが詰められ、粉砂糖のかかった細長いケーキです)などの小菓子が出されます。
夫人の手作りの六角形のパイは、銀のお皿から見る見るうちに消えていきました。

音楽を聞きながら、飲んだり,笑ったり、石の床に寝そべる夫妻の愛犬(スプリンガー・スパニエル)と遊んでいるうちに、お暇する時間になりました。
お礼を述べながらオーバーコートを着こんで外に出ると、凍えた空にイヴに相応しい満天の星が輝いていました。


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