星の髪飾り

星の髪飾り

2007/05/23
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ホールにやってきた。 そして来場してくれた多くの人に、潤った心で感謝を伝えた。



「倉田さん、来てくれたのよ裕子先輩!」

 一段落すると、千尋が額の汗を拭いながら言った。

「自分、気がつきましたよ」

 矢沢はこんな時でも爽やかで涼しい目をしている。 

「そう・・・・来てくれたの」

 裕子は着慣れたコックコート姿の倉田が、厨房で汗して働く光景を浮かべた。 

裏方を仕込まみ、うざったがれながら大切なことをネームプレートと一緒に置いていって

くれた定年まぢかの倉田。 もう二度と会うことはない。 



 やがて熱く「達成感」を語っていた竜也がやってきた。

「まあまあだったんじゃん! ね?」

 それって普通じゃん!が口癖の高校生が、まあまあというのだから喜ばしいこと。 裕子は

にっこり笑って右手を出した。

「こんなトンチンカンなオバサンに特訓してくれてありがと!」

竜也は照れくさそうに握手をした後、誇らしげに言った。

「どう?裕子さん。 気分いいでしょ? 街路樹に来て少しは人生変わった?」

「じ、人生? 生意気な奴! その言葉20年早い!」

 矢沢が自慢のきれいな手を出し、主婦裕子の荒れたてと絡んだ。 (ドキッ!)

千尋も奏も目に涙を浮かべながら、喜びに浸っていた。 彼らはまるで無冠の英雄・・・

裕子は心からそう思った。 

「最高っす! 倉田さんも、常連のお客さんも来てくれたし、反響呼ぶでしょう」

「ありがとう! みんな!」

「こちらこそ」



 高倉里美を先頭にダンスサークルの面々が混雑をかき分けて去って行く。

裕子はリーダー高倉に向かって深く頭を下げた。 (ありがとう、高倉さん)

公園デビューで奮闘した中谷が千尋に大きく手を振りながら去って行く。



「奏ちゃん、花束が届いてるよ」

 奏のもうひとつのアルバイト先の友人が、顔が隠れるくらいの大きな花束を持ってきた。

霞草がライトを浴びて健気に微笑みかけている。

「奏・・・もしかして?」

 淡いピンクのリボンに包まれた可憐な花の数々。 カードをそっと開いた奏の唇が震えた。

「パパからだ・・・・」

「送ってくれたのね!」

「釧路に届いたよ、奏の歌声」

「そうかな・・・・」

 奏は香りの中で瞳を閉じた。


「あああ、また明日から現実って奴がやってくるんだー」

 竜也が余韻をぶったぎった。(こいつ!)

裕子は奏の肩を抱きながら、もしかしてこの花束は本人が直接受け付けに届けたのでは

ないかと感じていた。 だとしたら、どんな思いでこの会場を去って行ったか・・・

 竜也は裕子の目尻の小じわにしがみ付いた一粒の涙を見た。

落ちそうで落ちない雫。 それは、この人そのものだ・・・と思うのだった。



 太陽は平等に光を放つ。 多くの偏見をとても嫌いながら宇宙の真ん中で微笑む。

健気な陽だまりを拵えながら、異なる世代の上を東から西へ移動して静かに囁く。

「太陽は同じ地球に生まれ合わせた縁深き人々の、心に昇るもの」と・・・・・・



 12月25日 日曜日

やはり地球は回ってしまった。

昨夜のことは夢か幻か? 燃え尽き症候群の裕子は、浮腫んだ瞼と重い足を引きずりながら

バックヤードに立っていた。

「いらっしゃいませー!」


 フロアーで奏の元気な一声があった。


 年明けて1月、裕子はタイムカードの前にいた。

すぐ前には、店長瀬川が満面の笑みで紹介してくれた新人がいた。

ふっくらとした女性の背中をポン!と叩いて裕子が訊ねた。

「あのう・・・・・社員番号はいくつですか?」


                    完

////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
ハート役5ヶ月間、「世代」を読んで下さり本当にありがとうございました。 また未熟な文章を引き立てて下さったカメラマンの皆様に心から感謝いたします。ハート

                      2007年 5月23日  めぐみ かおと

photo by kitakitune07さん





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最終更新日  2007/05/23 02:52:16 PM
コメント(8) | コメントを書く


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開放感を・・・。  
yuu yuu  さん
「終わり」と書いてホッとしておられることでしょうね・・・。ご苦労様でした・・・。一つの街路樹でなく記念樹が作られましたね・・・。その年その年の記念の作品・・・。作者は沢山の人に会い見守られながら成長する者・・・作中人物によってですが・・・。
これからも多くの人を育てて下さい・・・振り回されて下さい・・・。それが作家冥利ですから・・・。
ありがとうございました・・・ご自愛を・・・。
今日は「乾杯」といますか・・・。 (2007/05/23 05:27:23 PM)

