椿荘日記

椿荘日記

お茶事とマリ


流派は江戸千家で、先生は母の知人で、お家元直属の方でした(残念ながらご高齢でいらしたので今は他界されてしまいましたが)。

お弟子さんも若い方から、ご年配の方まで大勢いらっしゃいましたが、マリのお稽古日には、それぞれお弟子さんのいる「先生」ばかりで、本来ならとても、マリのような若輩ものが同席できないような方々が勢揃いでした(笑)。でも、恐縮しながらも可愛がって頂き、また大変勉強になりました。

通常のお稽古などで行うお点前(お濃茶、お薄、お炭)は有る意味では「お茶」の一部で、それらのお点前を総合したものを、「一会のお茶事」と呼び、本来の姿と申せましょう。
その中でも「夜ばなし」という趣深いお茶事があったのを思いだします。
いい機会ですので少しづつ思いだしながら、お話ししましょうか。

季節は日の長くなる秋から冬の日暮れ前後に行われます。
寄り付きでお薄を一服頂きながら、連客が揃うのを待ち、亭主のならす銅鑼を合図に手燭を持ったお正客に続いて進み、湯桶を用いて手水を済ませ、にじり口より入ります。
薄っすらと暮れた路地に手燭や灯篭の明かりが揺らめき、身が引き締まると同時に幽玄といった境地を思い浮かべます。

ご挨拶の後、炭点前、和やかに談笑しながら懐石(ごま豆腐など温かいものを中心に。お銚子も出ます)を頂き、中立ちとなり、再び手燭を持ったお正客に続いて腰掛待合にて仕度が整うのを待ち、再び銅鑼の合図で席入りします。
灯火(手燭、竹けい、短けい)を凝らした炉辺でお濃茶を頂き、お道具の拝見など、全て手燭の灯りを頼りに行われ、灯心の揺らめきに、茶室の壁に這う影も、いつものお稽古と違い、茶を心行くまで楽しむといった気持ちを呼び起こしてくれました。



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