星の髪飾り

星の髪飾り

2007/05/13
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 倉田は一週間置き去りにされ、一度はゴミ箱の底にいたチケットを手にした。

そして憎たらしいほど生意気なチケットのシワを伸ばしはじめた。

「義務教育を終え、すぐにオバサン、オジサンになる人はいないですから・・・」

 裕子が書いた突飛な文。 間に属する空間を青春とするなら、最後に潤う水に

触れてみたい。 

蝕む病が辛うじて残してくれた時間は僅か一年。 もうじきこの街を出ていく。

倉田はガランとした部屋の片隅にあるギターに再び目をやった。

グループサウンズ、フォークソングに夢中になったあの頃が蘇る。  

彼は暫く俯いていたが、不安を煽る秒針が耳鳴りに変わる直前に顔をあげた。

前兆の対応が発作を招かないことを、身体が覚えてしまった。

そして草臥れたジャンパーのポケットに枯葉のようになったチケットを入れると、

一本骨が折れたビニール傘を手にした。 

「どれ、後ろから奴等を見学してやるか」

 背中を丸めてアパートを出ると、僅かに濡れた路面をゆっくりと歩き出した。

街灯がほんのり身体を温め、まるで小さな宇宙に導くように足元を照らした。


 photo by  kitakitune05さん





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最終更新日  2007/05/13 08:11:45 PM コメント(6) | コメントを書く


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