星の髪飾り

星の髪飾り

2007/03/18
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余所者が気になってしかたない男の子が、下がりかけたゴムのズボンを時々思いついた

ように上げる裕子を見ていた。 

その後ろに母親の顔色を伺いながら女の子が立っている。 真っ赤なトレーナーに

は「 MIKI HOUSE 」の白い文字があった。 

「子供の遊びに親が交じるなんて、ねえ」

 涼しい目のリーダー格がそう言った。 

(自分達こそ、どっぷり介入しているくせに! )



「宝捜し、やろうかね!?」

 マリが持ってきた青いシャベルを持って、少し大きなアクションをつけて言う。

千尋と中谷は砂場の木の縁に腰掛けて、裕子を見上げた。

「これをね、おばあちゃんがこの砂場の何処かに隠すから、ちょっとだけ後ろを

向いていてくれるかな」

「いい? 健太! それからマリちゃんも春奈ちゃんもこっちを向いて」

 中谷そう言うと、三人がにこにこしながら裕子に背を向けた。

「あんまり深いところに隠さないでよ! おばあちゃん」

「わかってるよ。 でも三人で見つけてね。 これは競争じゃないから」

 裕子が三畳ほどの砂場とシャベルを交互に見ながら、比較的「あちら」に近い

方のにシャベルを埋めた。 

そして、砂を平にした後「もういいよ! さあ、どこでしょう? 」と声をかけた。

健太はわくわくする気持ちを待ちきれないと言わんばかりに、思い切り振り向いた。

「えー・・・・・・この中に本等にあるの? マリのシャベル」

 マリは乾いた砂の所々にできた盛りあがりを、大きな目で追っていた。

千尋が時々タイヤに跨った男の子に、好感度の高い笑顔を向ける。 傾げた首に僅かに

反応するようだ。 

「よし! 探そう」

 健太が砂場の真ん中に立った。

「あっはは~! やっぱ男の子だね、健太君」

「頑張れ! 」

 三人はしゃがんで、湿った砂の盛り上がりに騙されながら「宝」を探し始めた。



「僕、知ってるよ! 」

「なあー、あの辺だよな! 」

 タイヤの所から二人がやってきた。

「駄目よ、幸介! こっちにおいで! 」

 様子を伺っていた母親の中の一人が、慌てて引きとめた。 

後ろから女の子も、恐る恐るやってきた。

「えー、知っているの? じゃあ、助けてあげてよ」

 まるで先入観のない眼差しで、中谷が彼等を手招きした。

「健太君、仲間が来てくれたよ! これで六人だ! 」

「うん」

「たしかねえ、この辺かもしれないぞ」

 何時の間に加わった子供達。 地面に張り付いたように動かない面々が、少しうろたえる。

意地で歪んだ顔に、プライドの笑顔が不自然にひきつっている。

(そっちで、子供の本音をよーく観るといいわ)裕子は再びズボンを引き上げる。

極自然な展開が、速やかに千尋の心を安堵へ導く。 

ピュア―な瞳、無邪気な両手が砂の上で和みはじめる。

「おい、ここだぞ!」

 健太は「どこ、どこ? 」と言って傍に寄った。 

三人の男の子の体がぴったりくっついた。 暫くもぞもぞしていた子供達。 

誰かが「やったー!」と叫ぶと、親指を咥えて立っていた幼い女の子が砂場に足を踏み

入れた。

 余所者に素早く反応して、「僕の砂場だ!」と叫んだ男の子の右手にシャベルがあった。

「もう一度やろう! 」

「今度はね、見つけた人が隠すようにしたらどう? 」

「うん! 」

 午後の陽だまりで、たぶん始めからなかったはずの黄色い分離帯が、白に変わった。

(少なくともこの子達に関しては・・・・・・)裕子はそう感じた。

「驚いたなあ。 こんな単純な遊びで盛り上がるなんて」

 千尋が中谷だけに聞こえるように言った。

「手をかけても、目をかけても、心をかけるって案外難しい。 普通っていうのが

普通じゃくなってる今はね」

「私達は、こうやって遊んで育ったよね」

「公園でストレス溜めてどうすんだって言うの! 」

「この先は千尋、千尋だよ。 公園の敷居が跨げないママ達も『胡麻擂りデビュー』

すると、いつかデビューを待つ側に。 それは地球が反対に回るようなもんだ! 

あっちゃいけないことだと思うよ」


 裕子はあまり意味のないファッションで砂場の賑わいを感じながら、遠い昔、年の離れた

弟達を連れて行った下町の公園を思い出していた。


                 撮影 kitakitune05 さん





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最終更新日  2007/03/18 09:51:32 PM コメント(8) | コメントを書く


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