こちらは、「鍵のない夢を見る」と同じ時期、昨年7月の第147回芥川賞受賞作品。
冥土めぐり 鹿島田真希著
どちらも家族について書かれた「冥土めぐり」と「99の接吻」の2作品が収められてる。
「冥土めぐり」の主人公は、児童館でパート勤めをする奈津子。区の職員だった太一と結婚。夫は8年前に脳の発作を起こし、電極を入れる手術をして、今も四肢が不自由。
奈津子は夫を連れて、子どものころ泊まったことのあるかつての高級リゾートホテルへと一泊二日の旅に出る。そこは、今は区の保養所の割引で1泊5000円で泊まれる古びた大衆的なホテルへと落ちぶれている。
戦後一財産を築いた祖父が自慢の、スチュワーデスだった母。一流企業のサラリーマンの父と結婚したけど、父が謎の脳の病に倒れ、痴呆になって亡くなる。贅沢が忘れられない弟の多額の借金で、母はマンションを手放し、郊外に住むはめになり、自殺未遂を起こし、嘘泣きや失語症の演技をして、精神障害者の認定を受け、年金生活を手に入れている。
母や弟にたかられる犠牲者となるはずの夫が、父と同じような脳の病気になったことで、それを回避することになった。
旅の途中で二人は癒しを求めて美術館を訪れる。熱海みたいやから、MOA美術館やろうか。
この旅に出ることで、奈津子は太一の存在の意味を見つけ出す。そして、二人の関係も少し深くなったようや。
母親の行動は理解できなくはないけど、弟のふるまいにはついていけない。
まだ読んでないけど、「カラマーゾフの兄弟」の影響なのかな。
「99の接吻」の舞台は谷根千(谷中、根津、千駄木)。そこに暮らす母と4姉妹。よそからきたSという男が現れたことで、4人の関係が少しずつ変わっていく。
ジャンボ餃子とかき氷があるという「花屋」、ジャズ喫茶「映画館」、バー「マッド・ハット」、黄金たいやき「果川家(かせんけ)」、バー「オー・ド・ヴィ」、レストラン 「ザクロ」、クイーンズ伊勢丹小石川店などが実名で登場する。
どこもおいしそうで、行きたくなる。
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