最後の一行  
ちぎれ雲  さん
効いていますね。 (2007/05/23 06:32:23 PM)

Re:開放感を・・・。(05/23)  
恵 香乙  さん
yuu yuuさん
>「終わり」と書いてホッとしておられることでしょうね・・・。ご苦労様でした・・・。一つの街路樹でなく記念樹が作られましたね・・・。その年その年の記念の作品・・・。作者は沢山の人に会い見守られながら成長する者・・・作中人物によってですが・・・。
>これからも多くの人を育てて下さい・・・振り回されて下さい・・・。それが作家冥利ですから・・・。
>ありがとうございました・・・ご自愛を・・・。
>今日は「乾杯」といますか・・・。
-----
はい、お察しの通りの心境。 いろいろアドバイスありがとうございました。 yuuさんの小説東京が出てくるので不思議な感覚で読ませていただいてます。
  (2007/05/23 08:14:36 PM)

Re:最後の一行(05/23)  
恵 香乙  さん
ちぎれ雲さん
>効いていますね。
-----
はい、裕子さんが最初に先輩に言われたことを、偉そうに言ってますね(^^) (2007/05/23 08:15:23 PM)

無になること  
kitakitune07  さん
この作品を通して、そして最後に感じたこと。
長年積み重ねた知識知恵経験・・・
大切な事です。
でも、それに固執すると、逆に自分自身を狭い世界に押し込めてしまいます。
自分の価値観を打ちのめされた主人公、
新しい職場で古い価値観を捨てきれない自分を周りの価値観を認める事により、自分を無にして結果的に一番素敵な自分を見つけていく。
とても素敵な女性ですね!!
これを書ける作者も、絶えず新しい自分と、大切な返られない自分を共存させてるのでしょうね。
お疲れ様でした・・・・

奏さんの声、聞くことが出来ませんでした・・・

次の私の夢になると思います

この次は、全てを捨てても・・・

そんな気持ちです・・・

でも、扉の外で聞いた、暖かい拍手の音

それだけでも 十分ですね!! (2007/05/23 09:13:26 PM)

Re:無になること(05/23)  
恵 香乙  さん
kitakitune07さん
>この作品を通して、そして最後に感じたこと。
>長年積み重ねた知識知恵経験・・・
>大切な事です。
>でも、それに固執すると、逆に自分自身を狭い世界に押し込めてしまいます。
>自分の価値観を打ちのめされた主人公、
>新しい職場で古い価値観を捨てきれない自分を周りの価値観を認める事により、自分を無にして結果的に一番素敵な自分を見つけていく。
>とても素敵な女性ですね!!
>これを書ける作者も、絶えず新しい自分と、大切な返られない自分を共存させてるのでしょうね。
>お疲れ様でした・・・・

>奏さんの声、聞くことが出来ませんでした・・・

>次の私の夢になると思います

>この次は、全てを捨てても・・・

>そんな気持ちです・・・

>でも、扉の外で聞いた、暖かい拍手の音

>それだけでも 十分ですね!!
-----
異なる世代、異質と思われる価値観、触れてみると新鮮な上に彼らなりに事情があり生い立ちがあり、育まれた優しさ、強さもあり・・・偏見、差別、から分離が生じるとしたらとても悲しいことかと。 上手く描写できずに完結してしまった部分も多々。
最後まで見守ってくれてありがとう。 
お写真助かりました。 奏パパは倉田さんと会場を出たふたりの中年男性のひとり(ひとりは夫)と匂わせてあります。バス亭で「駅」へ行くか訊ねた男性? (2007/05/24 06:54:11 AM)

Re:「世代」  最終章  (05/23)  
お疲れ様でした゚+.(・∀・)゚+.
生意気だけど、爽やかな青年。思いを秘めた彼女達
そんな中で裕子さんのハチャメチャな発想が、いい感じに活躍したんでしょうね。
先入観も無く、その人自身を受け入れる。それがきっとこれからも大事な部分を作っていくんでしょうね。

本当に、「優しく心に溶け込む」そんな作品だったと
印象が残ってます。 (2007/05/24 10:42:57 AM)

Re[1]:「世代」  最終章  (05/23)  
恵 香乙  さん
男前のお姉さんさん
>お疲れ様でした゚+.(・∀・)゚+.
>生意気だけど、爽やかな青年。思いを秘めた彼女達
>そんな中で裕子さんのハチャメチャな発想が、いい感じに活躍したんでしょうね。
>先入観も無く、その人自身を受け入れる。それがきっとこれからも大事な部分を作っていくんでしょうね。

>本当に、「優しく心に溶け込む」そんな作品だったと
>印象が残ってます。
-----
たぶん、今までの主人公に共通しちゃっている所かもしれないね。 たまには別種の人を描けないと・・・
たわいもない出来事、たった一年間でも、何かのカタチで残す、残したいと思い限り、書く事を続けると思う。腕は成長しなくても、自分の為にね。 (2007/05/24 11:04:35 AM)

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